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94.断罪のための恩赦3

大ホールから外に出られるなら出てみろと煽られています。

 


 大ホールの壁の一角を埋める『英傑の門』を調べたシロイが確信したのは、それが扉ではなく一枚岩のように区切りのない壁だということだった。

 蝶番も車輪もない。接している壁と地面に埋没して、決して動かないように固定されている。



「なるほど、破壊しようとするわけだね」



 構築した際の名残なのか膨大な魔力が満ちているため、魔力を流すシロイの測り方では正確な厚みまでは分からないが、『英傑の門』の厚みは城壁よりも薄く思えた。

 動きを封じられている面々の中には、迷宮崩落の救出活動に勤しんでいた魔道具工房のものたちもいる。彼らは音響で厚みを測るという技術も持っており、グヌルの腹ほどの厚みもないと気づいていた。

 その情報を基に腕を振るった冒険者たちの膂力も魔術も尋常なものではない。

 それでも破壊できず、表面を傷つける程度にとどまったのは『英傑の門』を生み出し魔力を込めた者の意図がそれを上回っていたせいだ。


 魔道具が意図に沿った機能をするように、魔術も意図に沿った結果を引き起こす。

 共通するのは魔術陣だが、それを省けるだけの魔力を込めてあるだけで同じことだ。

 打ち鳴らす格子戸と同じく、この城そのものを創り出した国族ピトムの仕業なのだろう。

 それがどのような魔術陣を用いているのかは計り知れないが、ゆっくりと破損個所が修復していくのをみながらシロイは最初から『英傑の門』を超えさせる気がないことを確信した。


 おそらく開放するために必要な魔道具か条件があるのだろうと判断したシロイは、吹き抜けを見下ろす癖毛の男を振り返る。それを知っている割れたアゴの男が追加で何か要求をしてくるか、勝ち誇ってくるだろうと思いながら。


 しかしそこにあるであろう見下した眼差しと愉悦に満ちた笑みは、割れたアゴの上に隠れて見えなかった。そのけったいな姿に思わず吹き出しそうになり堪えきれず、漏れた空気を慌てて手で押さえる。

 シロイが笑いを堪え、グヌルが不快気に睨みつけていることにも気づいていないのだろう。

 癖毛で割れたアゴの男は兵士へと指示を出し、その隣へと『投光器』にも似た金属球が運ばれてくる。


 何をするつもりかと様子を見ていれば、屈強な兵士二人が全力で支えているその底部から、まばゆい光が放たれた。

 まるで柱のように強い光が、大ホールで動けずにいる人々を照り付ける。

 あまりにも光が強すぎるために大ホールの壁や床の照り返しでさえ眩く、まるで昼の日差しに照らされているようだ。


 癖毛の男がアゴをしゃくると、兵士たちは必死になって掴むところも無いそれを回転させる。

 シロイはそれが自分に向けられることに気づいて背を向けたが、その背中が熱を帯びたように熱くなり、視界が白くなった。

 眩い光から顔を逸らそうにも、シロイの視界は瞼越しでも真っ白で目を開けることさえできない。



「はははははっ! 手元が暗くて見づらいだろう!? この俺の偉大なる魔道具、『照射機』で照らしてやろう!」



 照らされ続けている中では眩んだ目も開けず、彼は壁に沿って歩く。

 その身体が弾力のあるものに触れた。




「……何が『照射機』だ。『投光器』の劣化品だろうが」




 不快そうに漏れた声で、それがグヌルの腹だとわかって、シロイは手を払った。






シロイ「同じ脂肪なのに全然感触が違う……」

グヌル「あぁ? なんだ? 惚れた女の胸でも思い出したか?」

シロイ「ち、違いますよっ!?」


なお、グヌルのほうが豊満な……ん? どこかから鎖の音が……?

(不用意な発言は刈り取られます)

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