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59.シロイ魔道具店の連休2

シロイが住み込み仕事をしていた間、シロイ魔道具店は休業していました。

その間、周囲には全く影響がなかったのか?

前回は『資金屋』を一部見てみましたが、では冒険者寄合所『ナトゥス』の場合はどうでしょうか?

 


 カリアの部下が追い詰められていた頃、同じように追い詰められた者がいる。

 冒険者寄合所『ナトゥス』の常連であり、冒険者たちの多くが名を知る男。

 人は彼を『まばゆいマンボ』と呼ぶ。


 冒険者寄合所『ナトゥス』の冒険者の一部は、シロイ魔道具店の休業を把握していた。

 その多くは実際に『光る足跡』などを借りていた新人冒険者たちだが、彼らにすれば収入に直結する情報である。

 利用客ではなかった者も、迷宮浅部の道が照らされたり、道中のオオコウモリが減っていたりと恩恵を受けていた。

 そのため新人が『光る足跡』を持たなくなった理由に興味を持った者も多い。

 しかし無いものを調べて労力や時間を使うよりも、適当な理由を考えて酒のつまみにするほうが彼らにはあっていたのだろう。


 その適当な理由の中で、「まばゆいマンボが難癖をつけて販売中止にした」というネタが生まれて、納得された。

 もちろん、冗談だとわかった上で、酒のネタにして彼をからかうためである。



 しかし、ネタには尾ひれがつく。

 「難癖をつけた」が「嫌がらせをした」に代わり、「恫喝」が追加されて……と変化していく。




 そんな折に、一人の男が巡視隊に捕まった。冒険者寄合所付近にある飲食店などから出るゴミを漁って、それを食べて暮らしていた男だ。

 シロイ魔道具店の住居裏に火をつけようとした男は、こう供述したらしい。



「冒険者っぽい筋肉質な男に雇われて、火をつけたら金をやると言われた。前金も貰ったし、バレないと思った」



 彼は拘留されることで食事と寝床が確保されることから、捜査には非常に協力的だった。

 冒険者寄合所に訪れた巡視隊は、任意の聴取である旨を説明してその依頼主を探そうとした。

 しかし娯楽に飢えた冒険者たちが悪ノリで返し、それは更に悪化して伝播する。



 酒のつまみが勝手に来たのだから、楽しんで呑まなきゃいけないと冒険者たちは暗黙裡に同調した。

 放火犯が依頼を受けた時間帯に『まばゆいマンボ』のアリバイがあると知っている彼らは、口々にネタを披露しあって提供されたつまみを楽しむ。

 その聴取を行ったのが、巡視隊内でも生真面目と揶揄されるムライだったことが彼の不幸だろう。



 あくる日、巡視隊が群れを成して『まばゆいマンボ』の捕縛に訪れた。



 楽しめるネタが更に面白いネタに変化したのを察した冒険者たちは、迷うことなく冒険者寄合所にいた『まばゆいマンボ』を差し出した。

 あくまでも詰所への任意同行ではあるが、扱いは犯罪者と大差ない。

 抵抗するそぶりを少しでも見せれば、迷いなく刺突剣が抜かれるだろう。


 それは更に彼らを楽しませる実に良いつまみである。

 居合わせた冒険者たちは笑いをこらえつつ、巡視隊に答えるふりをしてマンボへと声をかけていく。



「いつかやると思った」


「あいつが? そんなバカな! 信じられない。いや、でも……やっぱり?」


「許さないとか、そんな文句をよく言っていた」


「あいつに他人を使う頭なんてない」


「ピカピカのケツがカピカピになりますね」



 など、言いたい放題である。




「テメェらふざけんな! マジで許さねえからな! 覚えとけよ!」




 と叫びながら連れ去られる姿は、冒険者たちの乾杯によって見送られた。


 それから三日を要したが、笑いと酔いが収まった彼らによってアリバイ証言と釈放請求がなされて解放された。

 今では娯楽のお礼として浴びるほどの酒を奢られ、キレながら飲んでいる姿がよく見られている。







本作品のタイトルは『まばゆいマンボの大罪』ではないので、彼はちゃんと無罪放免になります。


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