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45.『投光器』の記憶1

前回、頼もしい味方を得たシロイ。

今回からは演劇場『シャトレ』で住み込みの修理仕事に取り掛かります。

さて、まずは確認からですね。


 


 翌日、戸締りを済ませて巡視隊のムライにあいさつを済ませたシロイは、『シャトレ』を訪れていた。


 案内嬢に不審気な表情をされて、応接室で待たされることしばらく。寝不足の彼はあくびを噛み殺している。

 様々な演目の看板が飾られた部屋の、横になって眠りたくなるほど広く柔らかなソファ。その隣に魔道具作成の道具を詰めた個人用荷引車を置き、おとなしく座って待つ。

 耳を澄ましてみると、演目に合わせて奏でられている音楽が聞こえてくる。

 北街の路上や酒場に流れているようなものとは全く違う、馴染みのない音楽。

 いくつもの楽器が奏でる音楽は、ゆったりとしたリズムで応接室を流れていく。


 朝食には遅く、昼食には早い時間。

 午前の演目開演直後のこの時間、『シャトレ』への来訪者は少ない。

 仕事の合間に食事を済ませているグヌルを待ちながら、シロイはその音楽を魔道具で再現できないかと思考を巡らせて、眠気に抗っていた。

 彼が寝不足になっているのは、昨日の失態のせいである。


 カリアの紅い顔と自分の発言を思い出すたびに、羞恥と後悔があふれ出す。

 見悶えるようなそれらの感情に混じるように、カリアにそこまで思われていることを喜んでいる自分がいることに戸惑いを抑えきれない。

 魔術陣を構築して組み上げれば良い魔道具とは全く違い、手の付け方もわからない感情と状況に、彼は随分と頭を抱えていた。


 その相手が家族ぐるみで自分の店を潰そうと画策しているなど、夢にも思わない。



「来たかシロイ。ついてこい」



 ノックもせずドアを開けて、グヌルが声をかける。

 いつの間にか再び引きずられていた思考から抜け出し、シロイは立ち上がり一礼を返した。

 そんな様子には興味もないようで、グヌルは背を向けて先導する。


 カラカラと個人用荷引車を転がしてグヌルの後をついて廊下を歩き、来客用通路を超えて裏方用の通路へと入り、地下へと続く階段を下りていく。

 スタッフたちの控え室。道具倉庫。衣装倉庫。それらを往復して走り回っているスタッフたちの間を抜けて、大道具保管庫の扉が開く。

 やぐらや城壁、テラスなどに見せるための、分解された木組みの山。

 そこを抜けた先にある部屋名のない扉を開けて、グヌルが舌打ちを漏らした。



「いままでの魔道具師もどきのせいで、このありさまだ」



 数年ぶりに目にした『投光器』は、原型がわからないほどに破壊されていた。








はい。

『投光器』、ぶっ壊されてます。

どの程度のぶっ壊され方なのかは、次回確認します。

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