4.魔道具店シロイの日常4
まずは主人公シロイの日常をご覧ください。
〇シロイの現状〇
取立人を追い返す(?)ことに成功しました。
魔道具の貸し出しを行なう店は多くない。
その中でもシロイ魔道具店は、携行可能な魔道具を借りられる稀有な店だ。
しかし、だからこそ店の宣伝をする利用者は少ない。
名が売れた魔道具師が大型工房に取り込まれたり、街区長や国族などの権力者に囲われたりして、利用できなくなった店はいくつもある。
借りられる数に限りがある魔道具の獲得権を、自ら損ねる者がいないのは当然だった。
しかし、シロイは利用者のそんな思惑など知りもしないため、商品能力の不足が原因かと誤認していた。
そのため、日々より良いものを作ろうと研究を重ねている。
特に客がいない時間は、カウンター裏で試作に没頭していることが多い。
シロイ魔道具店として開店してから一年程になる。
常連客もつくようになったとはいえ、来店客数は多い日でも二十人程度。
販売数で言えば魔道具よりも、石鹸や洗剤などの生活雑貨の方が多く、それらの利用者は周辺住人が大多数を占める。
魔道具店と銘打った日用雑貨店だと思っている客も多い。
天気の良い日の場合、昼食時を過ぎてしばらくすると店の前の通りは慌ただしくなる。
朝一で収穫や狩猟に出た冒険者たちが戻って、その成果が路上で売られるためだ。
とはいえ、北街の大通りからは外れた通りだ。
そこで路上販売している大多数は、正規の依頼や業者が絡まない。
盗品を便乗して売る露天もあれば、窃盗を目論む者も紛れる。
必然的に騒動や喧嘩が発生して、死傷者が出ることも珍しくない。
そんな賑わいを他所に、店内は静かだ。
窓越しに興味を持っても入店しないことがほとんど。
そこから店内が一望できるが、用途のわからない物と日用雑貨が並ぶ店は、簒奪者にも旨味が薄く見えるのだ。
そのためシロイは来客を待ちつつ、カウンター裏で魔道具作成に勤しむ。
そんな中で来店するのは、朝一に来店した冒険者が多い。
戦利品を金に換えて、これから飲む酒をより美味い物にするため、彼らは借り受けた魔道具の返却に訪れる。
「おかえりなさい。今日もお疲れ様です」
シロイは柔らかな笑顔を向けて、それを迎え入れるのだ。
平穏な時間は貴重です。
ある魔道具工房主は、弟子たちにこう語ったそうです。
「モノを作る時はね、誰にも邪魔されず
自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ
独りで静かで豊かで・・・」
なんだかお腹がすくセリフですね。