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37.『資金屋』2

借金の返済日に訪問ができないため、前倒しで『資金屋』に返済に訪れました。

ちょっと『資金屋』がどんなところなのか、見てみましょう。

 


 店内は広く清潔感があり、並べられた長椅子に多くの人が座って案内を待っていた。


 正面に広がる受付では格子越しで笑顔を見せているスタッフが、利用者たちを出迎える。

 受付の内側は天井まである壁が囲っているため、中の様子はわからない。

 長椅子の横や壁際には、所々に観葉植物が置かれ、案内図らしい紙が並べられた専用棚も設けられている。

 左右の奥には絨毯を敷かれた登り階段があるが、それぞれに護衛らしい巨漢。

 そう気づいて店内を見渡すと、入口側の壁に置かれた観葉植物の影にもいた。

 鎧姿ではなく揃いの黒いスーツを着ているのは、不思議な光景である。


 シロイは『資金屋』に来たのは初めてだ。

 これまでの集金はカリアが行なっていたし、トロイの治療費を借りたときには『資金屋』の融資担当が護衛とともに訪れたので、機会がなかった。


 見回してみると客層は厚い。冒険者、巡視隊、護衛などの屈強な面々もいれば、喫茶店の売り子や子連れの主婦らしい人もいる。

『資金屋』のスタッフらしい灰色スーツの老紳士が、時折声をかけて受付へと案内していく。

 シロイはどこに行けば良いのかわからず、とりあえず壁に並ぶ案内図へと向かい、手にとってみた。

 それによると貸付と返済は受付で行うので、手近なスタッフに言って待てば良いらしい。

 それにはパーティから結婚まで幅広く人材斡旋や仲介も行なっていると書かれていた。思いのほか多岐にわたる仕事のようだ。

 上階は大口顧客や情報漏洩を気にする客用らしいので、シロイは自分には関係ないと判断して案内図を戻す。

 隣に並ぶ借入申込書は必要ないが、返済用の書類は置かれていないようだ。

 すでに待っている客の手元を見ると、なるほど何人かは書類を持っていない。

 とりあえず手近にいる灰色スーツに声をかけて、返済に来た旨を伝える。

 笑顔で頷いたスタッフに名前を伝えると、呼ばれるまで座って待つように案内された。


 いつ呼ばれるのかわからないまま、ただ待たされるという経験がない客もいる。時折立ち上がっては徘徊する冒険者などがそうだ。

 シロイも迷宮や森で獲物を待った経験はあるが、それとは状況も環境も違う。周囲を観察して時間を潰していたが、すぐに退屈になった。他の客がどうしているのかと目を向ければ、借りた金の使い方や、斡旋される相手に意識を飛ばしているのがほとんどだ。

 退屈さに眠気を感じはじめた頃に、シロイの前に灰色スーツが現れ、笑顔で促した。



「おまたせいたしました。ご案内致します」



 笑顔を返して立ち上がり案内されたのは、受付ではなく階段だった。

 巨漢の黒いスーツが、ミチミチと音を立てて一礼して道を開ける。



「上階担当がご案内致します。どうぞ、お上がりください」



 その言葉に、返済は上階で対応しているのかなとシロイは考えたが、それが間違いだとわかるまで然程時間は要らなかった。





『資金屋』では人材・資金・資材の斡旋と仲介を行なっています。

冒険者にはパーティの斡旋をしたり、店舗には運営資金を貸し付けたり、個人に恋人や愛人の斡旋も行います。

金貸しと冒険者ギルドと銀行と結婚相談所を兼ねているような場所ですね。


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