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32.演劇場『シャトレ』の課題1

トロイの作品『投光器』が使われているのが、どんな場所なのか。

ちょっとそちらの様子を見てみましょう。


しかし、どうやら何かトラブルを抱えているような?


 


 午前の演目が終わり、合間の時間。

 午後の演目の準備に追われる裏方職人たちは、密かに別室の様子を伺っていた。


 大きな舞台の上には情景を描いた書き割りが用意され、舞台裾には次の場面に使うそれが用意される。

 現在の演目である『バルドの豚』は最終公演が近づいており、その後は数日のメンテナンス期間をおいて新たな舞台が始まる。

 変わらない物は舞台それ自体と、その上部に隠れて伸びた足場。開始と終わりを告げる幕。

 そして設置型魔道具『投光器』だ。

 足場に設置されているそれは、本来あるはずの三台のうち一台が欠けたままだ。

 取り外され別室に置かれたそれは魔道具師によって解体された。構造や機構を解析して修復および複製することが目的である。


 魔道具管理筆頭で『投光器』の管理を一人で行っていたサネル。一月前に彼が事故で死んでから、支配人グヌルの機嫌は最悪だ。

 怒鳴り散らすだけでは済まず、馘にされた者もいる。


『投光器』の複製ができていない。

 設計図は元々なかった。

 解析も遅々として、複製どころか修復できていない。



 それはこの演劇場の舞台装置が終わりを告げることに等しく、演劇場の終幕を予感させた。



 だから裏方職人たちは、別室に招かれた外部の魔道具師が有能であることを願い、様子を気にしている。

 今回の魔道具師は国家認定魔道具師であり実績もあるという触れ込みで、随分と横柄な態度で現れた。

 三十代の若造で肉体労働者のような体躯をした、癖のある黒髪と割れたアゴの持ち主である。名乗りに見合う仕立ての良い貫頭衣に、ゴテゴテした見栄えの宝石飾りがいくつも垂れ下がっている。

 才能と人柄が比例しないのは、どの業種でもある話だが彼は殊更酷かった。



「道具の管理もできない無能を使うとは。支配人の能もたかが知れますなぁ」



 出入りする際の挨拶がそれである。

 結果、裏方職人たちからは失敗することを望まれている。

 万一、修理に成功されたらそのまま管理筆頭に居座る可能性もあるのだ。有能であるに越したことはないが、人格にも最低限を求めるのは現場としては当然の要求である。


 しかし幸いと言って良いのか、彼もまたうなだれて別室から出てきた。

 これまでの魔道具師と同様に、プライドを打ち砕かれて言葉もないのだろう。職人や役者たちには目を合わせようともせずに足早に去っていく。



 支配人グヌルの怒声が響き渡り、職人たちは首をすくめた。

 そろそろ本気で次の職場を探した方が良さそうだと、誰かの呟きが聞こえたが、誰も否定はしなかった。





舞台照明用魔道具『投光器』ですが、一台が壊れています。

しかも修理の目途がたっていない。


ほとんどの人が予想できる展開だと思いますが、さてこの後はどうなるでしょう。



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