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30.シロイ魔道具店の繁盛7

来客によって話がそれたようです。

来店した理由がうやむやになってしまった巡視隊は、シロイに何を求めるのでしょうか。

 


「そういえば、この店では魔道具以外にも扱っているのか」


「ええ。魔道具はどうしても高くなりがちなので、普段使いの品物も用意しています。要望に合わせて作ることもありますよ。限度はありますけど」



 ふむ、と頷いた彼は棚にある品物を手に取る。小さな袋に紙吹雪のようなものが詰めてあるそれは、先程ケトリが購入した『掃粘剤』である。添えてあるメモ書きに記されているのは使い方だ。

 どうやら清掃用品らしいが、食べても大丈夫だと書かれている。


 体温以上の液体につけると、一欠片で汁椀一杯ほどの寒天状になるので、切り分けて食べられる。

 更に同様の液体を加え続けると粘液化し、冷水を浴びせると付着した不純物を吸着して剥がれる。

 バケツ一杯ほどに浸し、清掃箇所に塗布して冷水で拭うという用途らしい。


 読んだ説明がおかしく思っても言葉にできずに唸る姿は、ほとんどの客と同じである。

 喜んで買い込んで行くのは娼館『オルビィ』の嬢たちと一部の主婦だけだが、シロイは口にしない。

 もっとも、その『オルビィ』では意図とは違う用途に使われているのだが、それは彼にも予想できないことである。



「ここには携行用魔道具しかないようだが、設備用魔道具の作成もしているのか?」


「いえ。認可がおりないので」



「……そうか」



 設備用魔道具とは家屋に据え付ける作りの大型魔道具だ。

 一般家庭でも見られるものとしては、風呂の湯沸かしに使う『煮湯箱』が最も多く普及している。

 魔道具は破損などにより暴走する危険を伴い、大型化するほどリスクも上がる。

 そのため設置用魔道具を作りたい場合は国家認定魔道具師による審査で認可を得て、作成予定の魔道具を申請して許可されないと作れない。

 北街の開発当時はまだそれらのルールが浸透していなかったこともあり、トロイの作品は全て無認可だ。そして無認可作成者の縁者には、現在のルールでは認可がおりない。

 無認可の魔道具は問答無用で破壊されることさえある。

 


「参考になった。また話を聞くかもしれない」


「わかりました。今度は何か買ってくださいね」



 無表情に固まっている隊員の顔からは、何を考えているのかはわからない。しかし、何かを言い淀んでいるようにも見えた。

 設置型魔道具『投光器』。トロイ。演劇場『シャトレ』。

 そのキーワードだけを残して、しかし結局なにがあって来店したのかを告げないまま、隊員は背を向ける。



「……俺はムライという。仕事中に金銭のやり取りはできないから、買い物は休みの時にさせてもらう」



 退店間際に告げた言葉は、社交辞令への回答だった。





巡視隊ムライさんは生真面目で要領の悪い人なので、結局なにしにきたのかシロイには伝わりませんでした。

さて、シロイは通常通りの営業に戻ると思われますが…?

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