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22.迷宮に潜る者たち12

迷宮の奥で起こった戦闘の跡。

それは他の人から見て、どのように映るのでしょう?

 


 迷宮深層の入口。


 そこは大広間となっており、門番として一体の魔道具が置かれている。

 国家迷宮調査隊の面々は、その魔道具を排除して深層へと向かうつもりでいたが、それは叶わないと知った。


 大広間の奥に打ち倒された鉄塊人形。それは胸部を大きく破壊され、頭部はどこにもない。

 二十名にもなる隊員が大広間全体に広がり、その経緯を調べている。

 全員が簡素な部分鎧を纏い、武装した集団だ。そしてその多くが魔術を扱える精鋭でもある。



「俺らがやろうとしたことを誰かがやったように見えるな」


「胸と頭か。良い腕だな」



 彼らは胸部に突き刺さったままの鎚のように、鉄塊人形が反応しない安全圏から槍などを魔術で飛ばして打ち込むつもりでいた。

 その先入観から、真っ向から勝負したなどと思いもしない。



「頭は砕け散ったのか、回収されたか?」


「どちらにせよ奥に行ったらしい」



 最初に反応するのは胸部の魔術陣だけであったため、彼らは頭部の魔術陣の存在を知らない。胸部に打ち込んだ鎚の代わりにするため、破片を回収したのなら合理的だとさえ語る。

 おおまかな調査で済ませて、先行している冒険者たちが良い魔術師を抱えていると結論づけた。


 奥へと続く開かれた扉の前で再集結し、行動を決める。

 残骸を抱えて進むわけにもいかない。隊員の一部を回収指示の伝令にあてる。しかし、鉄塊人形以外にも発見されているものがあった。



「壁際で動いてたぞ?」


「これは門番の部品か?」



 既に破損して糸を失った、走り続けるネズミの玩具と折れた針。どちらもシロイの魔道具の残骸である。


 ネズミ部分の魔道具に備えられた【軸を回す】という単純な魔術陣と、魔術の効果を【収束】させる魔道具。

 針に結んだ紐がネズミ部分に巻き込まれたために、【軸を回す】効果が針の刺さった頭部に【収束】されて、その首がねじくれるほどに回転していたことなど、彼らには予想もつかない。

 ましてや、それがあったからこそ大楯の一撃が鉄塊人形の首を落とすに足りたことなど、想像しようもなかった。

 そのため彼らは持ち得る情報を元に判断する。


 奥へと長く伸びた大広間。その奥には動くものを退去させようと動く鉄塊人形。床は滑らかではあるが、ネズミ部分の爪を引っ掛けて走らせることもできるだろう。



 思い浮かんだのは、小さな玩具を追い回し、大広間を右往左往する巨大な人形の姿である。




「……なるほど。冒険者というのは面白いことを考えるものだ」




 隙だらけの滑稽な様子を思い、苦笑しながら呟く。

 留め具代わりだろうと、ネズミの爪に針をかませてその回転を止めると、伝令役にそれを渡す。



「製作者を調べておけ。何かに使えるかもしれん」




 シロイ魔道具店という名前が浮かび上がるまで、そう長い期間は必要としなかった。







当人の知らないところで意図せず評価があがったシロイ。

その影響が表れるまでは、もう少し時間がかかるかもしれません。


では彼の生活が平穏なものなのかというと……。

とりあえず迷宮を見るのをやめて、次回は街へと視点を変えてみましょう。

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