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21.迷宮に潜る者たち11

冒険者たちが生活の糧を得ているメインの場所、『迷宮』を見ています。


ちゃんと『冒険』している冒険者パーティは、最悪を避けるため、諦めずに挑むようです。

 


 そこから爆発まで、ほんの僅かな時間で様々なことが起きた。


 茶髪の青年が思いついたのは、鉄塊人形をかち上げたあの突進。それを同様に頭部分に行えば、首を千切れるかもしれないという発想だった。

 だが金髪の青年が走る速さでは到達まで時間がかかる。

 それを見越したかのように、物理戦闘特化の二人が鉄塊人形に上がってその姿を見せた時、彼は反射的に叫んでいた。



「大楯を飛ばせ!」



 茶髪の青年が叫んだ声を聞いて、金髪の青年は走っていた勢いに乗せて大楯を放り投げた。


 使うべき術を迷っていた魔術師の女性は、彼の声で使うべき術と的を捉え、対応した。



 言葉通りに成人男性を隠すほどの大楯が、大広間の中空へと舞い上がり、吹き飛ぶ。

 人が走る数倍の速さで、暴風に煽られて飛ぶそれはまさしく凶器である。


 そして相対するのもまた、凶器だった。



 金属製の足具。その足裏面に突き出た棘。

 大楯の正面へと舞い踊るように、彼女は身体をくねらせながら現れた。

 回転する視界の中で、触れればその足を消し飛ばすだろう大楯を睨み。



「イィィィーーッ、ヤァァァァァッ!」



 身体を更に回転し、気合いとともに蹴りつけた。


 一瞬、たわんだように見えた大楯はその蹴りによって勢いを落とすことはなかったが、その向きを大きく変えた。

 鉄塊人形の上を飛び越えるはずの軌道が変えられて墜落する大楯に立ち向かったのは、外した小手を握った灰色髪の青年。

 もちろん、正面から受け止めようというわけではない。鉄塊人形の首元に立ち、全身で支えるようにして伸ばした右腕。手にした小手が大楯に添えたられたのは一瞬だったが、それでも彼は大楯を受け流す。





 鉄塊人形の頭部が自爆装置を起動させたのはその直後だった。





 彼は受け身さえ取れず鉄塊人形の左脇付近へと転げ落ちたが、その顔には笑みが浮かぶ。

 僅かな角度の修正。小手を砕かれることと引き換えにそれを成し遂げた彼は、訪れる結末を確信する。


 まるで巨大な剣の切っ先のように、大楯はその縁を鉄塊人形のねじくれた首へと突き立て、自らもその威力に引き裂かれながら、ついには首を断ち切った。

 その轟音は首が爆ぜる音に重なり、砕け散った大楯と鉄塊人形の頭部の破片、巻き込まれた床の破片が舞い上がる。


 だが鉄塊人形は彼の隣で身じろぐことも爆ぜることもなく、打ち倒されたままの姿を大広間で晒していた。




 自爆装置は作動した。

 それは頭部のみを破壊して役目を果たしたのである。






魔道具は用途以外のことはできません。

鉄塊人形の【自爆装置】は頭部を起点に【全体を最寄りの移動物体に向けて爆散する】というものです。

首が切断されて落下したため「全体」の対象が頭部のみに減ったうえに、「最寄りの移動物体」が胴体と床になっています。

これは製作者も予想していましたが、全体を稼働させる魔術陣のサイズが胴体にしか収まらなかったため、仕方なく頭部に【自爆装置】を組み込んでいます。


なお、この部屋の天井付近には十数体の鉄塊人形が機能停止状態で順番待ちをしており、1週間たつと新しいものが出迎えてくれます。

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