表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/123

2.魔道具店シロイの日常2

まずは主人公シロイの日常をご覧ください。


〇シロイの現状〇

取立人が部下を二人連れて来店しています。

笑顔で身売りを勧められています。



 店主であるシロイが彼女に困り笑顔を返すのは、いつものことだった。


 魔道具師であるシロイは当然、魔道具の扱いに慣れている。

 それは店内にいる三人を容易く撃退できることを意味するが、彼にはその選択肢は無い。

 借金返済の督促に来た相手を撃退することは、店が潰される結果を招くとわかっているためだ。


 シロイの困り笑顔を見つめ、ほんのりと頬を染めて優しく微笑んでいるカリアは、貸付業者『資金屋』で取立業務を担っている。

 同じく店内にいる鎧姿の二人は彼女の部下だが制御役も兼ねており、だいたい一緒に来店する。


 カリアが来店するようになったのは半年ほど前に担当が変わってからだが、彼女の来店頻度は高い。

 少なくとも三日に一度、シロイを困り笑顔にしている。その手段は基本的に店舗売却や身売りの提案で、個人間の専従契約書類を持ち込んでサインを求めることも多い。


 返済日に遅延も不足もしたことがないシロイ魔道具店を、カリアが頻繁に訪れる理由はいくつかある。

 もちろん借金の督促が本題だが、本来の返済期日は毎月末だ。住居と店舗が同じシロイを追い込むのは容易く、小まめに督促する必要もない。むしろ逆効果になりえる。

 彼女が来店頻度を高くしているのは、業務ではない。


 単にシロイの困り笑顔を楽しむためである。


 借金を負う者で年若い者は少なく、カウンターに座っているシロイはその中で最たる異端だ。見た目年齢は実年齢よりも更に五つは幼く見える。

 泣きそうな困り笑顔のまま上目使いで見つめられているカリアは、背筋を震わせた。その顔に捕食者の笑みが浮かぶ。


 同じ店内に連れ込まれている部下二人は、シロイの助けを求める眼差しに視線を合わせようとしない。

 窓の外に目を向けてみると、近所にある娼館の嬢が客の視線を塞いで足早に去っていくのが見えた。

 その視線を遮るように、契約書類がシロイの眼前に突きつけられる。



「私が借金を肩代わりして身請けするため、この書類にサインをするだけで良いのですよ? 一生飼って差し上げますよ?」



 シロイが困り笑顔になっているのは、彼女の提案が基本的に善意から出ているためだ。

 たまに提案内容に下心が透けて見えるが、シロイは意識しないようにしている。

 夜半に思い出して、飼われるという状況を意識して悶々とすることもあるが、彼も年頃なので仕方がない。

 対話している今はまだ、通りすぎた娼婦の薄布をカリアに重ねてしまう程度で済んでいる。

 それでも動悸が早まるのを感じて頭から振り払い、シロイは頭を下げて提案を断る。



「すいませんがお断りします」


「そうですか。気が変わったらいつでも言ってください」



 その書類を追って視線が胸元に止まったことに気づいたカリアが軽く咳払いをすると、シロイは顔を赤くして慌てて視線を逸らした。

 それを見てカリアもまた、笑顔になる。

 部下二人は死んだ魚のような目でそれを見ていた。





シロイの日常を、しばらくご覧ください。

色ボケた上司に付き合わされたら、死んだ魚の目をするくらいしか部下にできることなんてありませんよね。


……経験談ではナイデスヨ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ