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19.迷宮に潜る者たち9

冒険者たちが生活の糧を得ているメインの場所、『迷宮』を見ています。


ちゃんと『冒険』している冒険者パーティの様子を見ています。

タイトルが『魔道具師の~』となっていますし、ちょっと魔道具について触れてみましょう。

 



 魔道具。


 それは魔術陣を極限まで簡易的な形に削り、必要最低限の用途を満たすための道具であり、時にからくりとしての側面を持つ。


 鉄塊人形もまた、そうしたからくりの面を持つ魔道具であった。

 形状や材料を無視して、その胸部に内包された核となる機構を見れば、非常に単純な目的だけを用途としたことがわかるだろう。



【扉に寄って来たものを押し返す】



 ただそれだけのことしか、この鉄塊人形にはできない。生物のように身を守ることもなく、目的のためにしか機能しない。

 その構造理念さえ把握していれば、わざわざ接近戦などする必要もなく、遠方から魔術で砲撃すれば良い。


 しかし彼らは冒険者である。戦闘が回避不能な状況もある。倒し方を把握しておくことは無駄な努力にはならない。

 そうでなくとも、負けたままではいられないのは最早本能と言っていい。




 そしてそれを成し遂げた彼らは、油断していた。




 打ち倒された鉄塊人形の胸部は大きくヒビ割れ、まるで鉄の杭を打ち込んだような有様だ。

 その側にいる男女は折れ千切れた鎚の柄を投げ捨て、仲間たちへと歩を進めている。

 そこへと向かっているのは戦闘に参加していた他の四人だ。彼らはその偉業を称えながら走り寄っているが、二人には轟音の影響による耳鳴りが残っているため聞こえていない。



「ほら行くよ。いつまで隠れてんのよ」



 それをゆっくり歩いて追っているのは整った顔立ちの女性だ。回復や支援などの術に長け、魔力の集まりさえ見抜く。鉄塊人形の魔術陣を見つけて指示を出していた女性である。


 振り返って呼びかけた先には、大荷物を背負ったふくよかに丸い男性。探索と運搬に長けている彼は戦闘には向いていないが、欠かせない仲間である。

 彼は嗅覚に特化しており、いわゆる宝のにおいや危険のにおいという、直感的なものの的中率が高い。

 彼はその鼻をヒクヒクと震わせて、怯えた声を漏らした。



「な、なんか、イヤーな予感」


「何言ってんの。もうアイツは倒して……」



 その言葉に大部屋の奥を見返した彼女は、息を飲んだ。


 鉄塊人形の胸部に構築されていた魔術陣は破壊され、最早その巨体を動かすための機構は存在していない。

 しかし、魔道具には製作者の意図が反映されているものだ。

 例えばシロイの魔道具が全体的に安全を重視しているように。



 鉄塊人形に込められているもの。それは製作者の意図というよりも、美学という類のものだ。

 外敵の排除を目的にした魔術陣が崩壊して、初めて動作を行う機構。

 半ば千切れかけた鉄塊人形の頭部で作動したのは、単純な目的の魔術陣。

 胸部のそれが作用したように、魔道具における魔術陣はその全体に効果をもたらす。


 頭部で動作を開始した魔術陣は一体となっている鉄塊全てを対象として作用する。


 その魔術陣に込められた製作者の美学とは、最寄りの動いている相手を標的に。




 諸共に爆ぜる、自爆装置である。





「逃げてーっ!!」




 その目に見えた魔術陣の、単純な目的が意味すること。

 先行している仲間たちへと注意を促す声は、悲鳴にも似た叫びとなっていた。





巨大な人型を作り上げておきながら、自爆装置をつけていない?

そんなことは有り得ないでしょう?(謎の理論)

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