121.最終話
本編の最終話です。
一年前に突然村に現れた二人の姿を、村人全員で見送った。
そこに残っているのは【空間魔術陣】という耳慣れないものだけ。
懐いていた村の子供が、大声で泣き声を上げている。
その二人が村人に教えた技術は多い。
縄を蛇のように操り、野獣を狩る技術。
体重の少ない者が大きな者を投げ飛ばす技術。
相手の動きを誘導する技術や、動けなくする技術。
まるで魔法のような技術を、姉は村にもたらした。
しかし、本当に魔法を使ったのは弟のほうだった。
ただの草を編んで作った首輪が、彼らの言葉を通じるものへと変えさせた。
破れた皮を縫い合わせた袋は、中に水を入れると光を放って周囲を照らした。
欠けた木器と木片を組み合わせた壺は、乾く度に器いっぱいに綺麗な水を湛える。
それらの技術を、二人は惜しみなく村に伝えた。
身につけられたのは少数だったが、それでも多大な恩恵である。
弟へのスキンシップが激しい姉と、姉を守ろうと背伸びしていた弟だった。
そのせいか弟は変な魔道具も作った。
姉の裸を見られることを嫌がって、押した場所に霧を漂わせる『霧印』や、同様に光を放つ『光印』というもの。
姉に口づけされるのを恥ずかしがり、触れ合うと光を放つ液体を塗布する『唇光』というものもある。
それらは製法とともに受け継がれている。
兄姉弟妹でツガイになろうとするところも受け継がれてしまったのは、この村の今後の課題だが。
旅立った二人は、故郷に帰るために様々な世界を渡る事になるのだと語った。
その先々で技術を奮い、恩恵をもたらし、二人で歩んでゆくのだろう。
その技術は遍く広がり、いつしか神々の目にも止まる事になるように。
やがて故郷へと帰りつけるように。
村人たちは二人の前途に、祈りを捧げる。
以後、シロイとカリアは様々な異世界を遊歴して元の世界へと帰る旅を続けます。
その間、身銭を稼ぐために『霧印』や『光印』、『唇光』などを販売&教授します。
アニメなどで見かける『謎の発光現象』とか『ブルーレイなら湯気が消えます(諸説あり)』とかのアレは、もしかすると彼が販売、教授したものかもしれません。
本作品はこの数行の内容を物語っぽくしたものになりますが、いかがだったでしょうか。
本作のテーマ「あなたにとって彼は有罪?」という点について、一考いただければ幸いです。
あと2回くらい、蛇足的なものとして、魔道具の一覧とか登場人物紹介とか載せると思いますが、本編はここで終了です。