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105.国族ピトム2

国族の要望に対して、シロイは何ができるのでしょうか。

 



 無邪気さという悪意に満ちた子供の笑顔。

 そんな笑顔を浮かべたピトムは、物分かりの悪い子供を諭すように、ゆっくりとした口調で語りかけた。



「この世界の住人は、俺たちにとっては撫でれば折れるような貧弱さだからな。

 改変して子供が作れるように他の国族が頑張っているが、上手くいってないみたいなんで最近は俺も暇つぶしに試しているんだよ。

 特にカリア(これ)みたいに、抵抗の強い者は俺が魔力を増やす役にも立つ。

 だがまぁ、お前の妻でもあるらしいからな……うん。使い潰したら与えてやろう。

 なぁに、残りカスでも魔道具の素材くらいにはなるだろう?」



 優しい声で語られる言葉の意味が、シロイには一瞬理解ができなかった。

 そこに込められている無自覚な悪意に目眩を感じ、頭を振る。

 倒れているカリアが視界に入り、そちらへと顔を向けると、射殺すような視線をピトムへと向けた無表情な顔が見えた。

 魔力に押し潰されそうな身体は窮屈そうで、しかし右腕がゆっくりと鉄鎖鞭を振るおうと足掻いている。




「…………魔力なんて、もう充分すぎるほどあるじゃないですか。他人を傷つけてまで、なんでそんなに魔力が必要なんですか?」



 シロイの筋力はカリアよりも弱い。体力もない。

 不興を買って抑えつけられれば抵抗の余地はなくなることは、彼自身も理解している。

 出来ることは魔道具作りだが、そんな道具も余裕もない。

 それでも彼にはこれまでの経験から、顧客のニーズを把握することの重要性を理解していた。

 国族ピトムが本当に願っていることがあれば、そこに誘導することで解決策を見出せるかもしれない。

 カリアの姿を見つめたまま、絞り出したシロイの声は震えている。

 だがそれ以上に溢れ出る感情が、彼の手を震えさせていた。



「故郷を見つけ出すのさ。

 大した力もない癖に、小賢しくも群れをなして俺たちを追い出した馬鹿どもを、皆殺しにするんだよ。

 お前らは空間魔術陣と言ったか。あれと同じだ。

 魔力を多く使えば、繋ぐ数が増やせる。

 綻びで更に迷宮も増えるだろうし、覗く先が多ければ、その分確率は高くなる。

 良いことづくめだろう?」



 覗いた小窓をピトムが指で弾くと、その中に映る景色が変わる。そうやって故郷に繋がるのを狙っているのだろう。

 だが、シロイの意識は小窓よりもピトム自身へと向いている。

 人を傷つけかねない魔道具を失敗作と考えるシロイと、根本的な考え方が違う。

 無邪気な顔で自慢気に語るピトムから感じとった意識の違い。

 この世界をも魔力で歪ませる化け物は、他人を自分に並べて捉えることなどしない。

 仮にこの世界が壊れても気にも止めず、他の世界へと移動して同じことをするだろう。

 しかし、それができるだけの力のある存在に対して、シロイは恐怖よりも疑問を抱いていた。



「そんな魔道具はいらないでしょう?」



 力で従わせて、気に入らなければ消すことも迷わない。

 そんなピトムに抱いた不快感と怒りは、シロイの口から疑問を溢れさせた。







無茶ぶりされているので、まずは交渉をしています。


ちなみに他の国族たちを含めた「改変」の成果で、人間ではなくなったりしている者が多くいます。

意思疎通不能な魔物と化して迷宮や異世界に放逐された者もおり、それらの血縁は本能的に人間を襲ってきます。(※54話に出てくる魔物はその血縁)

本編には関係のないどうでもいい裏設定なので、本編では一切触れません。

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