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104.国族ピトム1

断罪が執り行われます。

 



「お前、さっきからうるさいよ」



 アゴの割れた男の弁舌は、退屈そうな声で断ち切られた。

 静かな少年の声。

 部屋の中にいる全てを震わせるほど、声を出すだけで溢れた魔力は強い。

 それは強く諌めただけで人を絶命させる力があると、全員に理解させた。



「こんなゴミを作れた程度のヤツが、俺を殺せるだと?」



 空間魔術陣を用いた魔道具が砂のように崩れて型を失い、しかし床に落ちる前に跡形もなく消える。



「わ、私はピトム様のため」

「お前の言う忠誠とやらで自由にさせていたが、所詮は無能者だったな」



 一瞥すらせず、反論に耳を傾けることもなく。

 砂が崩れる音が、一瞬だけ聞こえた。

 部屋の中からアゴの割れた男が消えたのは、先程の魔道具と同じ道を辿ったのだろう。

 誰よりも優越することを望んだ男は、名を呼ばれることすらなくその存在を失った。

 そして、その存在を完全に忘れ去ったように国族ピトムは部屋の中に並んだ魔道具へと視線を向け、退屈そうに言葉を漏らす。



「ボレス、この街を俺の街にする。受け入れない者を排除し、各国へ新たな移民の受け入れを表明しろ。

 シロイ、お前に空間魔術陣の製作を命ずる。その命果てるまで、歩み行けぬ彼方への道を繋げろ。

 カリア、魔力による改変に死ぬ気で耐えろ。もし耐えられるたなら子を孕めるか試してやる」



 部屋にいる面々を見ることなく告げた言葉には、魔力がこもっている。

 ボレスの身体はそれに怯え、言葉を漏らすことも出来ずに一礼して返す。気まぐれで存在ごと消されかねない相手にできることなど、彼には何もなかった。



「何を、勝手なことを言っているんですか?」



 しかし、震えた声がその耳を打つ。

 這い蹲ったままで鉄鎖鞭を掴んだカリアとの間。

 恐怖と畏れで血の気が引いた、青白い顔のシロイが立つ姿に、ピトムの視線が向く。

 退屈そうな黒い瞳が怯えているシロイの顔を見つめ、魔力のこもった言葉がその身体を揺らす。



「俺の故郷へと繋がる道ができれば、お前の好きなものを作っていい。命がけで励め」


「そんなことを言っているんじゃないです。貴方は、彼女を……なんだと思っているんですか」



 それでもシロイは怯むことも無く、震えるままに声を返した。

 その言葉に、カリアが破顔する。

 一方、言われたピトムには理解が出来ないのだろう。退屈そうにしていた顔のまま、呆然とシロイを見つめる。


 そして、爆笑した。




「あはははっ! ふっ、ふはっ! ふははははっ! く、くくっ、ふっ、そ、そうか。お前は俺を知らないのか。そんなことさえわからないのか!」



 楽しそうに笑う子供。

 その見た目に反して、溢れ出ている濃密な魔力は空気を淀ませていく。

 息苦しく重苦しい、まとわりつく泥のような魔力は、触れるだけで気力を削ぐような怖気を感じさせる。




「……あぁ、数十年ぶりに腹から笑った……」



 その声はとても楽しげで、無邪気な子供の残酷さに満ちていた。






罪状:うるさい。

執行人:国族ピトム

刑罰:抹消

罪人名:抹消されたため存在しない


皆さんだけでも、癖毛でアゴの割れた男の名前を覚えておいてあげてください。

彼の名前は……えっと……参照先……あれ?(該当する情報の記載先が存在しません)

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