表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/123

10.ナトゥスの不文律4

シロイ魔道具店の利用者でもある、冒険者というのはどんな人たちなのか。

冒険者が多く集まる場所、『ナトゥス』の様子を見ています。


黒髪の少年の一撃が、『剛腕のマンボ』にクリティカルヒットしました。

 


 激痛に意識を飛ばし、しゃがんだ体勢のままでマンボは倒れた。顔面から落ちたが、その痛みよりも強い痛みが彼の脳を停止させていた。


 下敷きにされないように躱した赤髪の少年は、慌てて立ち上がって両手を伸ばすと、黒髪の少年の振りかぶっていた腕を抑えた。

 マンボの後頭部に球体を打ち付けようとしたのを止められ、舌打ちをした少年は迷いなく告げる。



「つぶす。必要。絶対」


「やりすぎ。やりすぎだから。もう十分すぎるから、やめてくれ」



 絡まれた赤髪の少年がなだめても、全くやめようとしない。武器が使えないなら、と隙を見て蹴りを入れている。

 その様子を呆れながら見ていた冒険者たちは、見世物が終わったと各々の話に戻った。少女が投げつけられた客席の冒険者は、いつのまにか手酌で楽しんでいた金髪の少女に尋ねる。



「いつもあんな?」


「今日は控えめですね。本気なら魔力込みです」



 もし球体に魔力が込められていたら、その器官は跡形もなく爆ぜ飛んでいたはずだと少女が笑う。


 それはある種の人生の終焉であるが、運良くマンボは生存しているため、酒のネタにはちょうど良い。もちろん彼の復帰には相応の時間がかかるだろうが、それはマンボの問題である。

 笑いながら酌をされた酒に罪はない。

 マンボに祝杯を挙げた彼は、しかしその姿を見て口にした酒を吹き出した。


 無理矢理抑え込もうとして揉み合っているうちに、蓋が緩んだのだろう。あるいは黒髪の少年が意図的に緩めたのかもしれない。

 その腰元に下げられた光る皮袋。

 そこから垂れた滴は、マンボの尻に当たって薄汚れた服に染み込む。それでもその光が失われておらず、マンボの尻は滴が落ちるたびに広く全体を輝かせていく。



 この日、ナトゥスの不文律に新たな項目が追加された。



「光る皮袋を下げた新人はからかうな」



 しかし不文律でありながら、この教えは頻繁に酒の席で語られる。

『まばゆいマンボ』の名とともに。








『剛腕のマンボ』は『まばゆいマンボ』に二つ名が変化しました。

二つ名は本人の意思では変更できません。


冒険者の偉業を称えたり、失敗を笑ったりする際に彼はネタにされるようになります。

そのおかげで名前が売れて認知度があがるのですが、なぜか彼は不満らしいです。


さて、次回からは冒険者が生活の糧を得ている、『迷宮』について確認してみましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ