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俺、捕虜になる。

挿絵(By みてみん)

デザイン:わんぱく


編集完了です。

後半部分だいぶ書き換えました。

 前回の略歴、というかあらすじ。


 トラックに轢かれて死んでしまったと思っていた主人公だったが、なぜか目が覚めた先は病院の死体安置所でも昨今の異世界系ライトノベルで使い古された例の白い空間でもなく、なぜか見知らぬ森の中だった。

 そこで主人公は自分がTS憑依転生したことに気がつき、そのあまりのショックにSAN値をごっそりと削られてしまう。

 あまりのびっくりどっきりぶりに発狂して森中の鳥や小動物たちをその絶叫だけで追い払ってしまう少女だったが、それが原因なのか、ある一つの出会いを生んでしまうことになってしまった──。


──────


 ガサガサッと、近くの茂みが揺れる音を聞きつけた少女は、突然のことにビクッと肩を跳ね上がらせながら、反射的に後ろを振り向いた。


「ギギッ!」


「うおわっ!?

 何こいつ、キモっ!?」


 すると、そこには少女とほぼ同じくらいの身長のヒト科っぽい生き物が突っ立っていた。


 深緑色の肌を持ち、長く大きな鷲鼻が特徴的な変な生き物。

 大きなギラついた黄色い目は、獲物を見るような目つきでこちらを見つめている。


 装備はボロボロのシャツを一着着ているだけで、他には棍棒っぽい棒切れを握っているぐらいで大して強そうには見えない。

 だが、そのニタニタと笑う口の隙間から見えるノコギリのような乱杭歯が、異様に恐怖と嫌悪感を誘ってくる。


 少女はこの姿を見て、どこかでこう言う生き物について聞いたことがある気がした。


 醜悪で肉欲が強く、繁殖力が馬鹿みたいに大きな、人の子供のような姿をしてる生き物──もとい、魔物。


(──そうだ、ファンタジー定番のゴブリンだ!?)


「やっば!?」


(俺がさっき叫んだから、それに呼び寄せられたんだ絶対!!)


 少女の悲鳴を皮切りに、そのゴブリンはニヤリと笑ってその手に持った棍棒で殴りかかってきた。

 心なしか、棍棒が赤い光を纏っているように見える。


(なんかあれヤバい気がする……ッ!)


 少女は本能的にその棍棒を回避することを選ぶと、後ろにジャンプして棍棒を避けた。


「うわっ、あっぶね!?」


 すると、さっきまで少女が立っていた地面が、その棍棒の威力のせいか、ゴパッと大きく爆ぜて小さなクレーターを穿った。


 少女はそんな現象を目の当たりにして、おそらくあの攻撃は、ゲームとかで言うスキルとかなんかそういうやつだろうと当たりをつける。


「……ってことは、それっぽい動きに気をつけて避けてれば無問題モウマンタイってわけだな!」


 避けられたことに苛ついたのか。

 ゴブリンはキーキーと鳴き叫ぶと、また棍棒に赤い光を纏わせてこちらに突撃してくる。


「うおっと!」


 今度は大振りな横薙ぎだった。

 問題なく回避できたけど、このまま逃げるだけでは埒が明かない。


 そう考えると、今はなかなか不利な状況だった。

 もしもそのとおりなら、彼女かれ一人でしのぎ切ることは不可能だろう。


「だったら、やることは一つしかないな……!」


 全身の血流が体内を迸る感覚がした。

 少女は気合の言葉を入れると、また振り回してきた棍棒の動きを見切って、相手の懐に潜り込んだ。


「ギギッ!?」


 まさか潜り込まれるとは思っていなかったのか、緑の小人は驚きの声をあげてこちらを見下ろした。


 一瞬、黄色い目と少女の青い瞳が交錯する。


「とった!」


 少女はそのままゴブリンの棍棒を持つ方の腕を引きながら、空いた腕を使って顔面に向かって肘打ちを食らわせた。


 すると、ゴブリンはギラギラした黄色い瞳をホワイトアウトさせて、気を失ったのか、その場に倒れた。


 クリーンヒット。

 少女の肘打ちがこめかみを直撃し、その大きな緑色の頭の中身をぐらりと揺らしたのだ。


「よっし!」


 思わずガッツポーズを決める銀髪の美少女。

 その心の内といえば、間近に迫った危機を自力で脱した安心感と、初めて経験した喧嘩に対する高揚感でいっぱいだった。


(喧嘩なんてした記憶はこれっぽっちもなかったけど、案外なんとかなるものなんだなぁ。

 これなら、ゴブリン一匹くらい襲ってきても対処できそう)


 少女は気絶して動かなくなったゴブリンのそばに近寄ると、腰を下ろして身につけていたボロボロのシャツを剥ぎ取った。


「よっしゃ、服ゲットぉ!

 これで街にいけるな!」


 ちょっと臭うけど、まあ気にするほどの悪臭でもないし。


 とりあえず裸じゃ恥ずかしくて街に行けないという問題はクリアすることができた少女は、さっそくとばかりにそのボロシャツを上から被ると、森の出口を探して歩き始めた。


「おっと、ついでにこの棍棒は貰っておくとするかね」


──────


 森を出ると、そこには草原が広がっていた。


「おお、これぞファンタジー!」


 勾配の緩やかな丘と、少女の足首ほどまでの高さの草の絨毯でできたそこには、角の生えたウサギや羊のような生き物が歩き回り、草を食んでいた。


 そしてそのさらに奥には、高い壁に囲まれた異世界定番の街のようなものまで見える。


「これは、期待できるな!」


 少女はふんすと鼻息荒く期待に胸を膨らませると、街に向かって歩き出した。


 街へ向かう道すがら、少女は色々な異世界での定番設定を試していた。


 例えば、「ステータス!」と口に出したらステータス画面が表示されるとか、魔法名を呟けば魔法が発動するとか。

 概ねそんなことを試していたが、しかし悲しいことに、その全てが反応しなかった。


「んー、まぁそりゃそうだよなぁ。

 元の世界でだって、ステータスって叫んでも画面は表示されないし、イメージしただけじゃ化学反応なんて起きやしないし」


 言いつつも、ちょっとがっかりした気分でため息をついた。


 ──と、そんな時だった。

 後ろの方から、カラカラと馬車の車輪が回転する音が聞こえた少女は、チラリと後ろを振り返ると、轢かれないようにそっと道端に身を避けた。


「すっげぇ、本物の馬車だ……」


 全体的に赤を基調とした客車に、金色の装飾がなされている。


 一言で言うと、めっちゃ豪華。


 ──けど、一つ馬車とは違うところは、それを牽いているのが馬じゃなくてラプトルとドラゴンを足して二で割ったような生き物だというところだ。


 名付けるなら、竜車りゅうしゃといったところだろうか。


 そんな風に初めて見る生き物と竜車を眺めていると、不意にその竜車が、少女を通り過ぎて少ししたところで停車した。


「……?」


 何かあったのだろうか?


 少女がそうやって首を傾げていると、竜車の客車から一人の男性が降りて、こちらに近づいてきた。


(……え、俺何かした?)


 この時少女には全く思い当たる節はなかったが、しかしそんなことは関係ない。

 男は紅潮した顔面でずんずんとこちらに向かってくると、突然大声で少女を怒鳴り上げた。


「君!そうだ、そこの君だ!

 ちょっとこっちに来んか!」


(えっ、何?

 めっちゃ怖いんだけどあのおっさん……)


 とりあえず、無視して逃げてもどうせ追いつかれるだろうし、もっとめんどくさいことになりかねないと思った彼女かれは、嫌そうな顔をして渋々とその男の方へと歩いていった。


「な、なんですか?」


 新手のカツアゲか何かか?

 いや、だとしても今のこの俺の姿を見れば、奪れそうなものは何もないだろう。


(──ていうことは、まさか誘拐?)


 嫌な考えが脳裏に浮かぶ。


 こんな世界のことだ、ないとは限らないだろう。

 もしそうなら、この棍棒で殴って逃げるか。

 うん、そうしよう。


 少女はそう思いながら近づくと、男は鼻息を荒くして、少女の両肩を突然そのごつい手で引っ掴んできた。


「君!こんな往来でなんて格好をしているんだ!

 服はどうした、服は!?

 そのボロボロの服……まさか盗賊か、盗賊にやられたのか!?」


「と、盗賊……っ!?」


 いるんだ、この世界に盗賊って。


(じゃなくて!?)


 少女は唐突に、そして大袈裟に尋ねてくる裕福そうなおっさんに気圧されながら、彼の言葉を繰り返した。


「そうか、やはりあの獣人ども、まだここら辺に住み着いていたか……。

 君みたいな可愛らしい子供を狙うとは卑怯な奴らだ。

 安心しなさい、街まではこの服飾商人アレウス・テイラーが無事贈りとどけよう。

 さ、乗りたまえ」


 矢継ぎ早に、まだ答えも出していないうちに結論を決めつけだしたおっさんアレウス。


「え、ちょっ……えぇ!?」


 少女はアレウスと名乗る男に強引に竜車の中へと連れ込まれながら、あまりにも唐突なことにされるがままに客車へと追いやられた。


(しまった、連れ込まれた!?)


 逃げ場である客車の出入り口は完全にアレウスとかいう男の巨体に阻まれ、逃げる術がもうない。

 たとえここでこいつを殴ったとしても、子供の腕力、気絶させることなんてできるはずはなく、押さえ込まれるのが関の山だ。


(……終わった。

 俺、異世界生活一日目にして、とうとう奴隷エンドだ……。

 これからこの男の家に連れ込まれて、あんなことやこんなことをされて慰み者にされるんだ……)


 少女は自分の無力さと考えなしな行動に絶望して、顔を青ざめさせる。


 一方でアレウスはというと、そんな様子の彼女を見て、どこか気分が悪いのかと心配そうな表情を浮かべている。

 しかし、奴隷エンドという絶対あいたくない結末を想像してしまった少女は、そんな服飾商人の顔が『家に連れ帰ったらどう料理してやろうか』と企んでいる様な表情に見えて、一層恐怖していた。


 しばらくして、彼女の服の下から生暖かい液体が流れてくるまで、竜車の中はこの状態が続くのだった。

 ここまでお読みいただき、誠にありがとうございますm(_ _)m

 もしよろしければ、ここまで呼んだついでに感想、いえ、評価だけでもしてくれたら嬉しく思います。

 そして、また続きが読みたい!とお思いであれば、是非ともブックマークへの登録をよろしくお願いしますm(_ _)m

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