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物乞いカトプレパス


パスは道を歩くなかでいつの間にか、紳士の姿でなく黒猫の姿に戻っていた。少し後ろから歩いているリバティは、きっとその姿の方が歩きやすいのだろうと思えた。町に行くには丘を幾つか歩き続ける必要があった。木々は少し点在しているくらいで見晴らしは良いものの、丘は傾斜が厳しいためか、向こうから何がやってくるか気づくのにはかなり近くに来ないとわからなかった。ふと、パスがリバティに注意を呼びかけた。

「ちょっと止まって」

パスは頭を低くして、耳を澄ませていた。

「やっぱり」

「何か来るの」

「ああ、これから物乞いカトプレパスが来るよ」

「物乞いカトプレパス?」

そうリバティがパスに尋ねるや否や向こうに動物が姿を現しているのがわかった。それは馬みたいな生き物だった。体の大きさはリバティよりも大きいが、頭が下がっているため、まだ向こうはこちらに気づいていなかった。

「リバティ、彼の目を見ちゃ駄目だ。石になっちゃうよ」

もう序盤からそんな危険があるのかとリバティは腹立たしくなったが、パスの言うとおり、カトプレパスの目は見ないようにした。カトプレパスはこちらに向かってきて、パスとリバティは身構えた。

「厄介なことに…この物乞いカトプレパスはよく喋る」

えっとリバティが驚いたのと同時にカトプレパスはリバティに気づいた。リバティはカトプレパスの目を見ないように努力した。

「もしもし、お嬢さん。何か食べ物はないですか、私はお腹が空いて、ほとほとに困っているのです」

「彼の言ってることは本当なことかもしれないが、彼は必ず道に会ったらそう声を掛けるのだ」

「ごめんなさい、ここに食べ物はありません」

リバティは首を横に向けて、答えた。

「困ったな、どうしようかな、いったいどこに行けば食べ物があるのだろう、お嬢さんはどちらへ行かれるので」

「丘の向こうの町にまでです」

「そうですか、丘の町ね、やっぱり私も引き返そうかな、お嬢さん私も付いていっていいですか?」

物乞いカトプレパスがそう言うので、パスがリバティに呟いた。

「そうやって、すれ違うものに同行して、なんとかして石化させようとして、所持品を盗むのが、この生き物の手口なんだよ」

「ごめんなさい、できません」

すると物乞いカトプレパスは急に頭を高く上げて、リバティの顔に頭を近づけた。咄嗟にリバティは目を瞑った。

「何でですか!きっと私はお嬢さんの役に立ちますよ」

物乞いカトプレパスの頭がリバティに近づいていたので、目を閉じても、リバティは目の前にこの生き物が自分を見つめていることがよくわかった。目を開けたら、石にされる。それになんてしつこい生き物だろう。リバティは冷や汗を掻いていた。目を閉じたままでいることが、彼女を余計に不安にさせた。パスは近くにいるとは思うが、物乞いカトプレパスの威圧感が強すぎて、リバティはここを逃げ出したいと思った。

その時、パスが大声でリバティに呼びかけた。

「リバティ、それがストレスだよ、恐怖だよ。乗り越え方は君が見つけ出すのだ」

目を閉じたまま、リバティはパスの話してることを考えた。この状況が不確定だった、突発的なことだった。それは自分が考えねばならないことだった。リバティは勇気を持った。そして、えいと目を閉じたまま、彼女の額をカトプレパスの頭に思い切り当てた。ごつっと鈍い音がして、ううっとカトプレパスは怯んだ。

「パス、走るよ」

目を地面に向けて、リバティは素早く走り出した。パスも彼女の後をすいすいと付いてきた。

後ろで、カトプレパスの声が聞こえた。

「くそっ、何するんだよ!」

その声に耳を貸さず、リバティとパスは走っていた。カトプレパスは追っては来なかった。自ら動くことよりも、向こうからやってくる者に仕掛けることが彼の習慣だったのだ。

「どう?」

ぜえぜえと短い呼吸をしては、パスに自分の振る舞いを尋ねた。

「上出来だよ」

パスは彼女が一人で解決策を探し、それを行動に移せたことが嬉しかった。 



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