夢から醒めずに
お読みくださりありがとうございます
お待たせいたしました
まだ、山には行けないようです
ある夜、リバティとパスはよく眠っていた。ふたりは、眠っている間に夢をみていた。夢のなかでふたりは再会した。
「ここは、あれ、パスじゃないの」
「ん、あれ、やあリバティ」
ふたりは辺りを見回すと、紫の渦が四方を覆っていた。空間に身動きが取れなくなっていた。
「私たち夢をみているのよね」
「そう、だね。夢でまた会うなんて思ってもみなかったけど、なんでここにいるのだろ」
ふたりは夢の終わらせ方がわからなく困っていた。出たくても出られない。
「試しにつねってみましょうか」
そう言って、リバティは、パスの顔をくいっとつまんでみた。
「い、いたいよ!」
「あら、ごめんなさい」
思わずリバティは笑っていたが、痛みがあるからといって、パスは夢から覚めることにはならなかった。
「困ったな」
その時、紫の渦に空間が裂けた。そして裂けたところから大きな手が現れた。その手はまるで悪魔の手のように禍々しくごつごつし、尖っていて、指の先に長い爪があった。ふたりが避けるまでもなく、その手はぐっとふたりを捕らえ、その空間のなかに引きずり込んだ。
「うわあ」「きゃあ」
そして裂けた空間は閉じていった。
ふたりは気がつくと、遺跡や神殿のようなところの一室にいた。あたりの壁がそのような建物に似ていたのだ。どこなんだ、ここはとパスが思って周囲を見渡すと、前方に道化師のような衣装を着た少年が立っていた。
「やあ、待っていたよ」
少年は、被っていた帽子を外して、ふたりにお辞儀をした。
「君は、ここはどこなんだ」
「ここは夢のなかの一種の空間といっていいかな。僕はロレッタ、このお部屋の実験を観察してるのさ」
「実験ですって」
「ああ、君たちの目の前に二つに分かれてる通路がみえるだろう、これから君たちには別々にこの通路に入ってもらう。あとのことは入ってから伝えるよ。そして、実験が終われば君たちはこの間から出られるというわけさ」
「これを受けないと出られないということか」
「どうして夢のなかでこんなことがあるの」
「それが夢だからでもあるし、何かが君たちの夢に介入したのだろうね」
「ロレッタといってたね、君はずっとこの場所にいるのかい」
「うん、まあね。僕はこの場所の意識のようなものだから、肉体があるように見えるけど、その方が君たちに説明しやすいから形作られてるだけなんだ」
リバティは、彼がこの場所にふたりを連れてきたわけでないのだと感じた。
「わかったわ、じゃあパスは、右側の道をお願いね。私は左側を行くわ」
「はあ、あいよ」
ふたりは二つの通路に分かれて進んだ。リバティは、通路を進んでいると、目の前にスイッチが置いてある台座の場所に着いた。その空間の先にはさらに、道が二つに分かれていた。ここで、ロレッタの声がリバティの頭に直接聴こえてきた。
「じゃあ、リバティそのスイッチを押すか押さないか決めてね」
「えっ」
どういうことなのと思ったが、リバティは考えた結果
「押すわ」
とスイッチを押すことにした。だが、その瞬間
「ok」
とロレッタの合図が聞こえると、リバティの隣にうっすら自分と同じ姿が見えた。
「えっ、わたし?」
「そう、ここでスイッチを押すと決めたリバティと押さないことを選択した場合の君に分かれたわけだ」
姿がうっすらとしているリバティがリバティに答えた。
「はじめまして、わたし」
「はっ、はじめまして」
自分に対してはじめましてと言うことにリバティは、なんともいえない気味悪さを感じた。
「じゃあ、リバティ。スイッチを押してね」
あ、そうだ。と、リバティは、台座の上の赤いスイッチを押してみた。すると、仕掛けが動いた。台座の右側の壁から、矢がリバティ目掛けて放たれた。
「きゃあ」
リバティは、矢を避けることができず、リバティの顔を掠めていった。
「痛い」
本来の人間とは構造が異なるため、リバティの顔に傷ができたが、血は流れず、さながら彫刻で材木を彫るかのように、顔が矢によって切られた痕跡が残っていた。だが、魔法によって人間のように動けるリバティに痛みを感じることはできた。切られた矢のあとは次第に黒くなってきた。これが魔法の修復の力なのか、ただ痛みだけが残った。
「なんなの」
「まったくだわ」
「えっ?」
リバティが見つめた先にはもう一人の分かれた自分がいた。そのもう一人の自分も、リバティと同じ傷を付けられていた。
「あなたも矢が飛んできたの?」
「わからないわ、ただ痛みだけを感じたの」
「違うよ」
ロレッタが二人に話しだした。
「ここでは、分かれた君たちのどちらかに何かが起きても、もう一方にも同じ作用が起きるようになっているよ。さっき、リバティが仕掛けの矢によって、傷を受けたから、もう一人のリバティにも同じようなことが起きた。そう選択によって起きることは固有になるはずなのに、同じ自分自身だから、どちらも受けるのさ、これがこの場所の特殊な実験なのさ、分裂空間とでも名付けようか。この実験にしばらく協力してもらうよ」
ふたりのリバティは顔を見合わせて、お互いに苦痛で苦くなってる表情を確認した。早くこの実験を終わらせたいと思ったのだった。




