ゼロエフェクト
お読みいただきありがとうございます。今回は話数が足りなく2話書きました。どうぞ
時には危険を回避しながら、リバティとパスは来る日も穴を掘っていた。穴を掘っては、ラクダに特別に乗らせてもらい、体幹がしっかりするまで、長い時間しがみつけるまで待っていたわけである。なかなかリバティの想像どおりに、つまり2日3日で仕上がっていくものではなかった。穴を掘る作業を続けて2週間経つ頃だった。人型に変身した黒猫パスのシャベルにガリっと硬い音がして、パスはなんだ?と驚いた。他の作業員も呼んで、取り出してみると、金属性の小箱であった。
「なにが入ってるのかしら?」
リバティは、その小箱に興味を抱いたが、シュペンターは、なにか危険なものでも入ったら大変だと、慣れている作業員を呼んで、その小箱の蓋を開けた。中には、紙が数枚入っているだけだった。保存状態がよいのか、紙はポロポロと崩れはしなかった。パスとリバティは、その紙に書かれているものを見た。
「これは、なんて書いてあるのかわからないわ」
「僕にもわからない。ずっと前に描かれたもので、当時の文字を知ってる者にしかわからないんじゃないかな」
「心当たりのある方がいらっしゃるのですか」
シュペンターがパスに尋ねた。
「知っているとすれば、魔法使いくらいかな。インバイトなら何かわかる気がする」
「あ、あの魔法使いね…」
リバティは少し表情が暗くなった。自分に意識や命を吹き込んだくれたのが、その魔法使いであり、同時にいなくなることの恐れを感じることにもなってしまったからであった。
「リバティ」
パスはリバティのことが気にはなったが、だからといって何ができるわけでもなかった
「そうだよね、直接は魔法使いに会いにはできないから、この小箱をインバイトのもとに持っていってもらうように頼んでみるよ」
「パス、あなた」
「うん、人型を維持するには、魔力を使い続けるようでテレポーテーションがすぐにはできないみたいだ。でも、テレキネシスならやってみるよ」
そうして、パスは、額に手を強く当てて目を閉じた。そして強く念じたのだった。
「ウェイブ!」
とらねこのウェイブは、王宮で王子の部屋のベッドの上で休んでいた、そんななか頭からパスの声が聞こえたものだから目を開いた。
「ウェイブ!僕だ、パスだ。君にお願いがあって話をしている」
「パスか、なんだい?お願いって」
「うん、僕はリバティと一緒に穴掘りの仕事を手伝っていたのだけど、土の中から昔の文字で書かれた紙を見つけてね、何か気になるからインバイトに解読をしてほしいのだけど、僕は今、人の型になり続けて、体力を消耗して、そちらまで行くのがすぐには難しいんだ。君に紙を渡すからインバイトのことまで届けてほしいんだ」
「あ?おれがお前のとこに向かわないとならないということか」
「うん、大変ですまない」
「まあ、わかったよ。で、その穴掘りしてるとこは俺の知ってるところなのか?なかなかイメージができないのだが」
「そうか、君はここをあまり知らないのか、じゃあ、少し待っててくれ」
そう言って、パスは、黒猫の姿に戻り、走り出してラクダのいる駅に向かった。駅では、ラクダがまたペラペラと喋っていた。
「ラクダさん、話の途中に割って入ってすまない」
「で、あるから、これがこうで、ん?」
ラクダはパスに気づいた。
「ああ、ギザギザ山に行きたいって言ってた君たちか、どうだい?もう準備できたかい」
「うん、あともう少しじゃないかな。今、ここに来たのはそうじゃないんだ。僕に向けて強く吠えてくれないかな」
「吠える?なんだかわからないがお安い御用さ」
ラクダは、パスに向けて強く吠えた。吠えるといっても、クーンという高い鳴き声で、番犬のように力強くはなかった。その声から発する風圧や気迫を受けながら、パスはウェイブにメッセージを送った。
「ウェイブ、僕の眼の前でラクダが鳴いている。ここに空気が揺れている。その揺れを受けて、僕も体が振動している。その振動を見逃さないで、そこに目がけて跳んできて」
ウェイブは、パスの声の方向から空間が揺れているのを感じた。
「しゃあないな」
ウェイブはその揺れに意識を向けて、強く体を光らせた。光は強さを増して、部屋全体を照らしていた。そして、その部屋からウェイブはいなくなった。パスが向けたかすかな変化が、ウェイブが目指す位置座標になっていた。パスの回りが次第に光出していった
「おお!なんだ?」
ラクダが驚くと、黒猫の横にとら猫が現れたではないか。
「やってきたぞ」
「待ってたよ、ありがとう」
パスは、ウェイブに自分の後をついてきてもらい、掘り当てた小箱を渡した。
「これを魔法使いのもとに頼むよ」
「あい、わかったよ」
「ウェイブ、来てくれてありがとう」
「ああ、リバティさんか。旅は順調かい?」
「足止めをくらってるわ」
「まあ、それも旅の醍醐味ってやつだ」
そう言ってウェイブは、小箱を咥えては、体をまた強く光らせて、その場から消えていった。




