怪鳥ルンチョウ通る
お読みいただきありがとうございます。
また次のお話が書けました。どうぞ
コニー姫とお別れしたリバティとパスは、更に先を進んだ。明確な目的地があるわけではない。その代わりに歩き続ける、彷徨い続けるという目的があった。マネキンのリバティと黒猫のパスは将来に備えないのだろうか、この王国では家族を築かないものはそんなことには気づかないのだろう。仕事をしている者は後を継ぐ者のことを考えるので、それに備えての準備をするかもしれない。リバティとパスは比較的自由だった。旅を続けねばならないという不自由を除いては。
ふと、リバティとパスの視界が暗くなった。見上げると大きな黒いなにかがリバティの頭上を通っていった。
「いったい何かしら」
「あれは、怪鳥ルンチョウだね。前に卵食べたでしょ?」
「あ、あの鳥の。こんなに大きいのね、頭が見えないわ」
「この鳥もこんなに大きいけど、いつかは居なくなるのかな、絶滅するのかな」
「最後の一羽なの?」
「希少な種だからね、それに、いなくなるのは悲しいでしょ、他でもないこの頭上の鳥がさ」
話している間に怪鳥の身体が翼からかぎ爪、尻尾へと順に頭上を通ってゆく。
「とても雄々しい姿だわ、翼の先が見えないくらい大きいのね」
「この怪鳥から見れば、僕らのことは気づかないのかもね」
「私よりも長生きするのかしら?」
「どちらも途方もない話だ、寿命じゃなくそれ以外のことで生き物は先に死に絶えるよ」
「それはパスが人から聞いた話?それとも見てきた話?今、気づいたのだけど、私、パスがこれまでにどう生きてきたのか全く聞いてこなかったわ」
「両方といえばいいかな。ヒトの寿命は確か90年から100年といわれてるね、でも大抵は病気にかかってその前に亡くなるね、他にも不慮の事故とか色々あるね」
「不条理だわね、かわいそう」
「それは人に限ったことではないね、生き物なんてのは特にそうだね」
パスは話を続けた
「ねえ、リバティ。人間の世界にはコンピューターというものがあるね、君がいたお店にあったの覚えているかい?黒い長方形の薄い折りたたむ物体さ」
「知ってるわ」
「生き物の記憶というのもあれと同じだと言われるね」
話し合ってるうちに、怪鳥はリバティとパスを完全に通り越していった。その後もパスは怪鳥の後ろ姿を眺めては、話し続けた。
「もしかしたら、ルンチョウは振り返らないのかもしれない。僕らは言葉を持つから、振り返ってしまうのかもしれない。コンピューターは体験したことは記憶となって保存されるのかもしれない。だから、僕らが体験したことも全て生きるのに必要なことは覚えているはずなんだ。ところが、生きるのに必要のないことは記憶の海底に沈んだまま、なにかきっかけがない限り、一向に思い出せない。じゃあ僕らの体験とはいったい何なのだろうね」
「パス、あなたの話は難しいわ。体験ねえ、ルンチョウの巣はあの行く先にあるのかしら?」
パスは笑ってリバティに答えた。
「ごめん、ごめん。そうかもね、このルンチョウの行く先に巣が、あるのかな」
「行ってみたいわ」
「巣にかい?来た道とは全く反対の方向だよ。それに歩いただけじゃ遠すぎて何日もかかってしまう」
「じゃあやっぱりパスは知ってるのね、知ってるなら前みたいにテレポートで移動すればすぐじゃないの?」
パスは首を横に振った。
「そう」
「僕は別に巣を見に行ったわけじゃないからね、イメージがはっきりしないと移動できない。でも、他の町の人から聞いた話だと、あのギザギザしている山が見えるかい、ルンチョウはあの山の頂上に巣を作るらしいよ」
リバティはパスに言われてよく目を凝らしてみた。遠くに朧げに山が見えて上の方が確かにギザギザしていた。
「遠いのね」
「だからルンチョウは諦めて次の町に行くのがいいと思うよ」
「そうね」
リバティとパスは再び歩き出したのだが、途中でリバティの足は止まったのだった。
「ねえ、パス。私やっぱりルンチョウの巣へ行ってみたいわ」
リバティの決意は固くパスは驚いた。
「どうしてなんだい?」
「なんとなく」
「そうか、直感みたいなものか、じゃあ仕方ないな」
「いいの?」
「別に構わないよ。でも、さっき言った通り、あの山までは遠いから、次の町にある高速ラクダ便を使おう」
「ラクダ便?」
「うん、魔法使いがこの世界に招いたラクダに動きを速くする魔法をかけて、今じゃ移動の便利屋になっているんだ。ラクダ便に乗れば、ギザギザ山へ行くのもそう長くはかからないよ」
「わかったわ、それも面白そうね。でもなんでラクダはこちらへ来たのかしらね」
「それは会って直接聞けばいいさ」
こうしてリバティとパスは移動を続けラクダ便のある次の町へ辿り着くのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
また、何かをきっかけに全話一気読みされる方がいるようで、随分すごいなあと思います。感謝申し上げます。
今回の話は、以前空白の鳥という大きな鳥について書いたのですが、今の自分なら同じ題材で何を思うか書いてみた次第です。十分に伝えきれてはいませんが、こう書かせていただきました。では、また次回のお話で




