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王国へ旅 第2章 第1話 脱出


1年経ち、この物語をまた再開することにしました。楽しみに待っていた方がいてくださったのなら、これ幸いでございます。ではこれより開幕です。



インバイトは止まっている世界のなかから、ただひとつ動きを制限されなかったワナクモの棲家に向かった。ワナクモは洞穴で自分の巣を張り巡らせ、インバイトの魔法を回避していたわけであった。

「ちょいとごめんよ」

「あいよ」

ワナクモは巣を破こうとすると向こうに魔法使いの姿が見え、久しぶりの客人の嬉しさと魔法使いになにかされるのではという不安で落ち着かなかった。

「魔法使いさん、何しに来たんだい?」

「いやあ、1年も退屈させて悪かったなあと」

「は?」

「君が私の魔法からかいくぐってたのは知ってたよ。蜘蛛だからね、動きを止めることには長けてるわけだったから」

「知ってたのか。話し相手がいないってのは確かに退屈だったかもな、でも過ぎてしまえばなんてことはないな」

「だろうね、時というのはすごいものだ。死にも追いやるけれども」

「あんたがこの世界を自殺希望や向こうの世界の逃避希望の者を救うために作り上げたってのは聞いてるよ、その動向おれは見てないけれど、で、なにか良くなったかい?進展は」

「そもそも虚構の世界から虚構を作り出しているんだ。現実、なんていうのかな、ややこしい世界に影響を与えるってのはなかなか難しいことかも、せいぜい私のできることってのはこの世界の鍵を持っている方に、あの人形の芝居というか冒険譚を見せるくらいかな」

「ふうん、それでいよいよ動き出すわけかい?」

「ああ、そのややこしい世界を跨げる者からすれば、この1年でやはりいなくなってしまった人はそれなりにいるよ。もっとも人がそれなりじゃあ、野生動物はもっとめちゃくちゃいるんだろうけどね、私の目線でいえばだ、悲しい出来事や知らせもきくけど、そのややこしい世界で同じように暮らしている新しい同胞にも出会えたわけだ。思うのだよ。知らされずに生きているのは、それはいないことと同じなんじゃないかって。ずっと昔から思っている。けど、なんてゆうのかな、その明確な答えが出てこない。きっとややこしい世界の人達はごく身近な人達との空間が当たり前かと思っているか、それこそ局在されていても、要は遠いところに住んでいてもその人との関係が濃ければ大切な存在になり得るのかとまあいずれにしても期限付き契約に近いね」

「おれには理解し難いな」

「いや、私の話は解りづらいからかみ砕かないとわからないかな」

「で、じゃあどうしてまた世界を動かす気になったのだ?」

「そうだねえ。敢えて言えば、肩書き、それこそ物書きの肩書きになるのを諦めて別の固持ができたってところかな。あとはいつまでもリバティやパスたちを止めておくわけにもいかんだろ。理由というのは複数かもしれないけれど、葉が枯れて落ちるように時が経って変化を及ぼした。それだけのことさ」

ワナクモは自分の巣のなかから、一つを選んで、その糸をほどいた。なかにはサナギが入っていた。サナギの羽は糸で動けなくなっていたので、自身の足でその糸を断ち切った。すると、サナギは羽をはためかせさせ、宙に軽く舞った。

「 それはなんだい?」

「ああ、食べそこねたサナギのフェアリー、妖精さ。なにか変わったことがあった方が面白いだろ。こいつを連れてってくれ」

「へえ、妖精ね」

宙を軽やかに飛んでいるサナギから亀裂が入り、その裂け目から妖精の顔が出てきた。

「やあ」

「は、はあい」

妖精の髪の色は菫のような紫色をしていた。興味を示している魔法使いに対して妖精はおずおずしていた。

「どうして君はサナギのままなのだい?」

「特殊なサナギさ。だからおれも食べることができなかった」

「なるほど。だがずっと長い間、そのままでよく死なずにいたね」

「ああ、それは魔法にかけられたままだったから」

「なるほど。時を止めた魔法がこの妖精にとっては役に立ったのだね。だが、こうして顔がよく見えるのだから、食べることもできるだろう」

「いや、またサナギに閉じこもることだってあるから」

妖精はクモには警戒しながら、洞穴の出口に脱出できる機会をうかがっていた。その様子に気づいた魔法使いは妖精に声をかけた。

「どうやら、私が動き出したことで、魔法も効き目がなくなってきているようだ。フェアリーさん、君もまた動けるようになったのだから、どこにいようと構わない。だが良かったら、この写真のマネキンと猫を見かけたら挨拶に行ってくれないかな。よかったら力になってくれないかな。なに、世界がまた回り始めたついでにさ」

魔法使いのインバイトはサナギのフェアリーに、リバティと黒猫のパスが写っている写真を見せた。フェアリーは、警戒しながらその写真に近づいてしばらく見ていた。

「ふうん、わかったわ」

「ありがとう。じゃあワナクモ」

「はいよ」

ワナクモは洞穴の入口に張り巡らせていた蜘蛛の巣を次々に切りつけた。そうしてフェアリーはここから出れるようになった。

「もうお前なんか捕まえねえよ」

「はあ、やっと出れるわ。捕まってると時間をとても長く感じたの。魔法使いさんありがとう。覚えとくわ」

そうしてサナギのフェアリーはひゅうっとワナクモの棲家から脱していったのだった。



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