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王子


長らく止まってましたが、つづきを書きました。



パスに連れられたとらねこのウェイブは、彼のワープで王宮に到着した。王宮で彼らは王の間に向かい、王様に挨拶をした。

「王様、今戻りました。こちらは新しくこの世界に連れてきましたとらねこのウェイブです」

玉座に座っている王様はそのまま、視線をウェイブに向けた。

「王国へようこそ。ウェイブだったかね」

「ああ」

「これ、無礼だぞ」

と、鎧をまとった王の護衛が忠告した。

「知るかよ」

「別にいいよ、段々と馴染んでくるだろう」

王は話を続けた。

「君が望むならこの国で暮らして構わない。食べ物はこちらで用意する、望むならチキンコックの無料食堂に行っても構わない。その代わりといってはなんだが、仕事を一つしてもらいたい。君はそこのパスに連れられて来ただろう」

「ああ」

「あくまで君を誘ったのは、パスと同じような猫手が足りないから、協力してもらおうと誘ったのだが、パスが君の世界に行く目的は本来とは違う。パスは、君の世界で生きていく上で自殺に追い込まれたり、逃げ出したくなった者を私の王国でかくまうために派遣されているのだよ。とはいえ、君の世界で悲鳴を上げるものはあまりに多い。パスだけでは足りないというわけだ」

ウェイブは辺りを見渡した。元の世界に戻ってもとくにあてもなく、さまようばかりだ。それに前の飼い主に遭遇しないとも限らない。それなら、この王国でお世話になるのは決してわるい条件ではない。そう思えた。

「要件はわかった。ただ一つ気になることがある」

「なんだね?」

「俺にはこのパスのように元の世界へ行き来する能力など持っていない。どうしたらいいのだ」

「それはパスが教えるから安心していいよ」

ウェイブがパスに視線を向けると、パスはこくっと小さく頷いた。

「では引き受けてくれるかい」

「ああ、わかった。だがなぜそのようなお節介のようなことを元の世界でのリビングシングスにするのだ」

「リビングシングス?」

「生きている者全てだろう」

「ああ、なるほど」

王は玉座から降りた。

「私についてきなさい」

護衛はあとを追わず、パスとウェイブだけが王のあとを追った。

「あのガード、王様を守らなくていいのかよ」

「なあに、これで死んだらそれまでよ」

「さっぱりしすぎて変だな」

パスが呟いた。

「この国に来る者も、王国を作る者も、その話を語るものも、そしてその話を興味深く聞く者も変わっているのかもね」

「変わりようにも限度がある」

「その世界で適応の度合いに逸脱してしまうと受け入れがたくなるからね」

「なのに変わった方がいいというのか」

「普通はつまらないから」

「いや、それだけじゃないだろ」

「というより、それではないよ」

王が二人の話を遮った。一向が着いた先は、宮殿のなかの一室だった。ぶ厚い扉で廊下と部屋を遮断していた。

「開けるよ」

王が扉の取っ手をぐっと引くと、部屋には大きなベッドと、本棚や衣服などがあり、ベッドには人が横になっていた。

「気分はどうだい」

「変わりないよ。ん…後ろの猫は見ない子がいるね」

「王子様、紹介します。私たちの仲間になりましたとらねこのウェイブといいます」

「あ…っと、ウェイブといいます」

急に紹介されウェイブは戸惑った。

「はじめまして。僕はこの国の王子です。宜しくね」

「ウェイブもパスのようにあちらの世界で呼び止めてもらう予定だ」

「そう、ありがとう」

「ありがとう?」

「さて、戻ろうか。あとはパスに任せるよ、時々、私や王子の部屋にも遊びに来てくれ、みな寂しいからね」

そう言って王は一人で扉を開けて部屋を出た。

「王は忙しいのか」

「僕の代わりにやってくれていることもあるからね」

「さっきのありがとうってのはどういうことだ?」

「見た方が早いよ」

「ん?」

パスは時計を見つめていた。時計の長針が丁度真上を示した。すると、急に王子がしゃべり出した。

「もう、嫌だったんだ!あの世界にいるのは。金の工面をするにはこうするしかなかった。しかし、もうそうやって奔走すること事態から俺は逃げたかった、だから俺は死んだのだ」

「おい、今の声は…」

その声は明らかに優しく話す王子の口調とは異質のものだった。声の質も王子の話す声よりは低くなっていた。パスが驚いてるウェイブに悲しそうに教えた。

「私達の国の王子は、インバイトの計らいで自殺者の声の受け皿になっているんだ、それも自動で話し出してしまう。そんなだから、王子の体も憔悴していく。心が荒れていれば、体も生気を失ってしまう、だから王は僕や君を雇ったんだ。これ以上王子を苦しめないために」

「ああ、そういうことだったのか」

ぜえぜえと王子はひどく疲れたようだった。

「まあ、僕には慣れてきているのだけど、体はそうもいかなくてね、誰かを苦しめることがわかっていれば自殺は止められないのかな」

「…王子さま。わかったよ、あなたが苦しむ必要はないはずだ」

「わるいね」

「それでは、失礼します」

パスは、そう言ってウェイブと部屋を出た。



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