表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/4

003 現在の日本 序章完結

003 現在の日本




「はい。なんか、団地にゴブリンがでまして……」

『ゴブリンは何体ですか?』

「確認したのは1体です。それも既に殺したんですが」

『どこにゲートが開いたか心当たりはありませんか』

「無いです。その部屋の住人はそのまま逃げてきたので、ゲートが部屋の中か外かわからないみたいです」

『わかりました。巡回している警察官を向かわせます。5分ほど待ってください。安全な場所に隠れて、危険をおかさない様にお願いします』

「はい。わかりました」


というわけで、通報終了。



ホラーパニック映画とかだと、警察に電話繋がらないとか、そもそも電話しないとか、そんな展開もあるけど、これ現実なのよね。

日本中がパニックというわけでもないし。


異世界と繋がってから、日本の警察はてんやわんやの大騒ぎだった。

警察の装備では太刀打ちできないモンスターもいて、自衛隊が国内で初の作戦行動とか、野党が水を得た魚の様に……いや、野党はいつも元気だけど、更に元気に自衛隊を突き上げた。そしていつも通り何もなかったが。


だが、いつまでも自衛隊を国内に展開していたら、防衛に支障が出る。

そんなわけで、急いで法案が纏められて、警察官の装備が一部増強された。


法律の施行はゲートが開く様になってから2年も経ってからだが、オーガ種、オーク種の群れがゲートから飛び出して来た『魔獣の9月事件(俗称『将門の呪い』又は『将門公御乱心』)』の際、

『災害救助で出て行ってモンスターに遭遇した故地域住民を守るために戦った』

『演習中モンスターに遭遇したので地域住民を守るために……』

などなど、現場指揮官の判断で戦闘した。


少し遅れて総理も自衛隊出動を要請。本格的に攻勢に出た。

この際、既存の法案をいじくりまわして出動可能であると説明した。

ゲートが開いてから半年程経っていたが、モンスターの処理についてはまだ害獣駆除と同じような扱いをしていたのだ。

ここに来て、とうとう軍事行動が必要であると認識された。


これには世界が驚いた。

曖昧な日本語まじコワイ。クレイジージャパン。

日本の軍事力は結構柔軟に動かせると世界に知らしめた。

窮地に追い詰められると日本人は結構なんでもやるのだ。


野党に色々言われたが、権限は総理にある。



この騒動の後、自衛官も政府役人も多くの人が辞任した。

なお、戦後最大級の死傷者数が出たこの事件の最中、政府批判を繰り返していた野党の評判はだだ下がり。

後に、これほどの被害を出した政府の初動ミスについての批判に切り替えたが、時すでに遅し。

結局、次の選挙でも(元)与党圧勝。


これを国民の総意とし、警察の強化に当たった。



対モンスター特別部隊が作られ、各地に配備された。

通称『対魔班』

異世界人がオブザーバーとして参加(国籍の問題で正規雇用は無理だった)している。


発表されて以降、週刊誌の、とりあえず批判しとくスタイル はともかくとして、ウェブ小説界隈では『対魔班』の文字が多く見られた。

全く何の才能も無い10代の少年がある日突然対魔班に配属されて秘められた力が目覚め、女だらけの対魔班で頑張るとか、異世界魔術師が日本に転生して対魔班に入って無双するとか、スローライフを送りたい最強のおっさんが対魔班にスカウトされしぶしぶモンスターと戦うとか。


現在では、モンスターはもうただの害獣みたいな感じになっている。

年に数百人死者が出るけど、それでもやっぱり自殺者の方が多いという。




その最中でのこの事態。


ゴブリンを見た時はびびったけど、もう殺したし、ゲートは確認してないけど、開いたままになっているのはせいぜいが2、3時間。


魔獣の9月事件は、将門塚に開いたゲートがたまたまオークの巣に通じていて、そのオークの巣がたまたまオーガの群れに襲われていたというのが原因とされている。


どっちも出てきちゃったのだ。


場所も東京のど真ん中。

突然現れた公式発表131体の肉弾戦車軍団が民衆に突撃し、これで死者が4桁に届かなかったのは奇跡だと言える。

皇居や防衛省が近く、いわゆる、手練れの人員が多かったのも被害を抑えられた理由だった。

とっさの避難誘導まじ大事。


東北の地震の時と同じように、今はインターネットがあって、動画や画像が高速で共有され、保存される。

この悲劇によって、日本国民が全員気を引き締め…… とは言われているものの、実際に被害を受けたものでないと、なかなか難しい。


俺が実際にモンスターを見たのは、さっきのゴブリンが初だ。

映像では何度も見ているんだけど。



だから、甘く考えていた。


まだゲートは開いているかもしれないけど、ゴブリンは一体だけだった。

群の中にゲートが開いたわけではないだろうし、これから出てきても数体。

警察が来る5分間の間なら1体も出てこないかもしれない。


この5分間耐えきれば平気だ。

それに、この団地の狭い玄関では、オーク種やオーガ種は通れないだろう。

そう思っていた。




俺はすっかり忘れていた。


この団地が、周りの住人から『オバケ団地』と揶揄され、廃墟マニアが廃墟と勘違いしてよく侵入してくる事を。


ゲートは、心霊スポットやパワースポットと呼ばれる場所に開く事を。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ