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6.登校

――夢を見た。

昔の――私が小さい頃の夢を…。


――………


――……


――


「…久しぶりね…あの夢を見るのは――」


ベル型の目覚まし時計は小さい頃に母がくれたものだ。

…寝坊が多かった為に…。

その時計は6時半を指している。

いつもの時間だ。

昔の事を夢に見た為、ちょっとテンションがあがらない…。

きっとあの曲を聴いたからだろうけど…。

その後制服に着替えたりして用意を終えると7時半。

部屋の窓から家の外を覗くと、まるでそうするのがわかっていたかのように家の前に立っていた雅斗と目が合う。


「…ストーカーかっての」


私の姿を確認して手を振る雅斗に小さく毒づきながらも、自分の顔が自然と緩んでいる事に気付く。

あがらなかったテンションも少しだけ上向きになる。


「行って来まーす」

「いってらっしゃい」

「気をつけて行って来なさい、紗代」


いつものようにリビングにいる両親にそう声をかけてから、玄関の扉を開ける。

玄関を開けた瞬間陽射しが照りつけてくる。

そろそろ夏なのだと実感する瞬間だ。

そしてそんな中わざわざ日向に立ち尽くす人影。


「おはよう、紗代」


毎朝顔を見ただけでウンザリだったのに…、気持ちって変わるものなんだな。

今はいつもどおりに居てくれた事が少し嬉しい。


「おはよ…雅斗」


私の挨拶を聞いて雅斗がニッコリと笑う。

私の好きな笑顔で。

その時、名前なんて呼びなれないから少し呼びにくいけど…呼んでよかったと思った。

どうやって雅斗を撒こうか考えながら登校していた昨日までが嘘のように、そのまま一緒に登校する。

今までまともに会話した事がなかったけど、いざ話してみると会話が弾んで話しやすい事に気付いた。

いつもは長く感じる登校時間だがあっという間に学校に着く。


「んじゃ、放課後も一緒に帰ろ?」

「どうしよっかなぁ〜(笑)」

「え〜」

「あはは(笑)気が向いたらね〜」


手をヒラヒラと振って雅斗の教室前で別れ、自分の教室に入っていく。

――と。


「ちょっと紗代っ!!!どういう事!?説明してよ!!!」


――と何故だか興奮気味の朱音に捕まった。

どうやら二人で登校する所を窓から見ていたらしい。

まず興奮気味の朱音をなんとか宥めて落ち着かせてから、昨日の事を掻い摘んで話した。

そして、昨日の事を一通り話した後の朱音の反応は…。


「え?付き合ったんじゃないの?」


――だった。

昨日あからさまに否定したばかりだと言うのに…。


「何故そうなる?」

「いや〜普通そう思うよ、紗代」

「孝樹まで…」


その普通がよくわからないから困っているんだけど…。

私が言われていることがわからないという顔をしているのを察したらしく、朱音が説明する。


「紗代は越高の事見直した訳なのよね?」

「うん、それは」


見直した…と言っていいんだと思う。

今までほどいやではなくなったから。


「じゃぁ今越高と紗代はどんな関係なの?」

「――友達――でしょ?」


それ以外に何があるんだろう?

けれどそう思ったのは私だけらしく、私の答えを聞いて朱音が溜息をつく。


「紗代…毎日友達を家まで迎えに行くと思う??」

「え?しないの??」

「………」

「ちょっと…え?しないもの??」


無言で孝樹と顔を見合わせる朱音を横目に、変な事でも言ったかと不安になる。

何か変なことを言った記憶は全くないのだけど…。

その反応の理由を聞こうと口を開きかけた瞬間――。


――キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…――


と始業のベルが鳴り響いた。


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