41.小埜寺(オノデラ)
「いや〜!君みたいな有能な先生をお迎え出来て私も一安心だよ。久しぶりに母校に来た感想はどうだい?小埜寺君」
学園長室の一室。
振り返った学園長らしき長身の女性は背後に佇む青年に目を向ける。
「なんか…懐かしいです」
その目に答えるように青年は笑みを浮かべた。
一見すると冷たいと思うほどに整った顔に走る頬の傷。
相応の人ならばそれは一目でナイフなどの鋭利な刃物で出来た傷だと分かるそれを、青年は隠そうともしない。
それはその傷を負った経緯を知っている理事長とて同様に隠して欲しいとは思わない。
それは彼が実直な証なのだから。
「君が卒業してから何年になる?」
青年から視野を移し、どこか遠くを見ながら理事長が問う。
その言葉に青年も目を細めて何かを思い出すかのような所作を見せる。
「…今年で、8年ですよ」
そう答えた青年の目は何処か悲しげに見える。
それを知っているのだろう、理事長はチラリと青年を見遣り、そしてその顔の変化を見逃すまいと瞳を凝らす。
「そうか…。何か見つかったかい?」
それはきっとこの2人の間だからこそ通じる話で、そしてもう、この2人の間でなければ通じない話。
「…いえ、まだ途中です」
「そうか」
青年の顔に苦笑とも嘲笑とも取れぬ表情が浮かぶ。
理事長はその事には何を告げることもしなかった。
「そうだ、クラス名簿には目を通したかい?」
「え?あ、はい」
「あのクラスは少々羽目を外すことも有るが…いいクラスですよ」
青年の脳裏に視線を彷徨わせていた少女の顔が浮かぶ。
初対面でこの顔に恐れず視線を合わせた頼りなさそうだが利発そうな女の子。
まさか再会するとは思わなかった子。
「――そう、でしょうね」
少し優しい顔で答えた青年を、理事長は暖かく見守っていた。
今回主人公が一度も出てこないという…。
紗代好きな方ゴメンナサイ(^_^;)
段々紗代ちゃん性格が変わっているような気が。。。
さて、登場人物も出揃ったようだし、そろそろ物語が動き出します。
ではまた。