38.逃避
今回少し短くなっています。
「紗代、こないだから変だぞ?」
「…ぇ?そんな事ないよ」
付き合う前から日課となった雅斗との登校。
本当は断りたかったけど断る勇気も無くて…今に至る。
2人だけの通学路。
雅斗には、あの日別れて以来初めての顔合わせになる。
なんだか一緒に居ることが出来なくて、顔が見れなくて…のらりくらりと誘いを全部断っていたから。
電話越しにも話をしてないから、ここ数日メールだけ。
雅斗が怪訝そうにしているのは知っていた。
でも、私はもうよく分からなくなってしまって、雅斗の顔を見たくない。
『志貴は私のせいで死んだ』
私はずっとそう思って来た。
あの時私が志貴を受け入れれば志貴は死ななかったんだと。
けれど朱音も孝樹もそれは違うと言う。
何が違うのだろうか?
私が受け入れれば、志貴は死ななかった。
そしてそう思う気持ちが、雅斗を拒絶する。
――好き…でも、嫌い。
雅斗は私から志貴を消していくから。
忘れちゃ…ダメ。
志貴には…私しか居ないのだから。
「――…代、紗代!」
「え…ぁ、何?」
「何隠してるんだ?」
「…な、何も隠してなんていな…」
「紗代…!怒るよ?」
その口調から雅斗が怒ってること、そして苛立っていることが分かる。
それでも…私は決めかねていた、だから。
「…ゴメン、先行ってるね」
逃げてるって分かってる。
顔を背けてるって分かってる。
でも雅斗に話すことは出来ないし、かといって離れることももう出来ない。
選択肢は≪話す≫しかないのに、それが出来ない。
向き合うことが出来ない…。
どうしたらいいのか…わからない。
「紗代!」
全力でその場を離れること――逃げることしか私にはできなかった――。
明日にでももう一話更新する予定です。
これからも見捨てずにお付き合い頂けると嬉しいです。
ではまた...