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35.第五関門

「ここだな」


そういって雅斗が止まったのはスタジアムフィールドの飛び込み台エリアの一角。

目の前には3メートルという未知の高さの飛び込み台が一つ。

その3メートルという高さの為か、この場所には誰も並んでいない。


「…雅斗…?」

「お前潜水は得意か?」

「せ、潜水?普通だと思うけど…」

「出来ないわけじゃないならいい、行くぞ」

「え?ちょ、ちょっとっ!」


そういうと静止の声を聞く事もなく強引に飛び込み台に乗せられる。


「紗代、プールの中に何か置いてない?」

「え?プールの中?」


ゆらゆらと不安定に揺れる板を先に先に進むと、水色に見えるプールの中央に白い何かが置いてあるのが見え、水面に入った光を箱の白が反射しているのか、箱が光っているようにも見える。


「なんか…白い箱?見たいのがあるみたい」

「やっぱりな。よし、それ取ってこい」

「取って来いって…」

「潜るに決まってるだろ?」


3メートルの高さ…というのも確かにしり込みするだけの高さではあるのだが…問題はそちらではない。


「…え、今?」

「当然」

「…ビキニで飛び込み?」


もちろんビキニって水着はこういう競技をする為ようには作られていない。

その為、多分この高さから飛び込んだりしたら、水圧で…きっと脱げる…。

それを踏まえて思いとどまってもらおうと思ったのだが。


「平気だって、俺しかいないし」

「…」


――知ってて…なのね。

深いところまで潜るわけだし…なんとかなるか…と思い、飛び込み台に足をかける。

飛び込んだ人なら知ってると思うけど、飛び込みはそのまま落ちるだけだと板に身体をぶつけてしまう危険性がある為、若干前に飛び出す方がいい。


(足…から行くと水中で方向転換が必要…だよなぁ…)


目的は水中に沈む箱。

3メートルの飛び込み台って事は少なくても水深5メートル以上にはなるだろう。

かといって…。


(頭から飛び込む度胸なんて…あるわけない…かぁ)


そこまで考えると若干勢いをつけて板から足を離す。

浮遊感を一瞬感じたかと思うと、次の瞬間、ザッバーンと音を発てて、私は水中へと潜っていた。

この飛込みが成功したかというと…水着が気になったのと、度胸がなかった事、そして飛び込み方が汚かった為、当然ながら水中深くに沈んだ箱を取ることは出来ず、挑戦は失敗に終わった。

飛び込み後、水中に上がってきた時の雅斗の一言。

――『可愛かったよ』――に私が深く傷ついたのは言うまでもない。

この時悔しくて悔しくて放った、『今度は雅斗がやってよ!』の一言をこの後後悔することになろうとは…この時の私がわかるはずもなかった。


「しょーがないなぁ〜、これ持ってて」


そういって着ていたパーカーを私に放り投げてから歩いていく。


「ちゃんと見てろよ?」


そういい置いて、雅斗は飛び込み台の下で簡単なストレッチを行う。

もともと運動をしていたのか、簡単なストレッチもさまになっていて何処かカッコいい。

無意識にじーっと見つめていたらしく、飛び込み台に上がろうとする雅斗と目が合う。

その瞬間、今までゴタゴタしていてあまり意識する事がなかったが、周りに殆ど人がいない状況で雅斗の水着姿を見るのはなんだか恥ずかしくなって目を反らすと。


「こら、ちゃーんと見ろっ!」


といって怒られ、渋々視線を戻す。

意識して顔以外が目に入らないようにしながら。

そんな事をしているうちに雅斗の足は飛び込み台の先端までと進んでいる。

雅斗はチラリと水中を覗き込むが、その表情はココからでは窺えない。

そして次の瞬間、高く飛んだかと思うと飛び込みの選手のように腕を耳の横につけた状態で頭の方から水面へ向かい、私の時と違い水の抵抗があまりないのだろう、スッーと表現しても構わないぐらい自然に水の中へと吸い込まれるかのように潜っていく。

途端に私ははじかれたようにプールサイドへと駆けより、水中に目を凝らす。

雅斗はそのままの勢いを利用して水中を潜っていく。

そして手を伸ばして白い箱を掴むと、緩やかに背中を沿って水中へと上がってくる。

悔しいから任せたのになんだか余計悔しくなるぐらいその姿はなんだかすごくカッコいい。

ザパッという音とともに水面に顔を出した雅斗は私の姿を認めるとニカッと笑って手に持った箱を掲げる。


「紗代ー!ほらよっ!」


そしてその掛け声とともに足場もない水中から私の胸元に向けて白い箱を放り投げる。


「ちょっ!まっ…!」


慌てて放り投げられた小さな白い箱に手を伸ばす。

なんとか落とす事無く捕まえることが出来てホッと一息を付く。


「もうっ、急に投げないでよ!」

「ははっ、でもキャッチ出来たからいいだろ〜、投げたところがいいからw」

「うぅ〜…」


確かに丁度胸元に来たからキャッチ出来たのだと分かっているので、その点について反論出来ることは私にはない。


「ほらほら、唸ってないで開けてみろよ、それ」

「…あ、そっか」


腕の中にあるのは両手の上にギリギリ乗るぐらいの大きさの正方形の箱。

水中に入っていたからかそこはビニールで密封にしてある。

箱を膝の上に乗せてビニールを破く。


「何入ってると思う?」

「んー重くはないんだよなぁ…これ」

「確かに。大きさの割りに全然重くないよね」


箱を振ってみても音すら鳴らないので音で物を特定することすら出来ない。


「じゃ、あけるよ?」

「あぁ」


近づいてきた雅斗と顔を突き合わせ、ワクワクしながら箱を開ける。


「へぇ〜趣味いいじゃんw」

「ホント、可愛い〜♪」


箱の中に入っていたのは封筒と透明な風船で、風船の中には小さな小さな箱が納められている。

ただ風船に入ってる姿が可愛い為になんだか風船を割る気にならない。


「これなんだろ?」

「んーま、ひとまずこのまま合流して、中身はそれからにしようぜ」

「そだね」


そういって私達は封筒に入っていた手紙に書いてあった場所――このウォーターランド最大の目玉であるアトラクションの所にあるゴールへと向かって歩き出す。

長いようで短く感じたイベントは、あとは結果を待つのみとなった。

ウォーターランド編、やっぱり35話までに収まらなかった。。。orz

もうちょっと続きます。

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