33.出会い
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※※※ ここからは紗代視点に戻して進めていきます。 ※※※
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4人はテクテクと効果音が付きそうなぐらい普通に歩いている。
何故急いでいないかというと、方向性が決まってしまえばこの関門は走る事ないとは満場一致でその意見になったからである。
まぁその中の殆どが≪ただ走るのが面倒≫という最もかつ簡単な理由なのだが…それは敢えて伏せておく事にしよう。
「そいや、この面子って俺だけ中学違うな」
「そういえばそうだね」
「雅斗って中学何処だっけ?」
「蘇芳」
「へぇ…蘇芳かぁ」
蘇芳――つまり、私立北栄学園付属蘇芳中等学部。
勉強に関しては≪それなり≫としか認知されていないが、地元で知らない人は居ないという有名な学校の一つで、スポーツの名門として超有名。
「越高スポーツ出来るもんなぁ〜。なーんでそのまま高等部入らなかったわけ?」
「ぁん?深い理由はなかったけど…強いて言うなら親に反抗したかったから…だな」
「へぇ〜反抗期だったんだな」
「俺の事よりお前ら3人はどうやって知り合ったわけ?」
(――…?)
ふと感じた違和感。
けれどそれが何であったのか掴む間もなく萎んで見えなくなってしまう。
「紗代?」
「…ぁ、えっと…雅斗に言ってなかったっけ?3人とも中学1年の時知り合ったの」
「私と紗代はクラスメイトでなんか入学式の日から意気投合して、それからずーっと一緒で、孝樹は隣のクラスだったんだけど、委員会が一緒で、いつの間にか惚れたって告白してきたってわけ」
「あとは朱音の彼氏になった孝樹が私達2人の中に混ざるようになって、いつの間にかいつも3人でいるよーになったの」
初めの方、朱音に何度もデートに付き合わされた――なんて事は言わないでおこうっと。
朱音怒らすとあとが怖いし…ね。
「そういやあの時、男からの風当たりが強かったなぁ…」
「あははw朱音モテモテだったもんね!」
あの頃の朱音引っ切り無しに呼び出しされてたし。
女の私から見ても朱音魅力的だしなぁ〜、羨ましい。
そんな話の途中で思い出したかのように孝樹が一言。
「いゃ、気付いてなかったと思うけど紗代のファンも半分ぐらいいたんだよ?」
何を言われたか理解できずに暫く時が止まる。
「そうそう、紗代のファンは表には出ないもんねー」
「結構人数いたみたいだけどな」
目の前で展開される話題に頭が付いていかない。
だって、そんな事あるわけない。
私は告白も殆どされなかったし、よく喋る方でもなかったし、朱音みたいに魅力的でもないんだから。
「こぉーら、紗代、これマヂだからね?」
「…うっそだぁ…」
いつもよりも真剣な目つきをしている朱音に笑い飛ばす事をはばかられる。
無言の圧力が――なんか重い…。
「…そ、そうだったの?」
「そそ、俺朱音に言われて何人か忠告しに行ったし」
「お前中学からやってたのかよ…」
「まぁな」
「え?越高、なんで知ってんの?まさか…」
「あ゛〜!ほら、プール着いたぞ、プール!」
かなり苦しそうに雅斗は話題を逸らそうとやっと見えてきたプールへと誘導するが…。
「越高、どうなの?」
朱音は引っかからなかったらしい。
フフフと口元に笑みを浮かべながら雅斗ににじり寄って行く。
「…ご愁傷様」
と、孝樹がボソッと呟いていた。
「何の話してるの?」
「まぁ…積もる話って奴?」
「へぇ〜」
朱音があの状態になるとテコでも動かない事を知っている私達は、木陰に座って暫しの休憩を楽しんだのであった。