表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/46

18.影

帝と園内を回るのは思った以上に楽しかった。

でもやっぱり、雅斗と回りたかったと紗代は少し後悔していた。

帝といるのは楽しい――でもやっぱり、雅斗とは違う。

何が違うのかはよく分からないけど…。


「疲れた?」

「え?ううん、違うよ。何で?」

「なんか上の空だったから」

「えへへ、ゴメンナサイ」


小さい変化にも気付いてくれるところは帝さんも雅斗も同じなのになぁ…。

私いつからこんなに贅沢になったんだろう?

カッコよくて、優しくて、紳士的で…非の打ち所なんて何処にもないような人が隣にいるっていうのに――早く雅斗に会いたい。

そんなことを考えている時、急に帝さんの足が止まった為、紗代は気付かず帝さんの背中に突っ込む。


「――った、帝さん?」


どうしたのか訪ねようと帝の顔が見えるところまで行った、その時だった。


「ちょっと、貴女誰ですのっ!?」


目の前には知らない女の子。

そして彼女が睨む先には――私??


「貴女なのね!?帝様を誑かしてあんな事吹き込んで、挙句一緒に遊園地を回るなんて――恥を知りなさいっ!恥を!!」


状況が読み込めずに反応出来ないでいる私を畳み込むように目の前の彼女は紗代に罵声を浴びせ続ける。


「そんな十人並みの顔でよく帝様の隣に立てるものだわっ!私が貴女だったら絶対にやらなくってよ?そもそも一般庶民の貴女が帝様のお傍にいるなど…」

(帝さんの知り合い――なのかな?)


よく分からないけど…謝ったほうがいいような気がして、マシンガントークを続ける彼女に頭を下げようとした次の瞬間。


「紗代を悪く言うのは辞めてくれないか?」


怒りも怒鳴りもしない澄んだ声が、彼女のマシンガントークを止めることになった。


「――…帝様…」

「それと、君のような子に名前で呼ばれる筋合いはないのだけど?」

「…ぇ、そんな…私は…っ」

「まず非礼を詫びるのが常識人なんじゃないの?」


これは誰だろう??

笑顔も話し方も、口調でさえさっきまでと変わらない。

でも…さっきまで紳士的で優しかった彼が、今は…怖い。


「帝様っ!何故このような女を庇うのですか!?」

「はぁ…、頭の悪い女性は嫌いなんだ。紗代行こう」


帝に背を押されながら歩き出すと、唇を噛み締め、皮膚が白くなるほど手を握り締めている彼女の真横を通り過ぎる。

その目に涙が溜まっている事に気付かない訳がない。


「帝さん、あの子は…?」


帝の名前を知っていたし、さっき逸れたような事を言っていたから、鈍い私でも彼女が帝さんの連れなのだと分かる。

でもなら何故、あんな風に遠ざける必要があったのかが分からない。

帝さんも連れを探していたはずなのに…。


「あぁ、嫌な思いをさせてしまったね。あの子の代わりに僕が謝るよ。ゴメン、紗代

「そうじゃなくて、なんであんな事を…?」

「なんの事だい?」


瞬間、背中が冷えた気がした。

帝さんの顔からして知っていて惚けているという印象を受けなかったから。

――踏み込んではいけない――、そう本能が告げていた。


「ん、ううん、もういいの」

「んーなんか飲み物買って来るね、ここで待ってて」


離れていく帝さんを見ながら思う。

――どちらが本当なのだろう?――っと。

何処までも優しい帝さんと、傷つけることを厭わない帝さんと…。


タッタタータッタタータッタタッタタータッタター…


突然鳴り出した携帯電話を取り出すと、サブガメンに【着信:越高雅斗】の文字が出ていた。


(え、雅斗!?)

「も、もしもし?雅斗??今何処にい…」

「…紗代…今誰といる?」


――あれ?――っと思った。

雅斗の声がいつもと違うと感じたから。


「今は北条帝っていう人と…」

「――ナンパでもされた?」


雅斗の声が――低い…?


「違っ、帝さんも連れの人と逸れたって言ってたから…!」

「同じ境遇の人がいれば紗代は一緒に回るんだな」


疑問が確信に変わる。

雅斗は…すごく怒ってる。

言いたいことは沢山あった。

足が痛かったこと。

何を怒っているかわからなくて怖かったこと。

――でも、それは全部言い訳になる。

もし雅斗に同じ事をされたとしたら…やっぱりいい気はしないだろう。

こんな簡単な事に気付かなかったなんて…。


「雅斗…ゴメン」

「…噴水の前にいるから」


それだけ言って返答も待たずに雅斗は電話を切る。

噴水には心当たりがあった。

観覧車の横にあり、夜はイルミネーションが綺麗だとパンフレット見て二人で見に行こうと言った場所。


「はい、オレンジでいい?」

「え?あ、そのっ、私…っ」

「はいはい、落ち着いて。何?」

「連れから連絡が合って…だからっ…!」

「そっか、よかったね。じゃぁこれ俺の奢り」


そういって手に持っていたオレンジジュースを私に押し付けると、帝は呆気ないぐらい自然に片手を挙げて手を振る。


「紗代、バイバイ」


『またね』とは言えない。

私達はもう会うことはないから。

だから――。


「うん、ありがとっ!」


沢山の感謝を込めて――。

そして、日が傾き始めた中、大きな影を落とす観覧車へと、後ろを振り返ることもなく紗代は走っていく。

その背中に。


「またね、紗代」


と、帝が呟いていた事を紗代が知るはずもなかった。

ここまでお読み下さった皆様ありがとうございます。


さて、ここ数日マジメに毎日更新してるよねぇ…。『珍しく』さ(笑)これも感想を頂いた成果…ですかね(笑)ホントに単純なんですが、頑張れちゃうんだから凄いっすよねぇ〜。


さて、物語も佳境に…と書きたいところなんですが、どこまで書くのか全く分からないので佳境かどうかも不明ですwここでさらっと主要人物まとめときます。あ、ちなみにここまで読んだ時点までのなんで、覚えてるぞーって方は飛ばしちゃってください。


藤枝紗代(フジエダ サヨ)

本小説の主人公。鈍感な所あり。越高雅斗と付き合っている。怪談系が嫌い。美人というより可愛いタイプ。


越高雅斗(コダカ マサト)

主人公の彼氏。容姿端麗。プレイボーイだった為数々の過去あり。今は紗代一筋。


紫藤朱音(シドウ アカネ)

紗代の中学からの親友。毒舌。自分が楽しければよしっ!の性格。孝樹の彼女。


坂江孝樹(サカエ コウキ)

容姿端麗・スポーツ万能・勉強はダメ…のサッカー少年で、朱音の彼氏。結構勝手な朱音の彼氏だけ合って、出来た人柄の人。


北条帝ホウショウ ミカド)

容姿端麗。まだ大部分が謎の人。お金持ちのお坊ちゃま。紗代を気に入ったようだが…?


こんな感じですかね?

ではまた次の更新をお待ち下さい。

評価・感想を頂くと執筆スピードアップする(かも)です。

では、また。近いうちに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ