16.遊園地
「いい加減に許してよーーー」
私はズイズイと先に歩いていく雅斗の後を一定の距離を保ちながら追いかけていた。
雅斗はこちらを見ることもなく歩いていく。
完全にお怒りモードだ。
この原因は30分ほど前に遡る。
終業式の日からめでたく付き合い始めた私達は週に1・2度のペースでデートしている。
まぁデートと行っても公園ブラブラしたり、二人で宿題を片付けたりとか友達でもしそうな事ばかりなんだけど。
一度、「これってデートなの?」って聞いてみた事があったぐらいだ。
雅斗曰く、「二人っきり」って所が重要らしい。
お互い学生だし、バイトもしてないのでお金が有るわけじゃないから、そんなにしょっちゅう色々なところには行けない訳だけど…今日は別なんだ。
二人で今話題の遊園地まで足を伸ばしてみた。
それで一緒に絶叫に乗ったり、メリーゴーランドに乗せられたり、コーヒーカップに乗ってもらったりと、ドラマに出てくるワンシーンのように仲の良い友達っぽいことをしていたんだけど…。
問題はその友達っぽぃ所だったわけで。
こんな風にデートなんて今までしたこともなかったし…これが普通なんだと思ってたんだ。
彼氏と友達って言っても、気持ち以外は特に変わることはないんだって、私普通に思ってたから…。
「紗代、手」
って言って手を繋ごうって意味で差し出された手を見て。
「や、だって暑いもん」
そんな何気ない私の一言から――今に至る。
私本人としては夏だし手のひらすぐ汗かくし、わざわざ暑いのに手を繋いでお互いに暑い思いなんてしなくていいよね?って感じで言ったんだけど…。
その後、雅斗が口聞いてくれないし、一緒にいても一人で勝手にどっか行こうとする。
まぁつまり避けられているわけで…それで冒頭に戻るわけ。
「雅斗ー、言ってくれなきゃわかんないよ。何怒ってるの?」
雅斗が怒る理由が分からない。
手を繋がなかったから?
でもそれでそんなに怒る??
そんな事を思いつつ、振り向きもしない雅斗にめげずに話しかける。
「手、繋がなかったから怒ってるの?」
反応は――ない。
…どうしたもんかなぁ…。
折角のデートだからとちょっとオシャレして普段あんまり履かないミュールなんて履いてきたから、そろそろ足が痛い。
かといって私が留まっても雅斗は気付かないだろうし。
前を進んでいく雅斗を見ながら、足を止めてみる。
雅斗の姿が遠ざかっていく。
でも、もう歩くのも限界に来ていて、慣れないミュールを履いた為に出来たマメで足が痛い。
(携帯あるからいいよね?)
一度も振り返ることなく去っていく雅斗の背中にそう呟くと、一番近くにあったベンチへと腰を下ろした。
恐る恐るミュールから足を出してみると…予想通り結構酷い状態だった。
傍に水飲みの為か水道が設置されていたので、ミュールを脱いだまま軽く足を洗って、持ってきていたタオルで拭くと、鞄の中を漁る。
(確かあったと思うんだけど……あ、あった)
探していたものを鞄と財布の中に見つけるとホッと息をつく。
いくらなんでもマメになった箇所をそのまま放置しとくと圧迫されて痛いのは分かりきってる。
それで、ブローチについてる安全ピンを使って水が入って膨れたマメに平行にさして穴を開ける。
これで中の水分を抜き、もう一度足を洗う。
消毒したいところだけど…さすがにそこまでは持ってないからこの際省いて…っと。
もう一度足を拭くと財布から取り出した絆創膏を貼り付けて応急処置完了。
これでいくらかマシだろう。
携帯で雅斗に連絡を取ろうと思うが…ハタと考える。
あそこまで完璧無視していた雅斗が、私からの着信に出るだろうか?
…いや、出ないだろうなぁ…。
そう自分の中で完結させると開いていた携帯をパタンと閉じる。
折角楽しい遊園地だったはずなのに、今は帰ってしまいたい気分になってしまった。
(あ〜ぁ、一人で遊園地にいても楽しくないよー)
ボーっと辺りを見ると家族連れとカップルぐらいしか見当たらない。
雅斗を探しに行く…ってのも考えたけど、この人ごみの中たった一人を見つけられるとは思えない。
避けられてるわけだし。
(帰っちゃおうかなぁ…)
まだ日は高いけど…一人でこの空間にいるのは気が進まない。
痛みを我慢して立ち上がり周りを見渡すと、ちょうど開けた広場の中にいたらしい。
雅斗を追いかけていただけなので自分が何処にいるかも分からないので、まずは場所を把握しようと周りにあるお店を見渡してみると――。
(…ぁ)
紗代の視界の中に見逃せない文字が写る。
――――……
――……
―…
そしてそれから数分後――。
(おいしぃー♪)
笑顔でソフトクリームを頬張る紗代の姿があった。
(テンション上がらないときはやっぱり甘いものでしょー♪)
っと、自分自身に説得を試みつつ、バニラを頬張る。
暑さの中追いかけっこをした身としては冷たいアイスは何とも嬉しい気持ちにさせてくれるのは言うまでもない。
しかもそれが自分の好物ともなれば…嬉しさも一塩。
ついついアイスを食べるのに夢中になってしまい、自分の近くに人が来たことに声をかけられるまで気付かなかったのは無理からぬ事なのかもしれない。
「連れと逸れたの?」
そしてその事が新たな受難になるなんて…これっぽっちも考えなかったのである。
遅れてしまってすいません。実は作者本人微妙な受難にあってまして…。何かというと骨にヒビが入り、初松葉杖生活が始まったかと思うと、身体の至る所に痣を発見し、仕舞いに物貰いまでになるという受難中です。。。…厄年ではなかったはずなのですが…(汗)
まぁそんな訳で暫く会社を休んでいて、原本書いてるのが会社のPCに入っているので続きも書けず…今に至るわけです。んー日頃の行いのせい――でないことを願いたいです。
そうそう、実はこの小説15話で終わるつもり(内容的にねw)だったんですが…書いてたらなにやらキャラの暴走が始まったようです。しかも名前も出てないキャラの…(汗)
こんな気ままに書いている話なので、評価・感想なんて頂けると張り切ります。…そこ、単純とか言わないで(;△;)まぁ単純ですが。。。
もう少しお付き合い頂けたら幸いです。では、また近いうちに。