14.雅斗
――夢――か何かだと思った。
今自分がいるのが雅斗の腕の中だと気付いたから。
眠っていたはず雅斗が起きていたという事も…。
今、私の身体を抱きしめているということも…。
そしてそれを理解すると同時に、顔に血が上っていく。
聞かれることがないと思っていた告白を聞いてもらっていたことの喜び。
同じぐらいに、聞かれることがないと思っていた告白を聞かれてしまった事の恥ずかしさ。
その両者が顔を赤くしていく。
「――俺にも答えさせろよ」
耳元で聞こえる声も反則かもしれない。
いつもと違って、軽いノリのような口調じゃなくて、本当に真剣な声をしているから…。
思わず聞き惚れてしまいそうなぐらいに甘い声。
耳元で囁くから、その息遣いも手に取るように分かってしまう。
好きな人をこんなに近くに感じて…緊張しないわけがない。
それなのに、そんな私の心境なんてお構いなく、今まで以上に私を抱く腕に雅斗は力を込める。
そして――。
「――俺、紗代の事好きじゃない…」
頭が真っ白になる。
予想された結果であったのに思考が飛ぶ自分にどれだけ雅斗が好きだったのか思い知らされる。
それでも…こみ上げてくる何かを抑える術など持っていなくて、早くこの場から離れろと理性が警告する。
腕から逃れようとする私を雅斗は一瞬でもとの場所に戻す。
「ったく、まだ終わってないんだから聞けよ」
「もう聞くことなんて…っ!!」
「紗代の事――愛してる」
「ほら、愛し…………ぇ?」
何を言われたのだろう?
今、すごく嬉しい言葉を貰ったような気がする。
あーあ、バカだな私。
きっと聞き間違いだと思うのに、心が期待で踊ってしまう。
「――愛してる、紗代」
聞き間違いなはずなのに、また同じように聞き間違える。
そう聞こえるといいなと思っているからだろうか…?
『好き』よりも嬉しい言葉…。
「紗代?」
なんの反応も示さない紗代を怪訝に思った雅斗が紗代を横抱きにして顔を覗きこむ。
「っぷ、何泣いてんだよ」
「な、泣いてなんて…」
「こんなに瞳潤まして?」
私は今まさに溢れるだろうという程の涙を瞳に溜めてた。
それでも…泣いてると認めたくなくて。
「…め、目にゴミが入ったんだもんっ!」
「そりゃ大変だ」
「でしょ?だから離し…」
「紗代、無理。ゴメン」
離してもらおうとした途端に、訳の分からない謝罪の言葉を呟いた雅斗の顔が近づいてくる。
そして…雅斗と二度目のキスをした。




