11.メール
噂は瞬く間に広がった。
『越高雅斗と藤枝紗代が別れた!』
っと新聞部が号外を出すほどだ。
それだけ越高雅斗の事を全校生徒が注目している…ということなのだろうか。
…ちょっと飽き飽きする。
付き合ってないしね。
朝から私のところにたくさんの女生徒達が押しかけるが、朱美が全て追い返してくれている。
朱美様様って所かぁ…。
私はというと…朱美と孝樹には今の私の気持ちを正直に話した。
そしたら、二人揃って大きな溜息を吐かれた。
「越高って大人かと思ってたけど…ただのガキなのね…」
「いゃ…でもその反応だとそう返してもおかしくないんじゃないか…?」
っと、私には理解できない話の応酬をした結果、――告白して来い――ということで一致したらしい。
――が。
そんなにすぐに出来る訳もなく…そろそろ一ヶ月が経つ…。
その間、雅斗とは一度も話してない…。
雅斗は…毎回違う子と一緒にいる。
朱音に言わせれば私といる間は殆ど他の子とは話していなかったという。
(もう…私は要らないの…?)
私以外の子と仲よく喋ってる姿を見る度、もうそこに私が入る隙はないような気がして…。
もう私の事を嫌っているかのように思えて…。
とても…怖くなる。
朱音に話したら告白の前なんてそんなもんだと軽くあしらわれたけど…。
怖くて…足が竦んでしまう。
月1で行われる委員会の会議でも、雅斗は私を見ようともしない。
(――避けられてる…)
疎い私でもすぐにそれと分かるほどに…。
それなのに…無常にも時間は刻々と過ぎていく。
将には早い時点で断りを入れた。
彼のことは好きだけど…それは恋愛感情ではないのだと知れたから。
いよいよ夏休みを明日に控えた終業式の朝。
私は、一通のメールを作成した。
------------------
TO:越高雅斗
------------------
お久しぶりです。ど
うしても伝えたいこ
とがあります。
HR後、屋上に来て
ください。
P.S.来るまで待って
います。
------------------
長い夏休みを挟めば、きっと溝は埋まらないと…そう思ったから。
祈るように送信ボタンを押すと、簡単に『送信完了しました』と無機質な文字が表示される。
もう…あと戻りは出来ない――。