別れの時
「お疲れ様でした、野元真崎。」
泣きつかれて眠りについてしまったエリアを迎えにきたエルアはきっかり午前0時に俺のところへと現れた。
「本当に面倒な事を押し付けてくれたな。」
「くす、でも貴方はそんなにエリアと過ごす事が嫌ではなかったようですね。」
そういえば、こいつは俺の考えている事が分かるんだったか。
言葉にも出さないことで笑われるのはなんだか不本意だった。
「気分を害させてしまったようですが、貴方にはこれでも感謝をしているのですよ、野元真崎。これで、エリアも他の天使と同じような扱いを受ける事になるでしょう。」
そう語るエルアの表情には慈しみが満ち溢れていた。
「とりあえず良かったって事だな。」
「ええ。私には良いだなんて言葉で表せられない程素晴らしい事なんですが。」
「これで、お前ともこいつともお別れなんだな。」
「神がお導きにならない限りそうなるでしょう。」
大真面目な顔で、何の疑いもなく神だなんて発言するエルアをみると、やっぱり俺らは違う次元というか違う世界に住んでいるんだという事がよく分かる。
「今までこの子がお世話になりました。
貴方に神の祝福があらん事を。」
目を伏せて、俺の目の前で片膝をつき、胸の前で手を組んで、エルアは仰々しくも祈りの姿勢を取る。
プライドの高そうなエルアがわざわざこんな事までしてくれるってことは、エルアはエルアなりに精一杯感謝を表そうとしているのだろう。
少しの間、じっとその態勢のまま動かなかったエルアだが、目を開くと同時にすかさず立ち上がり、眠ったままのエリアの方にへと近づく。
どういうわけか、エルアがエリアの傍で小さく何かを呟けば、エリアの身体がふわっと宙に浮く。
エルアの背中には六枚の翼、エリアの背中には二枚の白い翼が輝かしく羽ばたいていた。
「エリアとの別れは済まされましたか?」
「ああ、まあな。」
「それでは、私達は去るとしましょう。ご苦労様でした、野元真崎。」
簡潔に礼を述べたエルアと、眠ったまま宙に浮かんで移動するという何とも最後まで彼女らしいエリアとは、俺の部屋の窓から星が漆黒の中でに瞬く夜空の中に消えていった。
一人残った、いや残された俺に到来したのは、幾ばくかの呆気なさと込み上げてくる一抹の寂しさだった。




