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空からの落としモノ  作者: 紫音
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新しい出会い

「真崎さん!あの子・・・・。」


「ん?」


俺はもちろん、この学校にいる他の誰にだって見えない存在となっているエリアといろいろと学校内をうろついて回っている最中、突如としてエリアが少し興奮しながら、びしっとある生徒を指差した。


とりあえず、その指差された生徒を遠目にまじまじと見つめてみる。

その生徒は、人よりはるかに小柄で、低い身長をしていた。

多分、あの体格からして一年なんじゃないだろうか。


とにかく俺のクラスでは見かけた事がない顔だ。

そして、何故か古ぼけた、さして分厚くない本を両手でぎゅっと抱きかかえるようにして握り締めている。

その少女の表情は暗く陰り、お世辞にもあまり美人とはいえない印象をより強いものにしてしまっている。


「で、あの子がどうしたって?」


「あの子は絶対何かの手助けが欲しいと思っているような気がします!」


ひそひそと小声で他人に分からないように囁き会う俺とエリア。・・・我ながらに奇妙な光景だとは思うが、この際仕方ない。


「その根拠は?」


「根拠は・・・ないですけど、私の勘です・・・っ!」


もし、エリアの姿が今俺に見えていたとしたら、多分こいつはきっと胸を張ってそう言ってるんだろうな。・・・・というかその自信はどこから溢れてくるんだっていうの。

こいつの勘なんて怪しい占い師の占いより当たりそうにもないが、ここでそれについて揉めるのもまた面倒だな・・・。


「真崎さん、あの子に話かけてみてくれないでしょうか・・・?」


「なんで俺が。」


「真崎さんがいいっていうなら私が直接あの子とお話してきますけど・・?」


俺がわざわざ見知らぬ他人と話さなきゃならないのもたいがい鬱陶しいものだが、明らかに不審者にしか他ならないだろうこの外国人天使少女を赤の他人の前にみすみす晒すのも後にこれまた面倒な事態を巻き起こしてくれそうだ。

・・・・仕方ない、ここは俺が行くより他はなさそうだな・・・。


お前はここでじっとしてろよ、とエリアに念押しをしてから俺はいつもの優等生スマイルでその少女に駆け寄る。


「すいません、僕二年の野元真崎という者なんですが・・・。」


「っ・・・・!?」


少女はいきなりの俺の出現に明らかに動揺したようだ。

そのか細い肩が小刻みにぷるぷると震えている。


「良かったらお話できませんか?少しの間だけでいいので・・・。」


自分で言っといてなんだが、これじゃあ明らかに俺がこの女をナンパしているみたいじゃないか。

というかエリアは俺にこの少女とどういった話を展開してもらいたかったんだか・・・。


「あ・・・・・ぅ・・・・・。」


奇妙な呟き?を残して、一目散に少女は俺たちが立っていた場所からさほど離れてはいない図書室に全速力で駆け込む。

そして、少し開いている図書室のドアの隙間からじっとこちらをうかがっている・・・・ようだ。


・・・・ああ、やっぱり類は友を呼ぶというかなんというか・・・!

エリアめ、まためんどくさそうな人物を見つけやがった。


「怖がらせたみたい・・・だね。謝るよ、ごめん。それじゃあ僕は帰るから・・・っ、」


そう言いかけた途端、俺の背後にいつの間にか近づいてきていたらしいエリアが耳元でそっと囁く。


「名前を聞いてください・・・!」


名前?そんな事を聞きたがるなんてどうもエリアはこの明らかにあまり関りあいにならない方が良さそうな少女に御執心のようだ。

変わっている者同士通じ合うところがあるというんだろうか・・・?

ああ、俺には理解もしたくない話だ。


「名前・・・。名前だけでも教えてくれないかな・・・?」


「・・・・・・・っ。」


少女はちらりちらりと俺の様子をうかがいながら、それでも尚無言を貫き通している。

その静寂があまりにも長い事続いたものだから、いい加減踵を返そうかと諦めかけたその時。


少女は、姿を消している事を悟られないためにわざと小声にしているエリアよりも更に小さな、消え入りそうなか細い声で。

ようやくゆっくりと言葉を発した。


「な・・・・なみ。」


「ななみ?それが君の名前?」


こくり、と恥ずかしそうに頷いた少女はもごもごと何か口を動かしている様子だが、どうも上手く言葉となって現れはしないらしい。


「ありがとう。また、どこかで会えたらいいね。それじゃあ今日はこれで。」


礼儀正しく、軽く頭を下げた優等生野元真崎は少女からは数歩、また数歩と徐々に距離を広げていく。

少女からは俺達が見えない場所、そして他の誰もが通りかからなさそうな静かなスペースに移動したことを確認すると、俺はそっと小声で多分ついてきているだろうエリアに囁く。


「おい、エリア。ちゃんと名前は聞いてやったんだから感謝しろよ。」


「はい、ありがとうございます。真崎さん・・!」


「でも、あの子をどうするっていうんだよ?なんかまともに話も出来なそうな有様だったぞ。」


「だからこそ、私達が助けてあげるべきなんですよ・・・・っ!私が思うに、きっとあの子は人と接する事が少し苦手なだけなんです・・・。」


そんなに力強く力説されても、大して興味はない俺はああ、そうですか。と冷めた目でそう言うより他はない。

しかし、今まで俺達がこなしてきた人助けに比べて、そんな人の人格そのものに関っている大がかりなものを俺らが簡単にどうこう出来るって話でもないと思うんだけどな・・・。


「とりあえず、あの子の情報を集めたことからはじめた方がよさそうですね。好きなものとかが分かればあの子も少し話しやすくなるかもしれないですし・・・・。」


今回は、なんだかずいぶんとエリアがやる気になっているようだ。

いつも以上にべらべらと饒舌に喋りやがる。


「おいおい、本当に俺らだけでなんとか出来ると思ってるのか・・・?」


「上手くいくなんて保証はないですけど、とりあえずやってみなくちゃはじまらないじゃないですか。」


「まぁ、それはそうかもしれないけどな・・・。でもどうしたんだよ、お前。今回だけ力の入りようが違う気がするぞ?」


「・・・・そう、ですか?・・・昔の私と、重ねちゃってるのかもしれません・・・。」


「昔のお前?」


「はい、私いまでも口下手なんですけど、昔はもっと自分の意思を表現出来なかったんです・・・。だから、その・・・いつもおねえちゃんに助けてもらっていて・・・・・お前は天使に相応しくない、天使なんかじゃないなんて、いろいろ酷い事も言われて・・・・。」


そう言って、痛々しく必死に愛想笑いを浮かべようと懸命に努力するエリア。

エルアの口ぶりといい、どうもエリアは落ちこぼれとしてそれなりの散々な待遇を受けてきたらしい。

いつもは馬鹿みたいに明るいエリアが、こんな風に落ち込んだ顔を見せると、それだけで俺は馬鹿みたいに動揺してしまうのだった。


「でも、お前っ・・・これから翼を生やして、そういった奴らに見返してやるために頑張ってるんだろ?なら、もうそんな事言われるなんてことはなくなるはずだ・・・っ!」


「・・・わたし、は・・誰も見返そうなんて思ってはいません。確かにそんな事を言われたのは悔しいですけど、元々は私の出来が悪いのが原因なんですし・・・。でも、真崎さんにそう言ってもらえて私すごく嬉しいです。」


にこり、と弱弱しく微笑んでみるエリアは確かに色々と力不足なのかもしれないが、その心意気は天使と呼ばれるもののそれなのかもしれないと、うっすらとそう思った。


「・・・・とりあえず、ななみ、だったか?あの子と打ち解けられたらいいわけだよな。・・・仕方ない、俺も手伝ってやるよ。」


「本当ですか・・・っ!?ありがとうございます、真崎さん・・・・っ!!」


俺がぶっきらぼうにそう言ってやると、エリアは先程までの落ち込みようはどこへやら、ぱあっと顔を輝かせてあからさまに喜んでいる様子だ。


・・・正直な話、これ以上面倒なのあまり関りあいになんてなりたくないが、面倒な奴その一があまりにも情けない顔をしたことで珍しく俺の心がぐらついてしまった。

きっと明日辺りになればなんでそんな事を言ってしまったんだろうと後悔する羽目になるに違いない。


とりあえず、ななみという少女を助けようと躍起になっているエリアには、今よっぽど困った様子が表に出ているような悲惨な人間以外、目に入りはしないだろう。

これ以上収穫を得られるわけでもないし、今日のところはひとまず帰るとするか。


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