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空からの落としモノ  作者: 紫音
18/33

少女と学校

眩しい朝の日差し。清清しい青空。今日もいつも通りに俺の一日が始まった。

いつもと違うことといえば、エリアの騒騒しい朝の挨拶がないという事だろう。


昨日は、あのはた迷惑な姉妹をとりあえず自室から追い出して眠りについたわけだから、あれからエリアがどうなったのかはわからない。

ただ、いつもは無駄に早起きなエリアが起きてこないところを見ると、昨夜はずいぶんと長くまで特訓が続いたのだろう。


こんなに静かな朝の目覚めを迎えられるのは、なんだかずいぶんと久しぶりの事のように感じられた。


大きく伸びをして、ベットから飛び起きる。

とりあえず顔でも洗いにいこうかと数歩足を進めた時。


「おはようございます、真崎さんっ!」


・・・・・ああ、なんだろう。今とっても嫌な空耳が聞こえたような気が・・・。


「あの、ですね。私昨日あんまり寝てなくてふらふらなんですけど、真崎さんにどうしてもこの事だけは伝えておきたくて・・・・っ。」


姿の見えない同居人は、呆気に取られている俺のことなんて完全無視でべらべらと一人得意げに話を進める。


「おい、エリア。今どこにいる?」


「え?あ、ここです。ここ!」


そう言い終るが早いか、エリアが目と鼻の先に瞬時に姿を現す。


・・・って、近っ!?


「きゃっ!?ごごごごごめんなさいいいいいいい・・っ・・・!!!」


当のエリアもそれにはびっくりしたようで、顔を真っ赤にしてだだだだだと壁際に物凄い勢いで後退してしまった。

こいつ、姿が見えない間は触覚がないからって明らかに油断してただろ。


「あは、はは・・・・ごめんなさい、私どじで・・・・。で、でもっ!ちゃんと出来るようになったでしょう?お姉ちゃんに怒られながら頑張って練習したんです・・・!」


なんだかとても必死に俺にアピールしてくださるエリア嬢。

ああ、はいはい。それはどうもよかったですね(棒読み)。


「おめでとうとでも言っとけばいいのか?まぁ、これでやっと外に気兼ねなく出れるわけだ。」


「これでっ!学校にも連れて行ってくださいますよね!?」


やたら興奮気味に、目を輝かせて俺に詰め寄るエリア。なんだかこいつは以前行った学校とやらがずいぶんと興味深いものに思えたらしい。


「ああ、まぁ・・・放課後にはな。大体の時間は言っとくから、後でこの前の場所に来いよ?」


「はいっ!ありがとうございます・・・!!」


小躍りしそうなくらい嬉しそうにはしゃぐエリアの姿を後目に、俺は身支度を整えるために一人階段を下り始めた。




キーンコーンカーンコーン、間抜けなチャイムの音が校舎中に響く。

とうとう、恐れていた放課後がやって来てしまった。


きっと、エリアは急にお腹が痛くなったりすることもなく、喜び勇んで約束の場所である校舎裏でそわそわと待ちわびていることだろう。

はぁ・・・・っ、どうしようもなく気が重くて仕方ないな。


「よおっ!どうしたんだよ、暗い顔して。今日一緒にどっか寄って帰らないか?」


俺とは対照的に、現在幸せ溢れる学園生活をエンジョイしてらっしゃる綾人が軽く俺の肩を叩く。


「悪いな、今日は用事があるんだよ。お前秋桜とはどうしたんだよ?」


「今日、美優は家で華道の稽古がある日らしくてさ。放課後は急いで帰らなきゃならないんだと。」


「へぇ。なんだ、俺はてっきりもう別れたのかと。」


「おいおいおい!そんな不吉な事言うなよっ!俺ら今でも結構上手くやってるんだぜ?」


ちゃっかり美優なんて呼んでるし、そりゃもう羨ましいくらいに上手くいってるのはだいたい分かっていたが、とりあえず皮肉の一つでも言っておかないと俺のこの鬱々とした気持ちは晴れやしない。


「それよりお前こそエリアちゃんとはどうなんだよ?」


興味津々な様子で、おせっかいにも色々と聞きただしたそうな素振りを見せる綾人。


「エリアぁ?いろいろと面倒だよ、いろいろとな。」


本当に何もないのだから、そう言うより他はない。最近俺はむしろエリアの保護者気分になっていっているような気がする。


「でも、エリアちゃんすごい可愛いじゃん。お前んちにいる間に上手くやっといた方がいいんじゃないか?」


「あのなぁ、お前は分かってないからそんな事言えるんだよ。あいつ日本人じゃないし、いろいろとややこしいんだよ。」


「ああ、そうなのか?俺的には可愛い外国人少女との国際恋愛ってすごく燃えるんだけどなぁ。」


「その言葉そっくり秋桜に伝えとくぞ。」


「ちょっ、ちょっと待てって!ごめん、今のナシ!ナシだっての!!」


綾人との馬鹿げた戯れあいを続けて少し気分がまぎれたところで、ようやく俺はエリアの待つ校舎裏へと足を進める。


「おい、エリア。来たぞ。」


小声でそっとそう囁くと、来てくださって良かったです、というどこかほっとしたようなエリアの声が俺の真後ろから聞こえた。

やっぱり予想を裏切らず、(俺的には裏切ってほしいところだったのだが)エリアは俺のことを待ち続けていたらしい。


「お前の姿は誰にも見えないんだからな。ここからは小声で会話しろよ。」


「はい、わかりました。」


「で?とりあえず校舎をずっと回ってみればいいのか?」


「はい、それで私が困っていそうな人を見かければ真崎さんにお知らせしますので。」


エリアに困っている奴を見分ける能力があるのかはかなり謎だが、とりあえずここは素直にうなずいておくことにした。


「じゃあ、俺の後にちゃんとついてくるように。はぐれたら承知しないぞ。」


「はいっ!」


こうして、俺と姿が見えないエリアとの校舎探検ツアーが始まった。



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