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勇者は101人いる外伝 ~100人の勇者たち~  作者: 酔生夢死
1章 少年、召喚される幕間
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幕間1‐1 100人の勇者たち、スキルを披露する

(´・ω・`)本編にこの話を挟むのが辛くなってきたので分ける事にしました。

 本編の方の幕間は別の話と差し替えていく予定です。

 これなら忘れた頃に追加しても問題ありませんね!(本音)

 ――時は彼是(かれこれ)、勇樹たちが召喚された翌日まで(さかのぼ)る。

 勇者たちは異世界へとやってきた際に己に備わった能力を確かめるべく、早朝の訓練場に集められていた。

 集められた勇者は、まるで遠足へ行く直前の園児の如く一様に浮ついた雰囲気を漂わせている。


 何せこの世界には“レベル”と“スキル”というゲーム的で明確に強くなれるシステムがあり、自分たちは勇者という立場でこの世界に呼び出された。

 そんな空想のような事実に、異世界へ憧れを持っていた彼らがはしゃがない筈がなかった。


 訓練場の広さは勇者たち100人+αが集まってもまだ広さに十分な余裕があり、近くの壁際には木剣や木製の槍などの武器に胸に的が書かれた木人などが並べて置いてある。

 自分たちが知って言うような運動施設ではない、肌がヒリつく様な空気を漂わせる訓練場は召喚されて来た者たちの気を高ぶらせた。


 ざわめく勇者たちの中で静かに周囲を観察している者たちがいた。


「それにしても、みんなを集めて何をするつもりなんだろうね?」


「知らないわよ、そんな事」


 そう話しているのは、初日に勇樹と対面していた天使星也と花菱明日菜の一団だった。

 彼らを含む様々な理由から魔王討伐に積極的な者たちは、早くから「魔王討伐組」を組織して、未熟ながらも積極的に動いて情報交換を行っていた。

 そして、星也と明日菜の2人は社交性やリーダーシップの高さから討伐組の男子組と女子組のリーダーとなっている。


 2人がコソコソと話していると、眠そうに欠伸をする御影元春が目を擦りながら声を掛けてきた。


「ふあぁ~、眠っ。そういえば、なんか昨日の夜に脱走しようとしてた奴がいたみたいで騒がしかったけど、どうなったか知ってる?」


「詳しい事は解らないけど……見た所、殆どが連れて来られているね。まあ、そもそも出入り口には兵士がいるし、僕たちは城の中しか動けないんだから逃げようがない」


「本当に……監視されているみたいで嫌になるわ」


 明日菜はこれ見よがしに疲れた溜息を吐いた。

 何せ目に付く所には必ず兵士がいて、部屋から出歩いているだけで行き先をいちいち聞かれ、トイレの中にも監視が立っている。

 運動部所属で上下関係については慣れていたが、行動範囲が制限され四六時中どこへ行っても監視される生活に、性格的にも奔放で見知らぬ他人について回られるという経験の無い明日菜はとっては、気の休まる暇が無かった。


「フッ、それだけ向こうは(オレ)らを危険視しているという事。ならば今は雌伏の時、英雄として覚醒するまでは韜晦して見せようじゃないか」


「うっさい、厨二」


 同じ討伐派仲間の神崎刹那と明日菜の言い合いに、星也は思わず苦笑いを浮かべる。

 星也もエルクレア側の対応には思う所があったが、明日菜のように表に出すほど参ってはいなかった。

 肯定も否定もしない星也を尻目に、明日菜は同類たちに目を向けた。


「はぁ……それにしてもアイツらも、もう少しどうにかできない訳?」


「あははは……」


 今度は呆れたように溜息を吐く明日菜に、星也は同じように苦笑いするしかなかった。

 訓練場に連れて来られた勇者たちの反応は大きく3つに分かれていた。


「うお~! 修行回キター!」


「ここでさっさと剣術スキル上げて、次に行きたいな」


「剣とか俺、初めて触るからワクワクしてきた!」


 まずは全体の3割を占める星也・明日菜が率いる魔王討伐に積極的な『正統派』グループである。

 ただ積極的と言ってもその多くが、“ハーレム”や“成り上がり”などの物語の主人公のような華々しい世界を夢見てやる気を出す者が殆どであり、武道経験者も殆どがこの部類に所属していた。


「あぁ……訓練とか本格的に異世界へ来たって感じだな」


「お前はいいよなぁ、スキルが戦闘系なんだろ? 俺なんて生産系だぜ?」


「はぁ~、モンスターとかテイムしてモフモフして過ごしたい……」


 次は魔王討伐やる気ゼロの『流され系』グループ。

 100人の勇者の内の5割を占めていて何気に良スキル持ちが多いのだが、今一つ意欲に欠け、どちらかというと『折角召喚された異世界を楽しもう』というスタンスである。

 そして最後が……


「クッフッフッ、この【僕】が勇者ねぇ……」


「……フッ」


「『サテライトネットシステム』にアクセス不可能……現在位置確認不可……緊急マニュアルに従い、収集した情報から最適行動を検索中……」


 少数派の約2割を占める『目的不明』グループである。

 彼らについては個性的な者が多く、星也たちも何人かに接触を試みたが、煙に巻かれ殆ど会話が成立になかったので仲間に引き入れる事を諦めるしかなかった。

 そして、他人との接触が極端に少ない為に個人の情報が全く不明なグループでもあった。


 これから始まる出来事に一行が期待に胸を膨らませていると、甲冑を着た男性が入って来て彼らの前に立った。


「初めまして勇者諸君。俺はエルクレア王国四番騎士団第3外街隊隊長ノレドだ。今日から俺が、暫く君たちの戦闘訓練を任された訳なんだが、諸君にはどの程度動けるのか早速だがテストさせてもらう」


 ノレドはそう言うと、後ろにいた兵士に合図を送る。

 すると兵士たちが壁際に置いてあった武器や木人を抱えて、勇者たちの前に並べた。

 それを見た勇者たちが更にザワつき始めると、ノレドが手を叩き注目を集める。


「さて、勇者たちには召喚された際、ユニークスキルという特殊スキルを覚えている筈なのだが、【能力表示(ステータス)】にそれが無い者はいるか?」


 101人目の『巻き込まれた一般人』という件があったので、王国側も他にも勇者ではない者がいるのではと戦々恐々だった。

 幸いというか、100人の勇者から挙手する者は居らず、全員がユニークスキル持ちだという事が確認された。


「それでは、これから各々が得たスキルをここで試しに見せて貰おう。まずは……そこのお前!」


「はいっ!」


 ノレドに指名され、返事をして立ち上がったのは天使(あまつか)星也だった。

 星也がノレドの前まで来ると、ノレドが星也に尋ねる。


「お前のスキルの系統は? 必要な物があるなら後ろの道具から適当な物を選べ」


「系統は戦闘系で、何か武器があれば」


 星也はそう言って木剣を手に取る。

 ユニークスキルについては【能力表示(ステータス)】の説明文を読んだだけで一度も使った事が無く、本当に使えるか不安だった。

 しかし剣を握った瞬間、久しぶりに乗った自転車の乗り方を思い出すかのように、頭の奥で何かがカチリとはまり込んで、少し集中すると木剣の白くボンヤリと光り出す。


「よし、行きます!」


 星也は剣を振り上げると、少し離れたと所に並んでいる的が書かれた木人に斬りかかった。

 若干ふら付きながら降り下ろされた剣は、木人の中ほどまで食い込んで光が消え去る。


「ふぅ、僕のスキルはこんな感じです」


「うむ、見る限りは武器を強化する系統か。あんな力任せのぶれた剣でもアレだけ出来れば良い方か……よし、次はそこのお前!」


「は、はい!」


 次々と勇者たちが名指しされては、己のユニークスキルを発現させる。

 中には全く攻撃できない完全支援系スキルや、逆に超攻撃的だが使用するとデメリットが発生する物まで、様々なスキルが披露された。

 そして、花菱明日菜の番が回ってきた。


「次はお前だ。系統はなんだ?」


「私のスキルは……コレです」


「っ!?」


 明日菜は話の途中で姿を消し、ノレドの背後に現れて他の勇者のように特に誇るでもなく、再びノレドの前に現れる。

 ノレドは驚いて目を見開いた。


「どうやって移動しているのか全く気付かなかった……何だ、その能力は」


「『超加速』って言うスキルです。ただ発動できる時間はほんの数秒なので、他の人みたいに戦いに使うには慣れが必要みたいです」


「そうなのか……いや、使い熟せば凄いスキルになるぞ」


「ありがとうございます」


 他の勇者と違ってどこか冷めた雰囲気を漂わせている明日菜に、ノレドは思わず声を掛けたが気のないお礼を言って戻って行った。

 入れ替わるように百目鬼(どうめき)(みかど)が前に出てきて、すれ違いざまに明日菜を小馬鹿にする様に鼻を鳴らす。


「フン、やる気のない輩は城でガタガタと震えていればいいのだ。そうすれば俺様が世界を救った暁には元の世界に返してやろう」


「威勢が良いな。お前のスキルは?」


「見せてやろう。世界の一端を支配する俺様のスキルを!」


 帝はそういうと、ノレドを手で突いた。

 ただし、高校生にしては体格の良い帝でも現役の騎士を突き飛ばす事は叶わず、逆に突いた帝が一歩下がってしまう。

 突然の帝の行動と発言に戸惑いながら、ノレドは頭を掻いた。


「えーっと、今のがお前のスキルなのか?」


「フッ、そう急くな。慌てる乞食は貰いが少ないのだぞ?」


 帝は得意げに右腕を突き出すと、手首だけ曲げて足元を指差す。


「とりあえず、『跪け』」


「ムッ!」


 帝の言葉が合図となり、ノレドの身体がガクッと沈み込む。

 ノレドも踏ん張って立っているが、彼の身体には鉄塊が絡み付いたかのような重圧が掛かっていた。

 ノレドの様子に帝は満足そうな表情をする。


「それが俺様のスキル。触れた者の重さを増やし、万人を地に伏せさせ屈服させるスキルだ。さらに効果は俺様と接触した時間や回数で倍率はさらに増える」


「なるほど……使いようによっては便利なスキルだな。だが、俺を実験台にするとはいい度胸だな」


「生憎と、口下手な俺様では説明に困るスキルなのでな。スキルのレベルは低いから害は少ないと判断し、実際に体験して貰った方が早いと考えたまでだ。それ、掛けた効果も解除しよう」


 帝は悪びれもせずに指を鳴らすと、ノレドに掛かっていた重圧がフッと消える。

 軽くなった肩を回しながら、ノレドは個性的過ぎる勇者に溜息を吐く。


「お前の力は良く分かった。じゃあ、次の者!」


 その後も睨んだだけで物を発火させる能力者が調子に乗ってボヤを起こし掛けたり、未来予知能力がユニークスキルとは全く関係ない特技を披露したりとトラブルもあったが、様々な能力が披露されてその日は終了となった。

最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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