「06」二人の秘密
「まさか、地下室が増設されていたとは......」
さらに、この空中庭園の体積まで増えていたとは。
「改築したって、そういうことか...」
誰にともなく、俺はそう言った。
「はい。陛下はあの景色を大層気に入っておられたと聞いておりましたゆえ、その地下を改築いたしました。お気に召されたでしょうか?」
ニーフは、いつもと変わらぬ様子でそう聞く。
「まぁ、いいんじゃないかな。俺もこういうのはあってもいいと思うし」
「......」
それにしても、メアリー、だったか。彼女もなんか、似ているんだよな...
「私、そんなに似てますか?」
不意に、彼女が話し出した。
(え?いや、ちょっと待って、なんで考えていることわかったの?!)
「私、実は、サトリの異能保持者なんです。本当は黙っていたかったのですが」
「いやいやいや、ちょっとまって、異能者?君が?」
いや、いきなりだったからビックリした。
まさか、こんな近くにサトリの異能者がいるとは思わなかった。
「すみません。おふざけが過ぎました。お許しください。本当は、似ているな...と、陛下が声に出していらしたので、少し出来心で、つい。本当に申し訳ありません」
「だ、だよなぁ。そんな近くに、異能者が居るわけ無いよな...あー、ビックリした」
久しぶりに驚くという感情が出てきた。
少し嬉しい。
「左様ですか。.........それでは、こちらが会場となります。あくまでも、このパーティーの目的は、あなた様の謝罪ですので、お忘れなき様」
(謝罪...)
「メアリー、陛下になんてことを...」
「ニーフ、それは別に構わない。もう、俺が本当に謝るべき人は、リレルくらいしかいないけど、頑張るよ。ありがとう、メアリー」
「もったいなきお言葉、ありがとうございます」
そうして、俺たちはそのパーティー会場に足を踏み入れた。
謝罪を含んだ講演も終わり、現代の科学技術と魔法技術等についての講演や、試験品の発表も終わった頃。
「チホ、久しぶり!」
「久しぶりだな、リレル。あと、待たせてすまなかった」
俺は深々と頭を下げた。
「待たせ過ぎだよ。何世紀経ってると思ってるのさ?」
(う、やっぱりこうなった...。でも、そうなるようにしたのは俺だ)
「すまない。まさか、こんなに時間がたっているとは、思いもよらず...」
「まぁ、わからないでもないよ?一世紀なんてあっという間じゃない。でもチホ、ヒューマンの一生は短いんだよ?」
「...わかってるつもりだったさ、それくらいは」
彼女ははぁ、とため息をついて、頭を挙げるように言った。
「君はこのヒューマンたちの頂点なんだよ?自覚を持ってよ」
「そう......だったな。ありがとう、リレル」
「どういたしまして。それじゃあボクは今日は何もないから、一日付き合うよ」
彼女は俺に手を差し出した。
それから、俺たちはパーティーに出されていた物を食べながら、この味は新しいだ、この味は懐かしいだ、彼女から送られてきた手紙に驚いただ、色々と話をした。
「陛下、楽しそうだな」
そんな様子を見て、ニーフは誰にともなく呟いた。
「そうね。四世紀も離れていたんだもの。私達には思いもよらない何かがあるんでしょうね」
メアリーも、いつものように淡々と彼に返す。
「なぁ、メアリー。良いのか?あれを言わなくて」
「さあ?なんのことでしょう」
彼女は、彼の問いにとぼけたように返した。
いや、事実とぼけているのだが。
「まぁ、メアリーがいいなら、こちらとしてはなにもしないのだけど」
「それは、見返りを要求しているのかしら?」
「さあ?なんのことだか」
二人は、会場の端で、そんな風に駄弁っていた。
「ニーフ!メアリー!来てみろよ!このチェッツ、酸っぱくない!」
チホのその声に、呆れたような表情で、二人は目を会わせた。
「「はい、ただいま」」
次回「07」




