「04」懺悔の朝焼け空
「景色ー、景色ー、ふんふふんふふーん♪」
「陛下、ご機嫌ですね」
「そうであろう?そうであろう?何故ならば四百年ぶりの景色だからなぁ!そりゃ、ウキウキもするさ!」
今の俺は、薄桃色のワンピースを着て、その上から白のニットでできた上着を着ている。
「それにしても、見ない内に広くなったものだな?」
俺は、辺りを見回しながら聞く。
俺の目に写るのは、初めて見る物ばかりだ。
「お気に召されましたか?」
「うむ!この壁と床の色の調和といい、この扉のゴシックっぽさといい!君たちもいいことをするものだな!」
「陛下のその言葉をかけられた彼らも、さぞ光栄でしょう」
彼は微笑みながらそう言う。
「何を言うか。ニーフも十分それに値するだろうが」
俺は振り向きながら、彼にそう言った。
ニーフは、俺が目覚めた最初の頃にいた人間だ。この風景を見せてくれたのも彼だ。
こいつに感謝せずに、何が王か。
「お褒めにあずかり、至極光栄の至りにございます」
しかし、こういう硬いのもいかんな。
まぁ、でも。
この硬さが、彼としてのキャラクターを魅せているのだろう。この事には手を出さないでおこうか。
「へ、陛下!?」
廊下を歩いていると、一人の老人に会った。
彼は、驚いた様子でこちらを見た後、ニーフを見て、いや、睨んだ。
「貴様、今ニーフを睨みおったな?どういう了見があってニーフを睨むか!」
「も、申し訳ございません、陛下!し、しかし、いつお目覚めになったのでございますか?ヤナギ・チホ女王陛下」
......ふむ、こいつは要注意人物だな。
「さっきだ。して、お前さん。名を名乗れ」
俺がこの人界の王であるなら、それ相応の威厳を出さなければ。
俺は、そういう認識のもと、少し強めに彼に問うた。
「オリガヤ・フレア・アロンにございます。そこに居るニーフの父親にございます」
え、こいつがニーフの親父?
いや、でも結構老けてるなぁ。どちらかというと祖父と言われた方がしっくり来る。
「そうか、アロン。ちょうどよい。俺の目覚めを知らせてこい。ニーフには俺から頼んで一緒に居るのだ。文句はないだろう?」
少し殺気を持たせて、彼にそう言った。
「お、仰せのままに...」
彼は立ち上がり、回れ右をして去っていった。
しばらくして、アロンの姿が見えなくなると、俺はニーフに聞いた。
「あれは本当にお前の父親か?どちらかというと、祖父と聞いた方がしっくり来るのだが」
「父で間違いありません。彼は、その、大変申し上げにくいのですが、煙草をやっておりますゆえ、あのように老けて見えるのです」
道理で臭かった訳だ。
「彼は追放するか。あぁ、限らず、煙草やってる奴全員追放するかな」
俺はあの臭いが嫌いだ。
臭いし染みるし、あれはどうにも、魔法を使っても洗浄しきれん。
そして、俺たちはついに、屋敷の外に出た。
「おお、見事な夕空だな!」
空はオレンジ色に輝いており、その光が、下のシーデートの紫色の花畑を染め上げ、幻想的な画を写し出している。
そして、空はだんだんと白みだし、空は藍色からだんだんと青へと変色していく。
「あ、あの、陛下...」
「良い。言わなくてもわかっている。夕空と朝焼け空を間違えたなんて、誰にも言うなよ?」
俺は、ひきつった笑みで彼の顔を振り返る。
それに彼は、はいと笑顔で答えた。
(やはり、こいつは俺とは違うのだな)
そんな笑みを見ていると、つい、俺はそんなことを考えてしまっていた。
次回「05」




