「03」景色
「陛下、それでは私は、陛下のお目覚めを城の者に伝えて参ります」
そう言って立ち上がる彼に、俺は待ったをかけた。
「待て、ニーフ。城とはなんのことだ?」
俺はてっきり、空中庭園の屋敷の寝室だと思っていたのだが。
「...陛下が人界の女王として君臨された際に、全国から優れた建築者たちが、陛下のために作り上げた、陛下のための居城のことにございます。この部屋は、その一室にございます」
「場所は、どこに建てた?まさか、あの屋敷を改築した訳ではあるまいな?」
あの屋敷はとても気に入っていたんだ。
あれを壊されたとなれば、黙っているわけにはいかない。
「大変申し上げにくいのですが、その通りにございます......」
彼は、本当に申し訳なさそうにそう頭を垂れる。
「マジかよ...。あれ、結構気に入っていたのに...。あの丘から見る水樹!そこから流れる川!紫色のシーデートの花畑!そこの奥に見える、大きめの屋敷!...あぁ。今となっては、もう記憶の彼方なのか...」
はぁ、マジかよ...。何弄っちゃってんの?アレすごいお気に入りだったのに...。
俺がそう落ち込んでいると、彼は、あの...と、声をかけてきた。
「あの、そのことでしたら、ご心配なさらずとも良いのでは?」
「何がその事だ!お前は、そんなことで済ますのか!......嗚呼、お前はあれを見ていないからわからんのだろう。そうだろう。あの水車小屋も、あの流れる水の音も...はぁ...」
いかんな、さらに気分が落ち込んだぞ...。
「ですから、あの、大変申し上げにくいんですが、その、屋敷の外観は変わっては降りませぬゆえ...」
なに?
外観は変わってはいない、だと?!
「.........マジ?」
俺は、被っていた布団から、顔を少しだけ覗かせて、期待に輝く赤い瞳で、彼を見つめる。
「はい。左様でございまs──?!」
その言葉に、俺は思わず。
「でかしたぞ、ニーフ!さあ!あの景色を見に行こう!」
布団から跳び上がり、彼の体に、その小さな体で抱きついた。
彼の顔が赤く染まっていたことは、俺の知るよしでは無いことを、ここに注訳しておくとしよう。
ん?あぁ。性別?そんなの、とっくに忘れてるよ!まずはあの景色だ!
次回「04」
あ、因みに目が赤いのは、能力をすべて解放した時の影響であることを、ここに示しておくとしよう。




