「01」物語
お待たせしました!
絶滅種族の転生譚第二譚第二章、始まります!
「主人」
とある部屋の中で、一人の少女が、一人の老人に頭を垂れていた。
「この役立たず!」
老人は、彼女に怒鳴る。
「なぜその人柱を殺させなかった!」
「チホがこの作戦に気づいてしまいました故...」
「...そうか。気づかれたのか。あれほど気づかせるなと言いつけたろう!なぜだ!」
少女は、体をこわばらせる。
しかし。
「固有結界に捕らえていたのですが、ナハトの詩を詠われ、捕らえきれず。それで、彼女に殺させようとしたのですが、ご覧の有り様に...」
彼は、ため息をついた。
人柱を殺すのは、人でなければならない。半分天使の身である彼が、それを代理することはできない。
そして、作戦の都合上、あの英雄共の誰かがこの役に回らなければならない。
老人は、悔しそうに歯ぎしりをする。
「もうよい。次のプランを準備して待機だ」
「はっ...」
(また、この部屋か)
俺は、その日の夜、夢を見ていた。
真っ白な部屋の中に、前世の自分と、今世の自分が会話をする夢だ。
まぁ、ただの会話じゃないんだがな。
俺はふふと笑みをこぼす。
「残念だったね、今回は」
「ああ。そうだな。今回は、どちらに転ぼうとも結果は同じだ」
俺は、前世の姿で、今世の自分に相槌をかえす。
「で、どうするの?」
彼女は黒い髪を指で遊びながら、こちらに聞く。
「さぁ、どうしたものか。復讐っつっても、本心じゃ、それが無意味なだけだとわかっている。悪魔呼ばわりされたことを思い出して、それに憤慨するのも、幼稚だと認めているさ」
けど。
俺はそうやって八つ当たりを繰り返すしか、この世界で生きていけるような気がしないんだよ。
「そう。面倒な物語ね」
彼女は椅子から降りて、こちらに這いよって来て、顔を覗き込む。
「私はそれに巻き込まれたわけだ。巻き込まれ系ヒロインの誕生だ」
「...悪かったよ」
俺は彼女から視線をずらす。
「悪かった?何が?私は、あなたに感謝しているんですよ。こんな退屈でつまらない、実在しない物語を生きることが無くて」
「実在しない物語とは、また面白い表現だな」
「あなたの妹の言葉じゃない。もう忘れたの?」
忘れてはいない。
それは、妹であるクレアの口癖でもあった。幼い頃からの、口癖だった。
この世は実は存在しない。だから、無理やり物語をつくって、上書きしたんだ。言うなれば、真っ白なノートに日記を書くようなものだ。
クレアは当初、それを存在しない物語の集まった文集と言っていたか。
「でも、なぜ、君がそれを知っているのか疑問だ」
「中学生の冒険、と言えば、何となくは想像つくでしょう?あなたはそんなに馬鹿ではないはずよ」
中学生の冒険。
あぁ、そうか。あの時の、ククルんが俺の記憶を見たアレか。
「彼女、あなた一人の記憶を見たつもりらしいけど、実際は二人ね。貴方と私。世界はどうやら、二人で一人のキャラクターとして認識したいらしいわ」
「そう、なのか?」
しかし、何故そうする必要性が...。
「ほらまた。最近、顕著になってるわよ、その必要性を考える癖。前世のネガティブ思考が、今世にまで影響してきている」
「む、言われれば確かに」
治そうと思っても、こういうものは治らない。
仕方がない。
「そろそろ本題に入りましょうか、レレム」
「そうだな」
それをしないと、先に進めない。
少し怖いが、致し方ない。
「先ず。黒幕(仮)はあの剣を使えば倒せるとして、問題は古継乃大蛇ね」
「黒幕って、え?あの剣を使えば倒せるのか?」
「問題ないわ。あの剣は、相手の武器の性能を真似ることができるの」
彼女は俺の膝の上に座り、俺を見上げた。
「知らなかった?」
相手の武器の性能を真似る?
「知らなかった」
「そう。なら、まずはそれから話しましょうか。あの剣の名前はイモウシス。古テンブ語で、柔軟性、曖昧性を意味する単語、イモウウンが語源ね」
イモウシス、か。
「対峙した相手の武器の性能を真似ることから、この名前がついたわ。因みに、真似たことのある性能は、スペルを詠唱すれば復元できるわ」
「何でそんなに知ってるんだよ?」
「さあ?なぜでしょうね」
スペルは後で送っておくわ
彼女はそう言って、俺の元から立ち上がった。
「いったり来たり、忙しい奴だな」
「しっくり来る場所がないのよ。本当はベッドの中が一番なんだけど、ここにはないから」
彼女は机の上に腰を掛けると、ふぅ、と息を吐いた。
「それにしても、彼女を消滅させたいなら、あの人柱を消す以外方法はないわね。どうしたものかしら。個人的にはチゼに賛成なんだけど」
「同意だ。しかし、それをやってしまうとなると、難易度が跳ね上がる。何せ、相手にじっとしてもらわないといけないからな」
神に憑かれた者を憑依から解くのは、そこらの悪霊を憑依から解くのとは訳が違う。
供物や魔力。それに知識や耐性、時間、方角。それらがなければ、まず不可能だろう。
「そうだ、レレム。あなたの異能、全部解放しちゃいなさいよ。それで、相手を封じ込めればいいじゃない!」
なるほどな。その手があったか。
「したとして、どうなるんだよ?」
「あなたの復讐ごっこははれて終演を迎え、そして.........。何でもない。忘れて」
いやいやいや、そんなに間を置かれたら気になるから。忘れられないから。
「忘れられるわけないだろ。なんだよ、そして何があるんだ?」
俯く彼女の顔に、影が走る。
「何でも......ないから」
彼女の目から、涙がこぼれ落ちる。
なんなんだ?
「...わかった」
そして、夢が覚める。
いつもの朝が来る。
それは、俺に残された、唯一の日常なのだろう。
しかし。
今日はなんだか、そんな日常が羨ましい。
俺の頬を、一筋の涙がこぼれ落ちた。
次回「02」
ティータニアの進化表
分身
↓
分身転移
↓
変身
↓
変型
↓
従者召喚
↓
従者間固有情報共有
↓
???
↓
悪魔召喚
↓
???
↓
???
↓
???and???
↓
???
↓
???
↓
???
↓
???final




