「03」面
(あぁあ。冷炎、持って帰れたら良かったのに)
持ち帰って、いろいろ研究したかったのだが。
解明されれば、おそらく巨万の富が得られたろうに。
しかしまぁ、今は仕方がないかな。
俺は、扉を潜ると、そこに続いていた廊下をひた歩く。
しかし、この姿で廊下を歩くといつのは、変質者感が半端ではない。もうあの空間は過ぎたんだし、魔法使っても問題ないよな。
「Make clothes of the magic」
(魔法の服を作れ)
呪文を唱えると、俺の体に、黒いワンピースが着せられた。
「もっとまともなのが良かったのだが、ここの魔力濃度と現在の精神状態じゃ、これが限界か」
まぁ、あるだけましだろう。
俺はそうため息をついた。
ダメだ。
おそらく、俺は今、恐ろしく不安定なのだろう。ここが何処だかわからないというのは、実に恐怖と不安を与える。
(レイリーの奴は、そんなところを見せなかったな)
俺はふと、そんなことを思いながら、廊下の突き当たりに見える丁字路を、どちらに曲がるか検討していた。
(分身をつくって、先に行かせるか?)
俺はその思考に行き着いたとき、あることを思い出した。
(それなら、向こうにも分身を置いて来れば良かったんじゃないのか?)
俺は急いで後ろを振り返る。
と、三十メートルほど向こうに、白い面をつけた、黒いモヤモヤとした何かが、こちらに迫ってきているのに気がついた。
(俺が気配に気づかなかった?!)
俺は瞬時に臨戦態勢に移行する。
(あれは、おそらく物理攻撃は効かないだろう。当たり判定があるとしたら、あの面か)
俺はふーっと、息を吐く。
ティータニアの能力で、脚力を増強させる。
体重との比率は、1:50だ。
刹那、俺は思い切り横に跳んだ。
すると、俺の元居た場所に、モヤモヤした黒く鋭い触手が突き刺さっていた。
(ちっ、予備動作が見えないとは、これまた厄介な!)
面がこちらを向く。
俺は、相手の前方、少し斜めよりに距離を詰める。
頬に触手が掠め、浅い切り傷を作る。
そして、俺はそれを無視して、発勁を面に叩きつけた。
パカン、と音がして、面がモヤから分離する。
モヤがぶるぶると振動して、ブクブクと泡立つ。
とっさに危険を感じた俺は、遥か後方へと待避。
直後、それから無数の刺刺しい触手が全方向へと伸びて、かと思えば、一点に集まり、小さくなって、黒いビー玉のようになって、コトンと音をたてて落ちた。
「なんだったんだ、あれは」
俺は、思わずそう呟く。
(持って帰りたいのは山々だが、無理そうだし、今回はやめておくか?)
(しかし、またいつあれに会えるかわからない)
(ポケットでも作って、そこに入れて持っていくか)
俺はそう思い、そのビー玉のようなものを拾って、ポケットに入れた。
その後。
俺は分身たちを利用して、周囲の探索を行った。
(しかし、広いな。ここ)
俺も、分身と同じように探索をしていると、ここの広さがよくわかった。
(そうだ、今のうちに、異能を進化させておこうか)
たしか、次は従者間固有情報共有だったか。
召喚している従者、及び分身たちの座標以外に、彼女らが見ているものや、認識しているものを共有し、いつでも望めばそれを閲覧できる能力らしい。
(便利だな)
俺は、近くにあった扉を開け、中に入る。
そこは、小さめの部屋だった。
(ここなら、安全だろう)
俺はそう思い、一応一人だけ護衛に分身を置いて、部屋の真ん中に居座る。
目を閉じる。
そして、意識する。
(分身共は皆、俺自身と同じだ。同じなら、俺がそれを操れない道理はない。それらの一切合切を掌握できない筈がない。なら、わかるだろう。理解できるだろう。それらの全てを!)
俺は、心の中で、能力に問いかける。
そして、次の瞬間。
俺は、全ての分身たちの状態を、把握した。
そして、知った。
俺は、今。
(俺は今、ひとつの巨大な魔術の中にいる!)
と。
次回「04」
ティータニアの進化表
分身
↓
分身転移
↓
変身
↓
変型
↓
従者召喚
↓
従者間固有情報共有(personal idea)new
↓
???
↓
???
↓
???
↓
???
↓
???and???
↓
???
↓
???
↓
???
↓
???final




