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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
神々の企み Die Handlung der Götter
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「02」呪詛と儀式と隠し事

「いや?俺がにぃに隠し事をしたときの事を思い出してな」


「ヤナギさん、もしかして私のこと疑っているんですか?」


 おそらく、彼女はこの状況が、どういう状況なのかを知っている。もしここで、俺がさらに問い詰めた場合、おそらくは俺の望む結果は得られにくくなるだろう。なら、俺はどうするべきか。


 想像する。


 俺なら、俺が相手の立場なら、どう動くか。


 トマヤの南にあるアギト国にいる、一人の哲学者が言うには、曰く「相手の立場に自分が成り代わって思考したところで、自分の主観であるということには、代わりがない。人はいつだって主観的で、決して客観的には物事を見れない」のだそうだ。


 しかし、それは、相手がどういう相手か知らない場合に限ると俺は思う。


 そいつのことを完璧に理解し、把握することができれば、その思考が読めるだろう。


 ただ。


 ただ、今は、それがわからない。なら、結局のところは、主観的に判断するしかない。


 俺は、ニヤリと横に引いた口から、否定の言葉を呟いた。


「いや?そうとは一言も言っていない」


 そして、続ける。


「もし、レイリーさん。貴女がそう思うのなら、何か心当たりがあるのでは?」


 あえて。


 俺はそう付け足した。


 そうすることで、相手の本心を見抜こうという魂胆だ。


 すると、彼女は諦めたようにため息をついた。


 ここで注目するべきは、この動作である程度、彼女がこの事を隠していたということが明らかになりました、ということではなく、なぜ、それをする必要があったかだ。


 なぜだ?


 わからない。


 わからなければ、聞けばいい。


 おそらく彼女の次の発言は、それに類するものだろう。


 しかし、俺なら、隠すことがあるならば、例えば「......ヤナギさんって、私少し苦手です」と、誤魔化すだろう。


 ただまぁ、それはおそらく前置きのようなもので。


 彼女は、はぁ、とため息をついた後、こう続けた。


「...... ヤナギさんって、私少し苦手です」


 ほら来た。


 俺の予想は正しかった。


 しかしこのとき、俺の予想とはかなり、彼女の言動は違っていた。そう。その違いの原因となるものは。


「わかりました、話しますよ」


 彼女は、意を決して、話始める。


「この洞窟は、私の─────」


 突然の耳なりと、意識の混濁に、俺は目をしかめる。


(なんなんだ、これは...?!)


 そして俺は、意識を失った。


 俺の間違いの原因は、少しばかり、期待しすぎたということだったのだろう。














 目が覚めた。


 俺は、思考を整理する。


(おそらくだが、彼女は俺に害意がある)


 高校で習った、『呪詛』という呪いだ。


あるテンポで、私は、から始まる低周波の呪文を詠唱することで、相手に呪いをかける。


 呪いとは、精神的な攻撃を行う魔法の総称とされており、それが魔法故に、魔力を使う。


 魔力とは、以前にも説明した通り、魔素から生成される万能的な超常なエネルギーであると同時に、その望む現象を引き起こすための、強制力としての意味合いを持つ。


 呪詛は、体表面の魔力の振動による、対象の纏っている魔力に対する共鳴反応によるもので、あらゆるものに断熱作用があろうがなかろうが、その影響を受けるのと同じく、どれ程強固なボルグを張ろうとも、容易く貫通してくる性質を持つ。


(ちっ、厄介な)


 俺は、心の中で舌打ちと同時に愚痴を呟く。


 しかし、それにしても。


 理由がわからない。


 なぜ、彼女は俺に呪詛なんてものをかけたのか。


 いや、秘密を守るための、強行手段だろう。


(まったく、嫌な奴だよ)


 俺は、ため息をついた。


 まだ、ため息をつけるだけの精神的な余裕はある。


 ため息をつくということは、自律神経が乱れている証拠だ。本当に疲れきっていれば、ため息すら出ないだろう。その点、ポジティブに考えれば、俺はまだましだと言える。


(それにしても、ここはどこだろうか)


 俺は、辺りを観察した。


 煉瓦造りの巨大な壁に、左右の方向へと登り階段が備え付けられ、階段の間には明かりが設置され、階段にはレッドカーペットがしかれている。


 俺がいるところは、寝台、というよりかは儀式台、祭壇に近い。


 周りを蝋燭で囲まれているところや、生け贄らしき何かの肉や臓器、血が祭られていることから観察しても、悪魔を召喚する儀式魔法であると見受けられる。


 それにしても、なんだろうか。


 かなり寒い。


 部屋はそんなに狭くはない。むしろ広いくらいだ。


 階段とは別の方向の壁には、どうやら出入り口らしき門が設置されているが、これは、おそらく結界の意味をなしているだけの飾りと見て良いだろう。


 俺は祭壇から起き上がると、床に立ち降りた。


 薄暗い。


 少し寒い。


 近くに炎の灯りが在るというのに。


(まさか、これが噂に聞く『冷炎れいえん』か?)


 冷炎。


 先天歴の三十年台後半によく見られた、赤い小さな篝火かがりび。それは、通常の炎が発熱反応を起こすのに対し、この炎は、吸熱反応を示すとされた、不思議な火。


 炎の構造的に見ても、吸熱反応を示すことはあり得ないことで、ある魔石は、燃やせば透明な炎を表すらしいが、今でも、氷のように冷たい炎は、どういう仕組みかは解明されていない。(ちなみに、わかっているだろうけど、透明な、というのは、限りなく色が薄すぎて、人の目が色彩を認識できないという意味だ)


 そもそも、すでにその冷炎そのものが見つかっていないのだ。


 それがなければ、くわしく調べることもできないだろう。


(ふむ、冷炎と獣の肉と血と肝、そして、人の生きた肉体を用いた儀式。か)


 思い当たらない。


 リレルやククルんなら、何か知っているかもしれないが。


(どうやら、これ以上は先には進めないらしい)


 ここで魔力を使ってしまうのは、おそらくリスクが高いだろう。したがって、俺に残された選択肢は、隠れるか、逃げるか。


 隠れて、様子を見て、誰か来ないかを見る。


 これは、相手がどんな奴か知ることはできるだろうが、リスキーだな。安全な方を選ぶとしたら、逃げるが吉だろう。


 その場合、敵に俺を追わせることになるが、どのみち、脱出しなければならないのだ。後者が一番賢明な判断だろう。


 俺は、レッドカーペットの上を歩き、階段を登る。


 そういえば、先程から俺の服がない。


 素っ裸だ。


 俺はよく服を脱がされる。


 本当に、いい加減にしてほしいな。


 そういえば、祭壇にも何もなかったな。


 布の一枚でもあれば良かったのだが。


 仕方がない。


 背に腹は変えられないからな。


 そして俺は、階段を上りきって、そこにあった扉をくぐった。


次回「03」


ティータニアの進化表


分身

分身転移

変身

変型

従者召喚

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