「01」操り糸
絶滅種族の転生譚、第二譚第一章、開幕!
アナイグラスは、視点をとある二人の少女に照準を合わせ、天界から観察していた。
「フフッ、リュウのやつ、まんまと罠に引っ掛かりやがった」
隣で、ティテイファスが、彼女の腹黒い笑みに寒気を感じながら、ため息をつく。
「なんだよ?何か不満か?」
「ええ、全く。本当に、彼も先天使の一人なら、それくらい気づいてもおかしくないでしょうに。彼の脳筋っぷりには、いささか感心しますよ」
今度は、その台詞にアナイグラスがため息をつく番だった。
「それもそうだな。こんなに簡単にかかるとは、思ってみなかったよ。やっぱり、半人半神使にするには早すぎたんじゃないのか?」
彼女の作戦に、というよりかは、単なる暇潰しなのだが、こうも容易いと彼女たちにも思うところがあるのだろう。
二人とも揃ってため息をつく始末だ。
「まあまあ、良いじゃないか。俺はそれでも、リュウの驚く様がみたいんじゃよ。カカッ」
突如、俺たちが転移させられた場所は、真っ白な洞窟の中だ。
(いや、これは転移というより、世界そのものが再構築されたような....)
とにかく、ここを出るしかないか。
武道会(とは名ばかりの喧嘩祭り)の途中で、司会実況者がいないとなっては、向こうもパニックになるだろう。
俺はふと、隣にいたレイリーに声をかけた。
「どうする?」
「そう……ですね。ヤナギさんなら、なんとかできるんじゃないですか?」
彼女はこちらをうかがうような目で見下ろす。
(そうだよな。分身転移を試してみるか)
俺は少し考えるそぶりを見せた後、分身を作り出した。
「分身!?」
彼女は少し仰け反ると、目を丸くしてそう叫んだ。
しかし、無視だ。
今はそんなことに構っている時間も暇もない。
俺は、外に待機させてあるはずの従者に照準を合わせた。
しかし、反応がない。
(従者は転移の対象外なのか?)
困ったな……。
(少し遠いが、空中庭園の分身と転移してみるか)
そして、同じように意識をフォーカスするが、どうやら、外にいた分身とも転移することができないらしい。
(なるほど。これはおそらく、ジャミング加工の別タイプか何かだな?)
ある区域内での魔法や異能の使用は可能だが、区域外への遠距離への使用は不可能みたいな。
ティータニアは仙術のジャミングの対象外だったことを鑑みるに、異能と魔法は全く異なるものと考えても良いはず。
それが通じないということは、また別の何かってことだな。
とりあえず、出口を探すか。意味は皆無だろうけど。
「少し、向こうを探索して、地理状態を把握してきてくれ。終わったら、ここへ戻ってきてキャンプの準備をして待機」
「かしこまりました、マスター」
分身は、そう言うと俺の背後に進む道に印を刻み、向こうへと歩いていった。
「あ、あの、ヤナギさん」
「何?」
「さっきのって、もしかして、異能……ですか?」
知られたらちょっとめんどくさそうだし、ここはなんとか誤魔化しておくか。
「ノーコメントで」
俺はそう言うと、マジックバッグから転移結晶を取り出そうとして、舌打ちをした。
ちっ、しまった。鞄従者に持たせたままだ。こうなったら食料も何もねぇじゃねぇか。
どうする?向こうは分身に探索をさせているし、俺自ら動くくらいなら、体力を温存して、分身に出口を見つけさせた方がまだ賢明か?
「ノーコメント、ですか……そうですよね、こんな一般人にそんな大それた──」
するとレイリーは、なにやらぶつぶつと呟きながら、下をうつむいた。
(こいつ、実は陰キャラなのか……?)
今はそれに頭を傾けている余裕はない。
「それにしても、余裕そうだな、お前は」
「そ、そんな風に見えますかね?」
動揺した風を見せる彼女。
俺は、口元の動きや視線、瞳孔等を観察しながら訊ねた。
1種のプロファイリングの真似事のようなものだけどね。
「まるで、前にも何かあったみたいだ。もしかして、こういうことに馴れてたりするのか?」
視力を二倍に強化。魔力は使わない。ティータニアの能力だけで、視力を強化する。
彼女の瞳孔が開き、視線が逸れる。
「そんな風に見えますか?」
「見えなかったら聞かない。で、どうなんだ?」
あえて俺は、そう高圧的に聞いた。
彼女の頬の筋肉がひきつる。
「無いですよ。こんなことそうそうあってたまりますか!」
(……なるほど図星か。しかし、なぜ嘘をつくんだ?)
人は、隠したいことがあるときに嘘をつく。というのは、ケントの言葉だ。
俺がにぃの隠していたプリンをこっそり食べたときに、これで白状させられたのをよく覚えている。
(思い出したら、笑えてきたな)
俺は、ふふっ、と笑みをこぼす。
「な、なんですか?こんなときに笑い出すなんて?」
「いや、俺がにぃに隠し事をしたときの事を思い出してな」
俺は、ニヤリと企みの笑みを浮かべた。
※次回から、おそらく不定期的な投稿になる可能性があります。
ご了承ください。
次回「02」
ティータニアの進化表
分身
↓
分身転移
↓
変身
↓
変型
↓
従者召喚
↓
???
↓
???
↓
???
↓
???
↓
???
↓
???and???
↓
???
↓
???
↓
???
↓
???final




