「08」日常の螺旋
俺は、同じ姿の分身を作り出して、彼女たちを目的地まで運んだ。
(もう、分身のすがたを変更させられることすら、朝飯前になってきたな....これが、たぶん従者召喚ってやつだろう)
俺は、元の姿に戻ると、鞄から服を取り出して着る。
ちなみに、召喚した従者は、一体増やして俺たちの上空で待機させることにした。
帰りに彼女達に運んでもらおうという算段だ。
「なぁ、チホ。お前は本当に俺の妹なのか?」
ケントが怪訝な顔をする。
まあ、そう思うのも当然だろうな。
「ティータニアの能力だよ。俺もまさか、あんなことができるとは思っていなかったがな....全く、ククルんたちの一族とバルスの国民たちは、なんというものを作っているんだと感心したよ」
そう言いながら横目にククルんを見やると、彼女は、別になんでもいいじゃない。と耳を垂れる。
「まぁ、それでもよかったじゃないか。快適な空の旅、どうだったよ?」
「私は結構気持ちよかったぜ。まるで人がゴミの様だったよ」
気分良さげに伸びをするフレア。
(人がゴミのようだって、どこかで聞いたことのあるフレーズだな....)
「ボクはもう遠慮したいかな。前に大鷹にさらわれて餌にされかけた事を思い出したよ....」
リレルが鳥に拐われて餌に──だと?!
(ちょっと見てみたいかな、それ)
などと、先程の余韻に浸りながら、一行は宿を探す。
旧メリゴの首都、ハウナーは、前に言った通り、南メリゴにある。
山脈を越えて、二キロ先にある大きな都市で、コロシアムはそこのデボンと呼ばれる区域にある。
俺たちは、そのデボンと呼ばれる区域のとある宿にチェックを済ませると、俺とフレアとチゼとケントの四人は、コロシアムに武道会の参加の申請書の提出へと向かった。
「うわ、思ったより大きいな、ここのコロシアムは」
「そうだな、トマヤの2倍はありそうだな」
俺は小学生の頃、トマヤの武道会に出場(といっても、一番低いランクだった)したことがある。
無論、全部秒殺(殺してない)して、全工程は普段の三倍の速度で終了したわけなのだが。
正直あの頃は面白味がなかったが、今回は大丈夫だろう。
なかなかに期待できそうなマッチョ野郎とかが並んでいやがる。
(楽しめるといいけど)
そう思いながら、受付の前に並んだ。
「えっと、四人ですね」
受付の人が、そう言って木の札を渡した。
それを俺が受けとると、彼女は俺の失われた右腕を見て、叫んだ。
「もしかして片腕の英雄様ですか!?」
最近増えた二つ名が、その女性の口から発せられる。
「えっと....出場に何か問題があったか?」
もしかしたら、出場を拒否されるかもしれない。
そう思った俺は、少し不安そうにそう尋ねた。
「いえいえ!問題ありません!ぜひご参加してください!なんなら、最後に勝ち残った人と対戦、なんてどうですか?」
「いや、それはさすがに....俺も今は片腕だけだし、本来の力は多分出せないと思うから」
彼女はそれ以上追及はせず、話を続けた。
「わかりました。それでは改めまして。武道会の出場には、その木札を持参してご来場下さい。そこに書かれている赤い番号がエントリーナンバーになります。そして、その下のバーコードより、次の対戦相手を確認することができます。出場者の皆さんは、明日の十時までに、お時間に気をつけてご来場ください」
申請を終えた後、俺たちは特に何をするでもなく、まっすぐと宿へと帰っていった。
そして翌日、俺たちはコロシアムのステージ上に立っていた。
「さあ!やって参りました今年も残すところあと1週間!そうです!聖夜祭といえば、この武道会!今回はどんな勝負が見られるのでしょうか!今回は実況このレイリーがお送りいたします!」
実況者による開会の合図が鳴り響き、観客が歓声をあげた。
「えっと、俺は150番だったか」
この武道会(と言って良いのかよくわからないけど)の内容を簡単に説明すると
一回戦→4組に分けて、1組づつ乱闘をして、上位十六名を選び出す。
↓
二回戦→1組(四人)でトーナメント戦をする。
↓
三回戦→トーナメント優勝者同士でトーナメント
↓
四回戦→優勝者と前回優勝者が、一対一でやりあう。
↓
終了
と、こんな感じで進む。
「──それではお待たせいたしました!組分けの発表です!皆さん、バーコードから情報を読み取って、試合時間を確認してください!」
レイリーがそう話を進める。
確認すると、どうやら俺の出番はこの後すぐらしい。
俺は軽く準備体操をすると、その場でじっと立ち止まる。
周囲の音から、会場内の選手たちの人数を把握する。
(だいたい一組三百名ってところかな?)
一回戦の乱闘はすぐに始まる。
この乱闘のルールは、殺しては行けない。最後まで立っていたものが勝者という、極めてシンプルな作りになっている。
「それでは、そろそろ第一回戦が始まりますので、皆さん準備のほどよろしくお願いします!」
そして、数分後、乱闘開始の合図が鳴った。
次回「09」
ティータニアの進化表
分身
↓
分身転移
↓
変身
↓
変型
↓
従者召喚new
↓
???
↓
???
↓
???
↓
???
↓
???
↓
???and???
↓
???
↓
???
↓
???
↓
???final




