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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
日常の螺旋 Daily life to continue forever
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「05」準備

 下に降りると、既にコナタとケントは家に着いていた。


「もう来ていたのか。久しぶりだな、にぃ」


 俺は、玄関でコナタに手を振っている兄へと挨拶を掛けた。


 彼はそれに気づいて、俺に視線を向けた。


「久しぶりだなチホ。しかし、相変わらず変わらないな。もう望みがないんじゃないのか?」


 ケントは俺の前で屈みこみ、俺の頭を撫でる。


「撫でるな!」


 俺は彼の手を払い除け、後ろにさがる。


 久しぶりに無性に腹が立った。


「この小さい子の様に見られる感覚、久しぶりに思い出したぞ。本当にそれ腹が立つからやめてほしい」


 俺はつんとそっぽを向きながらそう言った。


「ごめんごめん。しかし、何でこうも伸びないんだろうな、身長」


「うっせ!」


 彼のそれにそう返しながら、俺は兄のとなりに立つフレアを見上げた。


 ──それにしても、フレアもずいぶんと背が高くなったものだ。並んで見るものだから、その身長の伸びがよくわかる。


 フレアとケントがほぼ同じ高さじゃないか。


(まあ、低身長の俺からすれば、そんなに変わらないのだが....)


 なんか、自分で思って少し傷ついた....。


 これから身長に関しては考えないようにしよう。自滅するだけだ。


(....思って早々同じことに....)


 内心そんなことに頭を抱えながら、しかしそれを表に出さずに平然を装う。


「フレアも、随分と背が伸びたな」


「ん、ああ、そうだな。お前と肩の高さが同じだな」


 そんなフレアとケントの話を聞きながら、俺はオルメスの方へ行く。


「オルメス、しばらくの別れだな」


「そうだね。といっても私はあまり、チホと会話ができなかったから、少し残念だけど」


 悲しそうに目を伏せる彼女。


 そうだったな。


 確かに、こいつが死んでから、生き返って、本当に、あまり会話をしたことがなかった。彼女自身が無口だったということもあるが、何も話しかけなかったな。


「悪いな、あまり話ができなくて」


 俺は、彼女へ頭を垂れた。


「いいよ、チホはそれでも、私の強さの元なんだから。気にしないで」


(強さの元....か)


「俺がもっと周りに目を配っていれば、あのとき....」


 うつむいて、俺はそう呟いた。


「泣くことは体に悪いよ、チホ。でも、泣きたいなら、泣いてもいいよ。ありがとう」


「....泣いてねぇよ」


「泣いてるよ。隠さなくても分かるんだから。それに....んうん、やっぱりなんでもない。それじゃあ、そろそろ行くね」


「俺としては、その台詞はなんだか腑に落ちないんだが....まぁ、いっかな」


 俺は、彼女を玄関まで見送った。


(ああ、次はもっと、みんなと仲良くやれたらいいな....)


 そんなことを心の内に秘めながら。













「さて。そろそろ俺たちも準備するか」


「そうだな。そういえば、コロシアムには何に乗って行くんだ?」


 俺は、マジックバッグの中に着替えやら何やらを詰め込みながら、ケントに聞く。


「んーっと、バスかな。電車は線路がまだ復旧してないみたいだし」


 その言葉に、ククルんが耳をピクリと震わせる。


「の、乗り物は嫌よ。乗り物だけは嫌だからねっ!?」


 あ、そういえば、ククルん、乗り物に弱いんだったか。


「大丈夫だって。たしか、薬箱に酔丹すいたんがあっただろ?」


「酔丹なんてあったの?」


 酔丹すいたん


 ショーランセイの樹の皮を発酵させたものと、仙灯せんとうと呼ばれるチャリナ特産のユリの花に良く似た植物を乾燥させたものを混ぜ合わせてできる薬だ。


 主に車酔いや、酒による酔いなど、あらゆる酔いに対して効果を発揮する酔いの予防効果がある。


 因みに仙灯の花は百合に似ていると言ったが、これはれっきとした食虫植物で、花弁の縁には麻酔の効果を含んだ毒を分泌する刺があり、その毒で虫を誘き寄せ、中央の喰触と呼ばれる蔓のようなもので、それを捕獲し、奥にある消化液(pH1~2程度の酸性)で、瞬時に消化し栄養を吸収する。


 そのため、薬にするときは乾燥させて消化液を蒸発させる必要がある。


 また、酔丹とする時は、この刺とショーランセイの解毒効果を反発させないために、ショーランセイの皮は予め粉末にして使う。


 発酵させるのは、この時に増殖する菌類が、粉末にしやすくさせてくれるためと、もうひとつ、これがコーティング剤になって、さらに仙灯の麻酔毒の危険性を弱めてくれるからだ。


「ああ。前にククルんが車は酔うから嫌だって言ってたろ?その時にちょっと買ってきたんだよ」


 しかし、この酔丹。猫科には毒と同じなのだそうだ。


 なぜなら、この発酵の際に鉄分が多く発生するからである。


 この仕組みは、未だによくわかっていないらしい。


 閑話休題それはともかく


 買ってきたと言っているチゼも、それくらいは理解しているだろう。


 パッケージには、『猫科の動物に服用させないでください』と書いているくらいだ。


「チゼ、ボクはそれはやめておいた方がいいと思うんだけど」


 リレルがチゼに忠告する。


「どうして?」


「猫科の特性が強いククルんだよ?発酵したショーランセイなんて入ってるんだから、ククルんには多分に毒だよ」


 リレルの言葉に、チゼがはっと息を飲んだ。


「そうだった!」


「そうだったじゃないわよ!チゼ、あなたは私に毒を盛るところだったのよ!?」


「ごめん....」


 まったく、チゼはこういうところで石に躓く。


「仕方ないな。ショーランセイの実でもボクが取ってきてあげるよ」


 そうか、普通にその手があったか。


「あ、ありがとう、リレル」


 そうして、俺たちは出発の準備を終えた。


 しかしこのショーランセイの実。実はかなりレアで、普通の店には置かれていないのである。


(どうやって取ってくるんだよ....)


 そんな疑問を浮かべながらも、まぁ彼女ならそれくらいと、なかなか楽観的に見ている俺であった。

 次回「06」


ティータニアの進化表


分身

分身転移

変身

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