「03」ヤナギ家の秘密
「ん、ん....どこだ、ここは....?」
なんだか凄く懐かしい....そして、怖い夢を見ていた気がするんだが、どんな夢だったか....。
意識が覚醒してみるとそこは、真っ白な立方体の部屋の中だった。
(確か、エナジードレインをルーナに食らって、意識が遠退いて....それから、どうなったんだ?)
俺は、少しデジャヴを感じながら、辺りを見回す。しかし、排気孔はついていなかった。
俺はなぜか、それに少しの違和感を感じた。
ふと、背後に気配を感じて、振り返った。
「貴女は?」
振り向くと、そこには俺がいた。いや、正確に言えば、それは、転生後の俺がいた。
はっとして、自分の体を確認する。
見覚えのある、懐かしい体。俺は今、転生前のレレム・リルとしての姿をしていた。
白っぽい肌に、白い髪をした、ノホニ列島でしか見れない人種の体。
先天性体内魔力欠乏型白皮症(せんてんせいたいないまりょくけつぼうがたはくひしょう)特有の容姿だ。
「私は、貴方の転生した体の本当の持ち主、と言った方が、貴方には分かりやすいかしら」
彼女は、俺の方に視線を向け、いや、これはなんだろうか。
見ている、という感覚はしない。どちらかと言えば、ぼんやりと眺めているという方が正確かもしれない。
「詳しいことは、知識としてあなたの記憶野に送っておくものとして、私はこの機会に話をしておこうと思ったの」
「話?」
怪訝な顔をする俺に、ニタリと笑みを浮かべる。
「えぇ。私の異能について、この際話しておこうと思ったの。正確に言えば、ヤナギ家の、なんだけどね」
なんだか、胡散臭く聞こえるな。
異能。
それは、魔法や妖術なんかとは、全く別の力。簡単に例えるならば、俺の分身という、このティータニアによって得られた能力も、異能の一つだ。
そして、この異能には、発現系統において、二種類に大別される。
ひとつは、先天性血縁系。簡単に説明すれば、遺伝していく異能のことだ。
二つ目に、後天性血縁系。これは、要約すれば、輸血なんかで、異能所有者の血を体内に取り込むことで、後天的に異能を発現させるタイプのことだ。もちろん、これも遺伝する。
ちなみに、俺の分身はこの後天性血縁系にあたる。
彼女のいう、ヤナギ家の異能は前者、先天性血縁系にあたる。
この異能というものは、魔学者学会、通称シーズ(CSS)でも色々と研究がされているが、何せ、異能所有者の数が圧倒的に少ないため、研究があまり進んでいない。
だから、俺はそれ以上のことは知らない。
「ヤナギ家の異能?」
思い当たる出来事は存在しない。
胡散臭いその台詞に、俺はその言葉を復唱した。
「普通なら信じられないでしょうけど、あなたは条件が満たされているから使えるはずよ」
条件?
「ヤナギ家の異能は、異能の進化よ。後天的に受け継いだ異能を進化させる。身に覚えがあるでしょ?」
異能の進化....だと?
身に覚えがあるとするならば、おそらく分身転移がそれだろう。
「分身転移が、それにあたるのか....」
「そしてもうひとつ」
もうひとつ、ってということは、異能が2つあるのか?
俺は、生唾を飲んだ。
「正確には、分身の進化なんだけど、変身が使える」
なんか、胡散臭くなってきた。
「詳しいことは、知識として記憶に送っておくわ」
「何でそんなことを、俺に言うんだ?」
「それも含めて、ね」
彼女は笑いながら、姿を消した。
気がついたら、俺はベッドの上で横になっていた。
「あ、もう目が覚めましたか。残念」
俺が顔を横に向けると、そこには半裸になったルーナがいた。
「残念、じゃねぇよ。てかオルメス、何で助けてくれなかったんだよ?」
ルーナの後ろで顔を真っ赤にして、はわわわわとか言っているオルメスに、俺は聞く。
「べ、別に、助けなかった訳じゃ無いよ?た、ただ、私の中の好奇心がですね!?」
「好奇心って....お前まさかルーナ。俺に何かしたわけじゃないだろうな?」
なぜか半裸になっている彼女に、俺は半眼になってそう聞いた。
「したよ~!あんなことや~こんなことまで~!キャハーッ!照れちゃうなぁ~。もう、思い出させてくれるなんて、この、変態さん!」
「変態はてめぇだろぅがこんちくしょう!」
こいつ、本当に何をしやがったんだよ!?
「罵倒するちーちゃんもか~わいい!」
そう言って俺に抱きついてくる彼女であった。
次回「04」




