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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
黄泉帰りの使徒 Apostle of the vampire
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「17」黄泉帰りの使徒4

 妖装空目の能力は、妖力で空間を操ることだ。


 そして、その中でも空間把握というものがあり、小さいものならば一瞬の一瞬のその一瞬で方がつくのだが、このあまりにも広すぎる構造の物を解析するのには、かなり時間がかかる。


 さらに言えば、この能力(空間把握)の使用中は、幽体離脱した状態になってしてしまう。


 おそらくは、この間に俺はチゼにこの部屋に運ばれたと思うのだが....。


「おはよう、じゃねぇ。どこだよここ?」


 俺が気がつくと、ひとつのベッドがある部屋──おそらく仮眠室だろう──にいた。


「お前が寝ていたから、とにかく安全なところ探してたんだよ。心配ない、お前が気を失った場所からは十メートルくらいしか離れてねぇよ」


 チゼはそう言って、ベッドに腰かけた。


「そうか。それなら....」


 と、そのとき、複数の気配と殺気が壁の向こう越しに感じた。


 そしてそれは、その壁の前で音がピタリと止まる。


(敵か。随分荒いやり方をするじゃないか)


 俺は未来視を発動して、その壁をにらむ。


 するとそこには、数秒後に銃が乱射されている未来が映っていた。


「!!」


 ベッドは、その銃弾の軌跡の真ん中辺りだ。


 丁度、そこには俺たち二人が重なっては位置されていた。


(このままじゃ、二人とも殺られる!)


 俺は走ってチゼの方へ走りより、体当たりをして彼をそのライン上から回避させる。


 しかし、右腕が潰れている状態を放置して、更にはそのまま体力もかなり消耗しているためか、俺より図体の大きいチゼによって無力化される。


(仕方ない、こうなったら!)


 チゼが動揺して何かを言うが、かまわず俺は、魔法で防御する。


「──!」


 直後、魔法の発動と同時に、マシンガンみたく銃が乱射され、それは目の前の壁を悠々と突き破り、俺の張った結界に突き刺さっていく。


 ガガガガガガガガガガガガ、と、どれくらいの時間、その轟音が鳴り響いただろうか。


 その音は、障壁に阻まれてかなりくぐもっているが、しかし想像を絶するの轟音だった。


 そして、その銃声がピタリ止んだ。


 目の前には、十や百では数えきれないほどの弾丸が、障壁に突き刺さり、その動きを止めていた。


「Split open!」

(弾けろ!)


 そして、その次の言葉で、大量の銃弾が彼らに向かって一斉に散射された。


 銃の弾丸が壁に当たり、敵に当たり、跳ね返り、ぶつかり合い。


 チュンチュンと音を立てて跳ね回る。


 音の衝撃が傷に障り、激痛を呼ぶ。


 必死にその痛みに耐えるが、酷く痛い。


(これは、早めに対策しないとな....)


 障壁の外で、血肉の雨が舞う。


 異次元人達の肉が引き裂け、骨が砕け、脳漿が飛び散る。


 彼らの防護服が音を立てて砕け、硝子や金属の破片が、塵と共に空に舞う。


 そしてその数秒後、その場には、血と脳髄液と塵芥にまみれた、死骸と無機物の破片の山が築き上げられていた。













 その後、俺たちはすぐにその場をあとにした。


「そう言えばヤナギ。捕まった民間人の場所はわかったのか?」


 部屋を出て数分後。


 チゼはそんなことを聞いてきた。


「あぁ。この船の構造はしっかり理解した。何がどこにあるかも大体な」


 このUFOは、プラズマを使って次元の間を行き来する。


 そのため、外殻層は、そのときの重力圧に耐えられる、強い伸縮性の高い金属が利用されている。


 また、その動力炉となっている部分が、円柱状に十三層からなる機体を貫いており、管制室は、その下から三層目の先端に位置している。


 そして、その真逆となる、上から三層目の、管制室の方角を逆に位置する場所に、民間人は囚われていた。


「しかし、予定が変わった。先にこの機体をテンブ砂漠上空に移す。それから救出作業に入り、これを落とす」


 だって、そっちの方が安全じゃないか?


 俺はそう続けて答えた。


「なぜ?」


「下はおそらく乱闘状態だろう。だったら、それが収まるまで安全なところにいた方がマシってもんだろ?」


 俺たちは、金属製の広い廊下を歩く。


「ここから下にまっすぐ降りていけば、管制室の前のはずだ」


 そこは何もない、強いて特徴を言えば、丁字路のちょうど突き当たりだ。


 目の前には水色の金属質な壁があるだけで、これと言ってなにもない。


「まっすぐ下にって、まさか、突き破るのか?でもこの厚さだぞ?いくら陰斬浸透波でも穴を開けることは難しいだろ。それにヤナギのその腕じゃ....」


 その通りだ。


 あの技で貫通させることができるのは、金属の硬度や軟性の度合い、密度にも依るが、せいぜい三十センチほど。


それ以上は凹むなど変形するだけだ。


 しかし、この妖装のことを忘れてもらっては困る。


「まあ見とけって。ちょっと危ないから、二メートル位離れておけ」


 そう言うと、彼は怪訝な顔をしながらも、後ろに下がる。


 俺はそれを確認すると、妖装を解いて、もとの姿に戻った。


 そして次に、妖装に頼らずに妖力を発動させる。


 そしてそれを、踵の一点に集中させて、大きく振り上げる。


 足に空気が吸い込まれていき、膨大な妖力を生成させていく。


 そして、俺は渾身の一撃をもってして、その脚を降り下ろした。


 使ったのは、単純な踵落としである。


 ただそれに、妖術を組み合わせただけの、簡易な技だ。


 踵が床を叩きつけたと同時に、生成した妖力の幕を床に広げた。


 すると、一切の音を立てずに、床に大きな穴が開いた。


 周囲が既に真空状態となっているために、音を伝えることができないのである。


 真空になった部分に、周囲の大気が流れ込み、妖力が床の穴を広げていく。


 床に妖力が穴を開けると同時に、それによって新たに生成された妖力を、ビーム砲の様に撃ち出し、その次の床にも穴を開ける。


 空気の渦が波を打ち、次々にその存在力を妖術の糧としていった。


 常に供給される存在力に、それは次第に、かつ急速に速度と威力を上げて、床に大穴を開けた。


 そして、ついにそれは、目的の階層にまで穴を開けたのだった。


 使用された妖力は、次第にそれ自身の存在力を消していき、空中に魔力として霧散する。


「な?空いただろ、穴」


 真っ暗になった穴に、徐々に光が差し込み、完全にもとに戻る。


 訪れる、暫しの沈黙。


 その後、やっと気を取り戻したのか、チゼの口から驚きの声が発せられた。


「──はぁぁぁあああ!?」

 次回「18」

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