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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
黄泉帰りの使徒 Apostle of the vampire
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「15」黄泉帰りの使徒2

 気がつくと、俺たちは空を舞っていた。


 いや、落ちていた、と表記するほうが正しいかもしれない。


「うわぁぁぁぁぁぁぁああああっ!!」


 チゼが隣で叫ぶ。


 その声は、耳元を掠めていく空気の音をはるかに越えて、俺の鼓膜を打つ。


「うるさい!静かにしろ!」


 少しイラっと来たので、下顎を殴り付けて黙らせる。


 つぶれた右腕が空気の摩擦でかなり痛い。


 意識を保っていることが、少し難しいくらいだ。


 目測で、あと百五十メートルってところだな。


 落下速度は秒速10メートルといったところか。 


 俺は素早くフォールウィンドの魔法を詠唱する。


「Fall speed restraint」

(落下速度抑止)


 この際だから、魔法について少し話しておくと、魔法の中には、大きく分けて有詠唱魔法と、無詠唱魔法の二種類がある。


 有詠唱、単に詠唱、もしくはスペルとも呼ばれるそれには、無名魔法と有名魔法がある。


 というより、スペルと無詠唱に別れている魔法が、さらにすぺるが有名と無名に分化されているという感じだな。


 スペルの詠唱の役割というのは、システムへ、それに対応した事象をエイドスコアと呼ばれる世界から引き出してもらうように頼み込む、という動作だと言われている。


 したがって、自身の意思で編成できる、自身の細胞の表面を流れる魔力を活性化させることは、それ自身は自分の持つ世界の中の話なので、必然的に詠唱を必要としない。


 すなわち、無詠唱魔法が可能となる。


 また、魔法陣の場合、その魔法式そのものがスペルと同じ役割を果たすため、これも詠唱が必要ない。


 したがって、これも無詠唱となる。


 簡単に言えば、自分が詠唱するかしないかが、この分類の分け方なのだ。


 俺は、チゼにも同じように魔法を使わせると、しばらくして、UFOの甲板に降り立った。


「さて、始めますか」


 俺はそう言うと、避雷針を数本作り出して、鞄の中に入れた。


「始めるっつっても、何をどうすればいいんだよ?」


 怪訝そうな顔をして、彼は爪先で甲板をコンコンと叩く。


 結構分厚そうだな。


「そうだな....落下中に攻撃されなかったということは、この機体の上部には、迎撃用の武装は搭載されていないと考えていいだろう。つまり、ここは警備が薄い。何せ、相手が上空からやって来ることを想定していないんだからな」


 俺はごうごうと吹く風に顔をしかめながら、甲板を歩き回る。


 しばらく探せば見つかるだろう。


「チゼ!見つかったー?」


「いや、どにもない!」


 しかし、広い甲板の上を分身二千体を動員しても、出入り口となりそうなものはいつになっても見つからない。


(もっと数を増やすか?)


 そう考えたところに、分身の一人が俺に報告をした。


「マスター。光学迷彩による隠蔽物を確認しました」


 分身の内の一人が、そんな事を言った。


「光学迷彩?」


(いくらなんでも、そんなことあるわけ──)


 俺が、その分身の所に移動すると、そこには、陽炎のようにゆらゆらとなびく部分が一ヶ所だけ存在した。


「マジか....」


 俺は、分身になるべく壊さないように命令して、それを取り外す。


 壊したら警報鳴って気づかれました、何てオチはごめんだからな。


 しばらくの苦労の後、俺たちはUFOの中に乗り込んだ。












「Return」

(巻き戻れ)


 俺たちは出入口を修復すると、分身たちに、二人一組で行動するようにして、管制室を探させた。


 見つけ次第、テンブ砂漠上空へ移動させるのだ。


 そうすることで、破壊後の二次被害を最小限に抑えようという作戦だ。


「ふぅ....」


 俺はまだ痛む右腕を気にした風に、それを見つめる。


 魔法で治療できないなら、ショーランセイの実でも無理かな....。


 そんなことを考えていると、知らない番号から電話がかかってきた。


『チホ!軍に連絡したよ!今どこ?』


(リレル、もしかして軍の電話使ってるのか?)


「UFOの中だ。これから、分身たちに管制室を探してもらって、テンブ砂漠上空まで機体を移動させる。その後、この機体を落とす予定だ」


『え、あれの中にいるの!?』


 遠くからククルんの声がした。


「そうだ。さっき言ったことを軍に伝えてくれ!それとククルん!そっちの状況どう?」


『数人が拉致されていたわ....異次元人の数は大分減ったみたいだけど、まだメリゴの方に現れた奴らがたまってるみたいだわ。チホの分身は今はだいたい二千人ってところかしら?』


 二千人!?


 一万も分身を作って、この短時間で八千もやられたのか!?


「わかった。一分後に一万体の増援を用意する」


『了解したわ。気を付けてね、チホ』


 電話が切れる。


 まったく、右腕が痛すぎて、ただでさえ疲れてるのに....。


 でもまぁ、皆には心配かけないように、大丈夫って言ってしまったからな....。


 いっそ、腕を切り落として新しく生やすか?


 でも、それだと、俺の魔力では足りないしな....。


「電話、なんだって?」


 そんな雑孝を繰り広げていると、彼が俺に話しかけてきた。


「分身が八千体殺された。これから増援を用意するから、ちょっとその間警戒頼む」


「八千!?....わかった。早くしてくれよな」


「言われなくても!」


 一瞬驚いたような表情を見せるが、すぐに元の顔に戻る。


 本当に驚いていたのか少し疑問だな....。


 俺は急いで分身を用意した。


 一回の分身生成にかかる時間は、約一秒半。それは、数が増えても変わりはない。


 そして、更に一回で生成できる量は千体まで。


 リロードに半秒かかるから、一万体を生成するのには最速でも20秒必要だ。


 俺は分身を作り出すと、帰還の魔法で数体ずつ、地上へと転移させる。


 なんとか一分以内に終了させることに成功して、俺は少し満足気な顔をした。


 俺は長く息をつくと、チゼに言った。


「終わったぜ。さ、行こうか」


 次回「16」

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