「06」弟子と才能
翌日。体育館でいつものように型の練習、改良をしていると、扉を叩く音が聞こえた。
(そういえば、今度コナタとかいう人が来るんだっけ?)
「キミがチホちゃんね?私はコナタ。これからよろしくね」
コナタというのは、黒い髪をショートボブに整えた、しかし、髪が黒いのに関わらず、顔は暗くは見えなかった。
目鼻立ちは綺麗に整えられていて、所謂美人顔と呼ばれるようなものだった。
身長は俺より頭5つ分高い。まあ、5歳の子から見れば、そんなものなのだろうけど。
「そうだ。この体育館で、我流の武術を教えることになっている。この武術を俺くらいにマスターできれば、マロックスを2秒でほふれるようになるから期待してろ」
と、俺は先日の出来事に浮かれているのか、そんな事を彼女に話した。
すると、彼女はフフフと笑いだした。
(やっぱりどうも、この体だと調子が狂うな。それにイラつく)
「ごめんね、おかしくって」
「油断禁物、ですよ?」
俺は体育館の中心に立った。
「どれくらいできるか知りたい。本気で来てくれ」
俺はニヤリと笑いながら挑発すると、コナタは、かわいいものを見るような目で、ハイハイ、と言って歩いて近づく。
「えーい!」
コナタは、カタツムリのような鈍さで拳を振り下ろしてきた。
(完全にナメられてる!)
その事に俺はちょっと痛い目にあわせたくなった。
俺は、その手を右手で受け止め、慣性制御と移動の魔法を同時に使って、相手の体を180度反転させ、背中からおもいっきり地面に降り下ろした。
「ぐはっ!」
コナタは叩きつけられた衝撃で、肺から空気が抜けた。
「それは本気か?」
俺がそういうと、彼女は目を見開いた。
瞬間、視界の上に爪先が映った。
目の前に腹をさらけだすので、俺は彼女の腹に捻りを加えて打ち付ける突き、我流武術『針』一番、旋天を食らわせた。
捻りを加えることで、固いものにダメージを通しやすくするのだ。
主に筋肉を潰すときに使う。
コナタが回転しながら飛んでいく。移動の魔法を同時に使用しているので、その飛距離はすさまじいことになる。
移動の魔法とは、設定したベクトルの方向へ対象を加速させながら移動する、減速させながら移動する、同じ早さで移動する、の三つがある。
これは、速度と距離が大きくなるほど使用する魔力を多く消費する。
(あいつは最初のリーシャより弱いな)
俺はそんなことを思いながら、コナタのところへ向かった。
案の定、コナタは地面に伸びていた。
「どうする?ここで俺の我流を習い、マロックス秒殺できるまで鍛えるか?」
俺は彼女に回復の魔法で治療しながら、彼女に聞いた。
「おねがい....します、師匠....」
幼女にボコられて伸びている中学生位の少女。その少女が幼女に師匠と呼んでいる。
それはとても滑稽に見えた。
そこから数分の間、俺は笑い転げ続けたのだった。
次回「07」