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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
黄泉帰りの使徒 Apostle of the vampire
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「07」運命の誘導2

 その車は、フォレオス県を抜けて、イバ県へと走り去っていく。


 途中から走るのをやめ、魔法を使って車の上に転移してへばりついていたが、その車が止まるところで、俺は慣性の法則に従って前へと放り投げられた。


「ぐふっ!?」


 車内から、人が感情を変えた気配が漂ってくる。


「痛....さてと。車泥棒を取り押さえようか」


 俺は車内に分身を召喚した。


 中で相手が抵抗を見せるが、それもむなしく、外へと連れ出される。


 中に入っていたのは、女の二人組。


 一人は、長い髪に、胸部に二つの脂肪の塊を持った、白衣を着たお姉さん。


 もう一人は、長い髪にメガネをかけた、丈の合わない白衣を着たロリっ娘。


(やっぱり、そう来ると思ったよ)


 俺は、車を奪う直線に、俺以外の全員の視線を釘付けにしたあるものを思い出した。


 それは、正確には何もなかったのだ。


 何もないのに、その何もない場所に視線を釘付けにさせた。


 その正体とは、実に簡単だ。


 七大罪魔法がひとつ、『色欲』だ。


 色欲の力を使って、相手の目線を奪い、釘付けにして、その隙に奪って逃走したのだ。


 そんなことができるのは、アマイ・サクしかいないだろう。


 そして、もう一人の人物。 


 あれは鑑定屋からもらった資料の中に載っていたな。


 名前はたしか、クノウ・アキナだ。


「確保」


 俺は分身たちに彼女たちを拘束させ、携帯端末でチゼに連絡した。


『チホ!お前方向音痴にも程があるだろ!?』


 チゼの怒声が聞こえる。


(方向音痴って....少し傷つくな)


「オイオイ。チゼよ。いくらなんでも方向音痴ってのは傷つくぞ?それより、俺は今場イバ県のナガト市にいる」


『は?何でお前そんなところにいるんだよ?』


「事情はあとで説明する。端末に位置情報送っておくから、それを頼りにここまで来てくれ。因みに、俺は諸事情により目が離せないでいる。なるべく早く頼む」


 俺はそう言うと、何か言おうとしていた彼を無視して、通話を切って二人を見た。


「クノウ。なぜ、お前は車を奪ったんだ?」


 彼女は目を見張った。


「そうか。もうばれていたのか、彼には」


「アキちゃん?」


 悔しそうな顔をするクノウを、心配そうに見上げるサク。


 なるほどな....。


 実はアマイは天才少女では無かったのか。


 おそらく、彼女を自分の住まう大学の寮にとめておくために、敢えて自分の研究成果を彼女のものとして提出したのか。


 つまり、本当に天才なのは、クノウ・アキナか。


 俺は、先程のアマイ・サクのセリフから、そこまでの全てを理解した。


「話が早いようで助かるよ。さあ、答えて──」


「その問い、回答を拒否させてもらうよ」


 俺がそう問いただそうとした瞬間、彼女は手につけていた指環をカチンと鳴らした。


 すると、指環が光った。


 反射的に、俺は背後へと飛び退く。


 しかしその次の瞬間には、彼女たちはもう既に、その場にはいなかった。


「....逃げられたか」


 おそらくは魔具の1種だろう。


 しかし、あんなものは聞いたことがないんだが。


(もしかして、自作したのか?)


『マギやバギの作り出す魔力の意味を調べ──』


 ふと、あの鑑定屋の言っていた言葉の一節を思い出した。


 マギやバギの作り出す魔力の意味か。


 たしか、魔法陣の授業をククルんから受けていたとき、こんなこといってたよな?


 たしか、魔法陣に描かれる文字や絵は、俺たちが魔法を発動する際に使用する発動行程の想像を図案化したもの、とか。


 それは、魔力を流さなければただの陣だが、魔力を流せば、魔法として発動する。


 魔力を流せば。


 あの指環には、おそらく『転移』の魔法陣と、何らかの条件で魔力が流れる仕掛けが施されているのではないだろうか。


 例えば、マギとバギを閉じ込めて、ある条件で、魔力を流させる、とか。


(アナログだな、それ)


 考えてみれば、それは実質魔力を無限に扱うことができるという物に近いだろう。


 定期的に、マギやバギを入れ換えなければいけないことを考えると、何時如何なる時でもとはいかないだろうが。


 魔具って、そんなに作りが単純だとは思えないけど、それでも基本原理を理解しているところからすれば、彼女は相当頭がいいのだろうな。


「最悪だな」


 俺は天を仰いで、そう呟いた。


 どうやらもう手遅れだそうであることを、その瞬間から俺は覚っていた。

 次回「08」

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